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57. 馬車ではありません
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あの後、試作品の音を防ぐ方法を探すことになった。
防音魔法という便利な物はあるけれど、魔力消費を抑えたいから、魔法を使わない方法を試した。
この研究の成果はすぐに出て、ゴムレドンの皮から作った板を内側に貼った金属の板で覆うことで解決した。
馬車の車輪を回す方法もすぐに決まったから、夕方には試作品の馬車が出来上がった、
「緊張するな」
「ええ。こんなに緊張するのは久々ですわ……」
今は試作品の馬車を動かそうとしているところ。
まだ水が温まっていないから動かないけれど、あと一分も待てば動かせるようになるはず。
ちなみに、動力源になっている魔道具の中の圧力を時計の針のような物で確認できるようにしてあるから、そこを見ればすぐに分かる。
「そろそろ良さそうですわ」
「分かった」
レオン様が手元の棒を少しだけ手前に倒すと、ゆっくりと馬車が動き出した。
いえ、馬の力は使っていないから、これはただの車ね。
「曲がる機能も問題無さそうだ。減速も大丈夫だな」
「成功、ですわね」
「馬より速かったら、だろう?」
「そうでしたわ……」
そんなことを話していたら、レオン様が加速のための棒を一気に手前まで倒していた。
すぐに馬車の時は感じなかった加速感が訪れる。
けれども……。
「おお、これはすごいな」
「ぶつかりますわ!」
「大丈夫だ。ここで曲がれば……」
どういうわけか、視界が……いえ、車体が傾いていて……。
直後に衝撃が私達を襲った。
「申し訳ない、怪我は無いか?」
「ええ、防御魔法を使っておいて良かったですわ」
万が一何かにぶつかっても大丈夫なようにと防御魔法を使っていたから、怪我は無い。
速度が出ても壊れないようにと、車体も金属を使って頑丈に作っていたから、傷は付いていても壊れては無かった。
ガラスを付けていなくて良かったわ……。
「曲がる時はゆっくりにしないといけないな……」
「私も気を付けますわ」
けれども、物凄い音が響いていたから、本部の建物から何人か飛び出してきていた。
「ルシアナ様、レオン様。大丈夫ですか!?」
「ええ、大丈夫よ」
「俺の方も問題は無い。ルシアナ、一旦外に出よう」
「この高さは無理ですわ……」
脱出しようとしても、出入り口はレオン様の肩の高さ。
私の目線の高さでもあるけれど、この高さを乗り越えることなんて私には出来ない。
「分かった。少し失礼する」
でも、レオン様にかかればこれくらいのこと、問題にすらならないみたいで、あっという間に彼の肩と腕に座る形にさせられていた。
本当に、レオン様の力がどうなっているのか不思議だわ……。
「出られそうか?」
「ええ。ありがとうございます」
無事に外に出られたから、お礼を言う。
続けてレオンは自力で外に出て来ていた。
「降りられる?」
「降りるだけなら大丈夫ですわ」
普段はあまりしないけれど、護身術で窓から飛び降りる練習もさせられていたから、私の背の高さから飛び降りるくらいなら大丈夫なのよね。
だから、そのまま飛び降りた。
レオン様も飛び降りてきたと思ったら、今度は車体に手をかけて、そのまま元の状態に起こしていた。
「よし、実験を再開しよう」
「もうですか?」
「何も壊れていないんだから、問題無いだろう。
今すぐにでも長い直線で性能を調べたい」
「分かりましたわ」
レオン様に言われるまま、馬車に乗り込む私。
それから程度の外に試作品の馬車で移動して、少し道から外れた場所に来てしまった。
「土の上でも問題無いかな?」
「速すぎると跳ねてしまうと思いますわ」
「分かった」
返事をしたと思ったら、そのまま棒を手前に倒すレオン様。
すぐに目に見えて馬車──いえ、車が加速していって、騎乗でも感じたことの無い速さになった。
流石にこの速さだと揺れるけれど、ガタガタという不快なものは少なくて、ふわふわとした揺れがほとんど。
でも、石を踏んだ時に時折ガタッと大きく揺れる。
後ろを見てみると、土煙が立ち上っていた。
「馬の倍くらいの速さかな?
しかし、これ以上は速くならなさそうだな」
「少し怖いですわね……」
「ああ。だが、この速さなら四時間くらいでアルカシエルに着きそうだ」
「山越えは大きく曲ったりもするので、難しいですよ……」
「この馬車で──いや、車か。車で半日くらいだな」
そんな話をしながら、倒していた棒を元の位置に戻すレオン様。
今度は減速用の棒が手前に倒されて、減速感が訪れた。
ちなみに、減速用の棒を倒すと、風魔法で貯められた空気の力で車輪を押さえつけるようになっている。
そのせいで、金属同士が擦れ合う高い音が響いてしまうけれど、この音は魔物が嫌う音だからそのままにしてある。
私達にとっても「キイィィィ」という音は不快だけれど、これは我慢よ……。
「減速もら曲がるのも問題無さそうだな」
「大成功、ですわ……!」
「ああ。これは世界が変わるだろう。
ルシアナも動かすか?」
「良いのですか? 楽しんでいるのですよね?」
「俺だけが楽しんでも意味無いだろう」
そんなわけで交代したから、今度は私が程度に向けて車を動かしていく。
街道に戻ったから馬車より少し速いくらいにしているけれど、これでも楽しいかもしれないわ。
防音魔法という便利な物はあるけれど、魔力消費を抑えたいから、魔法を使わない方法を試した。
この研究の成果はすぐに出て、ゴムレドンの皮から作った板を内側に貼った金属の板で覆うことで解決した。
馬車の車輪を回す方法もすぐに決まったから、夕方には試作品の馬車が出来上がった、
「緊張するな」
「ええ。こんなに緊張するのは久々ですわ……」
今は試作品の馬車を動かそうとしているところ。
まだ水が温まっていないから動かないけれど、あと一分も待てば動かせるようになるはず。
ちなみに、動力源になっている魔道具の中の圧力を時計の針のような物で確認できるようにしてあるから、そこを見ればすぐに分かる。
「そろそろ良さそうですわ」
「分かった」
レオン様が手元の棒を少しだけ手前に倒すと、ゆっくりと馬車が動き出した。
いえ、馬の力は使っていないから、これはただの車ね。
「曲がる機能も問題無さそうだ。減速も大丈夫だな」
「成功、ですわね」
「馬より速かったら、だろう?」
「そうでしたわ……」
そんなことを話していたら、レオン様が加速のための棒を一気に手前まで倒していた。
すぐに馬車の時は感じなかった加速感が訪れる。
けれども……。
「おお、これはすごいな」
「ぶつかりますわ!」
「大丈夫だ。ここで曲がれば……」
どういうわけか、視界が……いえ、車体が傾いていて……。
直後に衝撃が私達を襲った。
「申し訳ない、怪我は無いか?」
「ええ、防御魔法を使っておいて良かったですわ」
万が一何かにぶつかっても大丈夫なようにと防御魔法を使っていたから、怪我は無い。
速度が出ても壊れないようにと、車体も金属を使って頑丈に作っていたから、傷は付いていても壊れては無かった。
ガラスを付けていなくて良かったわ……。
「曲がる時はゆっくりにしないといけないな……」
「私も気を付けますわ」
けれども、物凄い音が響いていたから、本部の建物から何人か飛び出してきていた。
「ルシアナ様、レオン様。大丈夫ですか!?」
「ええ、大丈夫よ」
「俺の方も問題は無い。ルシアナ、一旦外に出よう」
「この高さは無理ですわ……」
脱出しようとしても、出入り口はレオン様の肩の高さ。
私の目線の高さでもあるけれど、この高さを乗り越えることなんて私には出来ない。
「分かった。少し失礼する」
でも、レオン様にかかればこれくらいのこと、問題にすらならないみたいで、あっという間に彼の肩と腕に座る形にさせられていた。
本当に、レオン様の力がどうなっているのか不思議だわ……。
「出られそうか?」
「ええ。ありがとうございます」
無事に外に出られたから、お礼を言う。
続けてレオンは自力で外に出て来ていた。
「降りられる?」
「降りるだけなら大丈夫ですわ」
普段はあまりしないけれど、護身術で窓から飛び降りる練習もさせられていたから、私の背の高さから飛び降りるくらいなら大丈夫なのよね。
だから、そのまま飛び降りた。
レオン様も飛び降りてきたと思ったら、今度は車体に手をかけて、そのまま元の状態に起こしていた。
「よし、実験を再開しよう」
「もうですか?」
「何も壊れていないんだから、問題無いだろう。
今すぐにでも長い直線で性能を調べたい」
「分かりましたわ」
レオン様に言われるまま、馬車に乗り込む私。
それから程度の外に試作品の馬車で移動して、少し道から外れた場所に来てしまった。
「土の上でも問題無いかな?」
「速すぎると跳ねてしまうと思いますわ」
「分かった」
返事をしたと思ったら、そのまま棒を手前に倒すレオン様。
すぐに目に見えて馬車──いえ、車が加速していって、騎乗でも感じたことの無い速さになった。
流石にこの速さだと揺れるけれど、ガタガタという不快なものは少なくて、ふわふわとした揺れがほとんど。
でも、石を踏んだ時に時折ガタッと大きく揺れる。
後ろを見てみると、土煙が立ち上っていた。
「馬の倍くらいの速さかな?
しかし、これ以上は速くならなさそうだな」
「少し怖いですわね……」
「ああ。だが、この速さなら四時間くらいでアルカシエルに着きそうだ」
「山越えは大きく曲ったりもするので、難しいですよ……」
「この馬車で──いや、車か。車で半日くらいだな」
そんな話をしながら、倒していた棒を元の位置に戻すレオン様。
今度は減速用の棒が手前に倒されて、減速感が訪れた。
ちなみに、減速用の棒を倒すと、風魔法で貯められた空気の力で車輪を押さえつけるようになっている。
そのせいで、金属同士が擦れ合う高い音が響いてしまうけれど、この音は魔物が嫌う音だからそのままにしてある。
私達にとっても「キイィィィ」という音は不快だけれど、これは我慢よ……。
「減速もら曲がるのも問題無さそうだな」
「大成功、ですわ……!」
「ああ。これは世界が変わるだろう。
ルシアナも動かすか?」
「良いのですか? 楽しんでいるのですよね?」
「俺だけが楽しんでも意味無いだろう」
そんなわけで交代したから、今度は私が程度に向けて車を動かしていく。
街道に戻ったから馬車より少し速いくらいにしているけれど、これでも楽しいかもしれないわ。
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