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70. 幸せです
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リンゴーン、リンゴーンとアルカシエル大聖堂の鐘の音が響く。
今日は私とレオン様の結婚式。
準備に半年もかけたお陰で、今の私は人生で一番輝いていると思う。
祭壇の前に立っているレオン様も同じで、キラキラと輝いているように見えるほど。
そんな彼の元へと続く赤い毛氈の上を、私はお父様のエスコートで進んでいく。
最高級のシルクを惜しげもなく使ったドレスの長い裾を踏まないように、慎重に。
祭壇の前に辿り着くと、甘い微笑みを浮かべているレオン様がこちらに手を差し出してくれた。
お父様の手を離れて、レオン様の手をとった。
そうして二人で神官様の方を向いて誓いの言葉に宣誓したら、誓いの口付けなのだけど……。
大勢の前でというのはすごく恥ずかしい。
こんなことなら練習した方が良かったわ……。
いやいや、練習なんて無理よ……!
……なんて混乱している間に、ベールが上げられてしまった。
そして近付い来るレオン様のお顔。
ええ、覚悟は出来ました。
周りが見えていると恥ずかしいから、目を閉じて唇を寄せていく。
唇を重ねるのは初めてではないけれど、不思議な感覚だった。
見られているから恥ずかしい。体の奥が熱くなるような、そんな感覚。
理由はよく分からないけれど、悪いものではないことは確かね。
誓いを終えたら、結婚証明書にサインしていく。
こうして、私達は正式に夫婦になった。
結婚式の後は貴族達を招いての結婚披露宴なのだけど……。
「すごい人数ですわね……」
「ああ、驚いたよ」
披露宴の会場に向かう馬車の中で、私達はそんな言葉を交わした。
明日、皇族の結婚と同じようにパレードをすることになっているのだけど、私達の姿を見ようとしている人達が集まっているのよね……。
あら?
みんな、見覚えのある人たちだわ……。
ここに集まっているのは、大陸中にあるアルカンシェル商会の支部や本部から来た人たちなのね。
窓越しに手を振ると、みんな喜んでくれた。
「ルシアナ様、お幸せに~!」
「レオン様、ルシアナ様を泣かせたら許しませんからね!」
「ルシアナ様~! 私にも手を振って~!」
あちこちからそんな声が聞こえてくるから、御者さんにお願いして馬車の速さを落としてもらった。
これなら、全員に手を振ることはなんとか出来そうね……。
商会のみんなにはよく助けられていたもの。こういう時くらい、感謝しなくちゃ。
レオン様は少し悔しそうだけれど、それでも笑顔で手を振っていた。
「レオン様もお幸せに~!」
「喧嘩したらまた工房に来てください!」
「何言ってるの? 工房はルシアナ様も居るでしょう?」
「仲直りさせるってことだ!」
私達が喧嘩を拗らせた時のお話が出ているけれど、その機会は無いと思うのよね。
でも、みんな私達の結婚を祝福してくれている。
私もレオン様も、幸せね。
貴族や皇族だけが参加できる披露宴でも、私達は厚い祝福を受けた。
私達の家族からのお祝いはもちろん、アルバランの皇帝陛下までもが私達の結婚を祝ってくれている。
「ルシアナが少し羨ましいわ……。必ず、幸せになってね」
「ええ、ありがとう。
シエルは新しい恋を探したりはしないのよね?」
「私はあの人しか愛せないから、そのつもりは無いわ」
シエルからは哀しい雰囲気を感じてしまったけれの、私達の幸せを願ってくれている。
「ルシアナ様、レオン様。ご結婚おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「お二人の幸せを心からお祈りしますわ」
聖女様も、聖女様から厳しい再教育を受けて改心したと噂のマドネスも、私達のことを祝福してくれている。
「ありがとうございます」
「感謝する」
国外追放を言い渡された時は怒りも感じていたけれど、マドネスの国外追放が無ければこうして幸せになれなかったかもしれない。
複雑な気持ちだけれど……謝罪を受けたから、水に流すと決めた。
「結婚おめでとう。少しだけ、ルシアナが羨ましいわ」
「ふふ、レナさんも幸せになれるわよ。
その時は全力でお祝いするわ」
「ルシアナ様、レオン様。結婚おめでとうございます。
これからは帝国のお茶会で会えなくなると思うと、少し寂しいですわ」
「お祝いの言葉、ありがとうございます。
お茶会にはこれからもお邪魔しますわ。鉄道のお陰で、今までよりも気軽に行けますもの」
一年前から騎士さんとお付き合いをしているレナさんからも、私達よりも一足先に帝国の公爵令息様と結婚した第一皇女のアイネア様からも、お祝いの言葉を頂いた。
「俺と結婚してくれてありがとう。必ず幸せにするよ」
「あの時見捨てないでいてくれて、嬉しかったですわ。私もレオン様を幸せにすると誓いますわ」
お祝いの波がようやく止んで、
私達は繋いだ手を握りしめた。
断罪されてから色々あったけれど、みんなからお祝いされる私達は本当に幸せ者ね……!
────
────
今回で第一部完結です!
ここまでお読みいただきありがとうございましたm(__)m
第二部の連載はコンテスト用の執筆が終わってからを予定していますので、お待ち頂けると嬉しいです。
今日は私とレオン様の結婚式。
準備に半年もかけたお陰で、今の私は人生で一番輝いていると思う。
祭壇の前に立っているレオン様も同じで、キラキラと輝いているように見えるほど。
そんな彼の元へと続く赤い毛氈の上を、私はお父様のエスコートで進んでいく。
最高級のシルクを惜しげもなく使ったドレスの長い裾を踏まないように、慎重に。
祭壇の前に辿り着くと、甘い微笑みを浮かべているレオン様がこちらに手を差し出してくれた。
お父様の手を離れて、レオン様の手をとった。
そうして二人で神官様の方を向いて誓いの言葉に宣誓したら、誓いの口付けなのだけど……。
大勢の前でというのはすごく恥ずかしい。
こんなことなら練習した方が良かったわ……。
いやいや、練習なんて無理よ……!
……なんて混乱している間に、ベールが上げられてしまった。
そして近付い来るレオン様のお顔。
ええ、覚悟は出来ました。
周りが見えていると恥ずかしいから、目を閉じて唇を寄せていく。
唇を重ねるのは初めてではないけれど、不思議な感覚だった。
見られているから恥ずかしい。体の奥が熱くなるような、そんな感覚。
理由はよく分からないけれど、悪いものではないことは確かね。
誓いを終えたら、結婚証明書にサインしていく。
こうして、私達は正式に夫婦になった。
結婚式の後は貴族達を招いての結婚披露宴なのだけど……。
「すごい人数ですわね……」
「ああ、驚いたよ」
披露宴の会場に向かう馬車の中で、私達はそんな言葉を交わした。
明日、皇族の結婚と同じようにパレードをすることになっているのだけど、私達の姿を見ようとしている人達が集まっているのよね……。
あら?
みんな、見覚えのある人たちだわ……。
ここに集まっているのは、大陸中にあるアルカンシェル商会の支部や本部から来た人たちなのね。
窓越しに手を振ると、みんな喜んでくれた。
「ルシアナ様、お幸せに~!」
「レオン様、ルシアナ様を泣かせたら許しませんからね!」
「ルシアナ様~! 私にも手を振って~!」
あちこちからそんな声が聞こえてくるから、御者さんにお願いして馬車の速さを落としてもらった。
これなら、全員に手を振ることはなんとか出来そうね……。
商会のみんなにはよく助けられていたもの。こういう時くらい、感謝しなくちゃ。
レオン様は少し悔しそうだけれど、それでも笑顔で手を振っていた。
「レオン様もお幸せに~!」
「喧嘩したらまた工房に来てください!」
「何言ってるの? 工房はルシアナ様も居るでしょう?」
「仲直りさせるってことだ!」
私達が喧嘩を拗らせた時のお話が出ているけれど、その機会は無いと思うのよね。
でも、みんな私達の結婚を祝福してくれている。
私もレオン様も、幸せね。
貴族や皇族だけが参加できる披露宴でも、私達は厚い祝福を受けた。
私達の家族からのお祝いはもちろん、アルバランの皇帝陛下までもが私達の結婚を祝ってくれている。
「ルシアナが少し羨ましいわ……。必ず、幸せになってね」
「ええ、ありがとう。
シエルは新しい恋を探したりはしないのよね?」
「私はあの人しか愛せないから、そのつもりは無いわ」
シエルからは哀しい雰囲気を感じてしまったけれの、私達の幸せを願ってくれている。
「ルシアナ様、レオン様。ご結婚おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「お二人の幸せを心からお祈りしますわ」
聖女様も、聖女様から厳しい再教育を受けて改心したと噂のマドネスも、私達のことを祝福してくれている。
「ありがとうございます」
「感謝する」
国外追放を言い渡された時は怒りも感じていたけれど、マドネスの国外追放が無ければこうして幸せになれなかったかもしれない。
複雑な気持ちだけれど……謝罪を受けたから、水に流すと決めた。
「結婚おめでとう。少しだけ、ルシアナが羨ましいわ」
「ふふ、レナさんも幸せになれるわよ。
その時は全力でお祝いするわ」
「ルシアナ様、レオン様。結婚おめでとうございます。
これからは帝国のお茶会で会えなくなると思うと、少し寂しいですわ」
「お祝いの言葉、ありがとうございます。
お茶会にはこれからもお邪魔しますわ。鉄道のお陰で、今までよりも気軽に行けますもの」
一年前から騎士さんとお付き合いをしているレナさんからも、私達よりも一足先に帝国の公爵令息様と結婚した第一皇女のアイネア様からも、お祝いの言葉を頂いた。
「俺と結婚してくれてありがとう。必ず幸せにするよ」
「あの時見捨てないでいてくれて、嬉しかったですわ。私もレオン様を幸せにすると誓いますわ」
お祝いの波がようやく止んで、
私達は繋いだ手を握りしめた。
断罪されてから色々あったけれど、みんなからお祝いされる私達は本当に幸せ者ね……!
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今回で第一部完結です!
ここまでお読みいただきありがとうございましたm(__)m
第二部の連載はコンテスト用の執筆が終わってからを予定していますので、お待ち頂けると嬉しいです。
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感想ありがとうございます。
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