27 / 70
27. 侵略に備えて
しおりを挟む
カフェで料理とコーヒーを頂いた後のこと。
別荘に戻った私達はお父様から呼び出されて、今は執務室になっている部屋に集まっている。
「急なお願いになってしまうが、アルカンシェル商会で作っている揺れない馬車を我が家に流してもらえないだろうか?」
「理由を聞いてもよろしいですか?」
お父様の意図が読めなかったから、問い返す私。
すると、こんな答えが返ってきた。
「防衛のための武器を輸送したいんだ。王国は私達のアスクライ公国を滅ぼそうとしている」
「分かりました。出来る限り協力しますわ」
便利な魔道具を人殺しの道具にはされたくないけれど、みんなを守るためになら使ってほしい。
自分勝手な考え方かもしれないけれど、領地の人達は私達に良くしてくれているから……。
迷わないで、すぐに頷いた。
「助かる」
「領地を守るためなら、いつでも協力しますわ」
侵略のために使ったら許さない。そんな意図を言葉に含める。
「破壊されることになるかもしれないが、構わないのか?」
「ええ。物は代えが効きますから、気にしないでください」
「分かった。民は必ず守り抜こう」
私の意図を汲んでくれたみたいで、そんな言葉が返ってくる。
お父様も民のことを大事にしているから、それほど心配はしていなかったけれど、直接言葉で聞くと安心出来る。
「全員無事でいられるようにお祈りしますわ」
「ありがとう。私はそろそろ領地に向かわねばならないから、しばらくの別れになる。
馬車については執事に任せているから、この別荘の庭に集めておいてくれ」
「分かりましたわ」
私が頷くと、お父様は立ち上がって廊下に出て行った。
「レオン殿、娘を頼む」
「はい。必ずお守りします」
そう言って騎士の礼をするレオン様。
私もお父様に礼をして、玄関まで見送ることにした。
まだ大きな動きは無いけれど、新しく建国された国が隣国に滅ぼされることはよくあること。
王国では私達の公国を滅ぼそうとする動きもあるから、準備は早い方が良い。
だから、今は……。
「レオン様。私、しばらく商会に籠りますわ」
馬車をたくさん作って、みんなの身を守るための武器や防具を領地に運ぶ。
だから、人手は多い方が良いのだけど……。
もっと短い時間で作れるように、馬車を作るための魔道具を作ることに決めた。
「ルシアナ。力仕事もあるかな?」
「ええ、一応」
「そういうことなら、俺も手伝おう。力には自信がある」
レオン様はそう口にすると、私の手を優しい手つきで握ってくれた。
その手を握り返す私。
手を繋いだまま玄関ホールに入ると、お母様やお兄様達の姿が目に入った。それに、ここまで付いてきてきてくれた使用人さん達も総出で見送りに来ている。
「必ず、無事に戻って来てください」
「もちろんだ。帝国の援軍もあるから、危険な状態にはならないだろう」
「私も行った方が良いかしら?」
そんなことを口にしたのは、お母様だった。
お母様は治癒魔法が使えて、元聖女候補だったらしい。剣で刺された傷くらいならすぐに治せるほどの力があるけれど、お父様は首を縦に振らなかった。
「アイネアはここでみんなを守っていて欲しい。それに、アイネアを危険な目には遭わせたくない」
「分かったわ。必ず生きて戻って来て」
「ああ」
そんな会話を一通り交わしてから、玄関から外に出るお父様。
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃいませ」
私達も、使用人さん達も。笑顔で見送った。
それから少しして、私とレオン様は商会本部に泊まり込む準備を済ませて、普通の馬車で移動を始めた。
数日ぶりの激しい揺れに襲われて、不快感に襲われてしまう。
でも、私が商会から持ってきた馬車はお父様に渡したから、これで移動するしかないのよね……。
乗り心地が最悪なのに、移動にも時間がかかる。
こんな馬車で移動していたら、戦いに万全な状態で挑めなくなってしまうわ……。
「これは、酷いな」
「少し急いでいますから、仕方ないですわ」
会話なんて殆ど聞こえないから、お話も最低限だけ。
でも、普段よりも少し時間をかけるだけで商会本部に着くことが出来た。
別荘に戻った私達はお父様から呼び出されて、今は執務室になっている部屋に集まっている。
「急なお願いになってしまうが、アルカンシェル商会で作っている揺れない馬車を我が家に流してもらえないだろうか?」
「理由を聞いてもよろしいですか?」
お父様の意図が読めなかったから、問い返す私。
すると、こんな答えが返ってきた。
「防衛のための武器を輸送したいんだ。王国は私達のアスクライ公国を滅ぼそうとしている」
「分かりました。出来る限り協力しますわ」
便利な魔道具を人殺しの道具にはされたくないけれど、みんなを守るためになら使ってほしい。
自分勝手な考え方かもしれないけれど、領地の人達は私達に良くしてくれているから……。
迷わないで、すぐに頷いた。
「助かる」
「領地を守るためなら、いつでも協力しますわ」
侵略のために使ったら許さない。そんな意図を言葉に含める。
「破壊されることになるかもしれないが、構わないのか?」
「ええ。物は代えが効きますから、気にしないでください」
「分かった。民は必ず守り抜こう」
私の意図を汲んでくれたみたいで、そんな言葉が返ってくる。
お父様も民のことを大事にしているから、それほど心配はしていなかったけれど、直接言葉で聞くと安心出来る。
「全員無事でいられるようにお祈りしますわ」
「ありがとう。私はそろそろ領地に向かわねばならないから、しばらくの別れになる。
馬車については執事に任せているから、この別荘の庭に集めておいてくれ」
「分かりましたわ」
私が頷くと、お父様は立ち上がって廊下に出て行った。
「レオン殿、娘を頼む」
「はい。必ずお守りします」
そう言って騎士の礼をするレオン様。
私もお父様に礼をして、玄関まで見送ることにした。
まだ大きな動きは無いけれど、新しく建国された国が隣国に滅ぼされることはよくあること。
王国では私達の公国を滅ぼそうとする動きもあるから、準備は早い方が良い。
だから、今は……。
「レオン様。私、しばらく商会に籠りますわ」
馬車をたくさん作って、みんなの身を守るための武器や防具を領地に運ぶ。
だから、人手は多い方が良いのだけど……。
もっと短い時間で作れるように、馬車を作るための魔道具を作ることに決めた。
「ルシアナ。力仕事もあるかな?」
「ええ、一応」
「そういうことなら、俺も手伝おう。力には自信がある」
レオン様はそう口にすると、私の手を優しい手つきで握ってくれた。
その手を握り返す私。
手を繋いだまま玄関ホールに入ると、お母様やお兄様達の姿が目に入った。それに、ここまで付いてきてきてくれた使用人さん達も総出で見送りに来ている。
「必ず、無事に戻って来てください」
「もちろんだ。帝国の援軍もあるから、危険な状態にはならないだろう」
「私も行った方が良いかしら?」
そんなことを口にしたのは、お母様だった。
お母様は治癒魔法が使えて、元聖女候補だったらしい。剣で刺された傷くらいならすぐに治せるほどの力があるけれど、お父様は首を縦に振らなかった。
「アイネアはここでみんなを守っていて欲しい。それに、アイネアを危険な目には遭わせたくない」
「分かったわ。必ず生きて戻って来て」
「ああ」
そんな会話を一通り交わしてから、玄関から外に出るお父様。
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃいませ」
私達も、使用人さん達も。笑顔で見送った。
それから少しして、私とレオン様は商会本部に泊まり込む準備を済ませて、普通の馬車で移動を始めた。
数日ぶりの激しい揺れに襲われて、不快感に襲われてしまう。
でも、私が商会から持ってきた馬車はお父様に渡したから、これで移動するしかないのよね……。
乗り心地が最悪なのに、移動にも時間がかかる。
こんな馬車で移動していたら、戦いに万全な状態で挑めなくなってしまうわ……。
「これは、酷いな」
「少し急いでいますから、仕方ないですわ」
会話なんて殆ど聞こえないから、お話も最低限だけ。
でも、普段よりも少し時間をかけるだけで商会本部に着くことが出来た。
29
お気に入りに追加
3,315
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる