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第1章
12. 自分の事なのに
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グレン様の態度の変化に、ブランの「一度死んでいる」という発言を聞いて、固まってしまう私。
魔物でも人でも、一度死んだら生き返ることは無いから、心配になってしまう。
もし、ブランが幽霊だったら……私は卒倒してしまうわ。
「一度死んでいるって……大丈夫だったの?」
「うん、大丈夫だよ。白竜は卵を産んでから、記憶を子に託して死ぬんだ。
だから……十年前に生まれ僕にも、先代の聖女と一緒に過ごした記憶もあるよ」
「そういうことでしたか。もし宜しければ、レイラ様と白竜様が出会った理由を教えて頂けないでしょうか?」
幽霊ではないみたいで安心したけれど、やっぱりグレン様の様子がおかしい。
どうして私はグレン様に様付けで呼ばれているのかしら?
やっぱり、彼の頭の具合が良くないのかしら?
「僕が怪我をして死にそうになっているところを助けられたからね。
それに、レイラが僕の名前を付けてくれたから、レイラが負った怪我は僕が負うようになっている」
「つまり、レイラが致死の怪我を負った時は、白竜様が命を落とされるということですか?」
「レイラの生命力は高いけど、僕の生命力はもっと高いから、レイラが十回死ぬくらいの怪我を負えば僕が死ぬことになるね。
グレンだっけ? 貴方は僕の存在意義を知っているみたいだから、僕が死ぬことの意味は分かるよね?」
この茶番に我慢出来なくなったから、グレン様の頭に治癒魔法をかける。
けれども、効果は出てくれなかった。
「もちろんでございます。レイラ様は命を懸けてでも守ります」
どうしてこうなるのよ!?
「白竜の存在意義って何なのですか?」
「僕が居ることで、魔物の発生が抑えられているんだよ。
この国の王家と公爵家しか知らないみたいだよ?」
ブランが嘘を言っているようには思えない。
きっと、ブランが居なくなったら王国は魔物が溢れて、私達が安心して暮らすことは出来なくなってしまう。
「そうだったのね……。
そんなに大事なことなら、もっと広く知られていても良いと思うのに……」
「それだと、国を滅ぼそうとしている者に目を付けられてしまう。
だから秘匿されているんだ」
もしかしたら、過去にそういう例があったのかもしれないわ。
でも、公爵家が知っているということは、あのパメラ様も知っているということ。
もしも私がブランと行動していることがパメラに知られたら……。
想像もしたく無いわ。
「そういうことでしたのね」
少し難しかったけれど、なんとなく理解できたからこの話は終わりにして、お父様達を見送りに向かう私。
来週もここに来るみたいだから、挨拶は手短に済ませた。
お父様達が帰ってからは、この屋敷の案内をされることになった。
グレン様は領地の視察に行ってしまったから、侍女長のアンナさんが案内してくれるらしい。
ちなみに、書類上で私達が結婚した日のうちにグレン様は家督を譲られたみたいで、義両親は王都に構えている屋敷で社交会を満喫しているらしい。
「奥様はここの女主人となられるのですから、しっかり覚えて下さいね」
「分かりましたわ」
「それと、私達のような使用人に対して敬語はお止めください。
奥様は公爵夫人なのです。頭が低いと舐められてしまいます」
アンナさんは柔らかな笑みが素敵な人なのだけど、言葉に少しだけ棘があるような気がする。
そして私に対して遠慮しないでグサグサと問題点を指摘してくるような性格をしている。
優しい人なのは分かるけれど、少し厳しすぎないかしら?
「……分かったわ。
アンナさん、あの青い髪の侍女の名前を教えてもらえるかしら?」
「アンナとお呼びください」
圧が……圧が凄いわ。
下手をしたらグレン様を超えている気がする。
アンナに命令されたら逆らえないかもしれない気がするわ。
ううん、侍女に命令される公爵夫人なんて示しがつかないから、私も強気にならなくちゃ。
「アンナ、彼女の名前を教えてもらえるかしら?」
「彼女はカチーナと言います。今日から奥様専属になる予定です。
もし気に入られなかったら交代させますので、いつでもお申し付けください」
「分かったわ」
髪色が青ということは、水の魔法に長けているのね。
魔法のお話で盛り上がれるかもしれないから、これからの暮らしが楽しみになってきた。
「こちらがレイラ様のお部屋になります」
「随分と広いのね……。掃除が大変そうだわ」
「その分使用人の人数もおりますので、問題にはなりません」
見せられた部屋は私が今まで使っていた伯爵邸の部屋の三倍は広くて、少し落ち着かない。
それに、天蓋付きのベッドなんて、本当に存在していたのね……!
物語の中だけの存在だと思っていたわ。
これじゃあ、イイトトコのお嬢様ね! ……じゃなくて、イイトコの奥様だったわ。
「グレン様のお部屋はどこにあるのかしら?」
「旦那様は白い扉のお部屋になります」
一度廊下に出て、指をさすアンナ。
どうやら部屋同士も離れているみたい。
この結婚はグレン様が私に同情してくれたから実現しただけで、好意なんて向けられていないのね……。
分かり切っていたことだけど、こうして実感すると少し悲しくなってしまった。
恋愛なんて諦めたはずなのに、心の奥底では愛されたかったのよね……。
自分のことなのに、よく分からないわ。
魔物でも人でも、一度死んだら生き返ることは無いから、心配になってしまう。
もし、ブランが幽霊だったら……私は卒倒してしまうわ。
「一度死んでいるって……大丈夫だったの?」
「うん、大丈夫だよ。白竜は卵を産んでから、記憶を子に託して死ぬんだ。
だから……十年前に生まれ僕にも、先代の聖女と一緒に過ごした記憶もあるよ」
「そういうことでしたか。もし宜しければ、レイラ様と白竜様が出会った理由を教えて頂けないでしょうか?」
幽霊ではないみたいで安心したけれど、やっぱりグレン様の様子がおかしい。
どうして私はグレン様に様付けで呼ばれているのかしら?
やっぱり、彼の頭の具合が良くないのかしら?
「僕が怪我をして死にそうになっているところを助けられたからね。
それに、レイラが僕の名前を付けてくれたから、レイラが負った怪我は僕が負うようになっている」
「つまり、レイラが致死の怪我を負った時は、白竜様が命を落とされるということですか?」
「レイラの生命力は高いけど、僕の生命力はもっと高いから、レイラが十回死ぬくらいの怪我を負えば僕が死ぬことになるね。
グレンだっけ? 貴方は僕の存在意義を知っているみたいだから、僕が死ぬことの意味は分かるよね?」
この茶番に我慢出来なくなったから、グレン様の頭に治癒魔法をかける。
けれども、効果は出てくれなかった。
「もちろんでございます。レイラ様は命を懸けてでも守ります」
どうしてこうなるのよ!?
「白竜の存在意義って何なのですか?」
「僕が居ることで、魔物の発生が抑えられているんだよ。
この国の王家と公爵家しか知らないみたいだよ?」
ブランが嘘を言っているようには思えない。
きっと、ブランが居なくなったら王国は魔物が溢れて、私達が安心して暮らすことは出来なくなってしまう。
「そうだったのね……。
そんなに大事なことなら、もっと広く知られていても良いと思うのに……」
「それだと、国を滅ぼそうとしている者に目を付けられてしまう。
だから秘匿されているんだ」
もしかしたら、過去にそういう例があったのかもしれないわ。
でも、公爵家が知っているということは、あのパメラ様も知っているということ。
もしも私がブランと行動していることがパメラに知られたら……。
想像もしたく無いわ。
「そういうことでしたのね」
少し難しかったけれど、なんとなく理解できたからこの話は終わりにして、お父様達を見送りに向かう私。
来週もここに来るみたいだから、挨拶は手短に済ませた。
お父様達が帰ってからは、この屋敷の案内をされることになった。
グレン様は領地の視察に行ってしまったから、侍女長のアンナさんが案内してくれるらしい。
ちなみに、書類上で私達が結婚した日のうちにグレン様は家督を譲られたみたいで、義両親は王都に構えている屋敷で社交会を満喫しているらしい。
「奥様はここの女主人となられるのですから、しっかり覚えて下さいね」
「分かりましたわ」
「それと、私達のような使用人に対して敬語はお止めください。
奥様は公爵夫人なのです。頭が低いと舐められてしまいます」
アンナさんは柔らかな笑みが素敵な人なのだけど、言葉に少しだけ棘があるような気がする。
そして私に対して遠慮しないでグサグサと問題点を指摘してくるような性格をしている。
優しい人なのは分かるけれど、少し厳しすぎないかしら?
「……分かったわ。
アンナさん、あの青い髪の侍女の名前を教えてもらえるかしら?」
「アンナとお呼びください」
圧が……圧が凄いわ。
下手をしたらグレン様を超えている気がする。
アンナに命令されたら逆らえないかもしれない気がするわ。
ううん、侍女に命令される公爵夫人なんて示しがつかないから、私も強気にならなくちゃ。
「アンナ、彼女の名前を教えてもらえるかしら?」
「彼女はカチーナと言います。今日から奥様専属になる予定です。
もし気に入られなかったら交代させますので、いつでもお申し付けください」
「分かったわ」
髪色が青ということは、水の魔法に長けているのね。
魔法のお話で盛り上がれるかもしれないから、これからの暮らしが楽しみになってきた。
「こちらがレイラ様のお部屋になります」
「随分と広いのね……。掃除が大変そうだわ」
「その分使用人の人数もおりますので、問題にはなりません」
見せられた部屋は私が今まで使っていた伯爵邸の部屋の三倍は広くて、少し落ち着かない。
それに、天蓋付きのベッドなんて、本当に存在していたのね……!
物語の中だけの存在だと思っていたわ。
これじゃあ、イイトトコのお嬢様ね! ……じゃなくて、イイトコの奥様だったわ。
「グレン様のお部屋はどこにあるのかしら?」
「旦那様は白い扉のお部屋になります」
一度廊下に出て、指をさすアンナ。
どうやら部屋同士も離れているみたい。
この結婚はグレン様が私に同情してくれたから実現しただけで、好意なんて向けられていないのね……。
分かり切っていたことだけど、こうして実感すると少し悲しくなってしまった。
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自分のことなのに、よく分からないわ。
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