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27. 侵略に備えて
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カフェで料理とコーヒーを頂いた後のこと。
別荘に戻った私達はお父様から呼び出されて、今は執務室になっている部屋に集まっている。
「急なお願いになってしまうが、アルカンシェル商会で作っている揺れない馬車を我が家に流してもらえないだろうか?」
「理由を聞いてもよろしいですか?」
お父様の意図が読めなかったから、問い返す私。
すると、こんな答えが返ってきた。
「防衛のための武器を輸送したいんだ。王国は私達のアスクライ公国を滅ぼそうとしている」
「分かりました。出来る限り協力しますわ」
便利な魔道具を人殺しの道具にはされたくないけれど、みんなを守るためになら使ってほしい。
自分勝手な考え方かもしれないけれど、領地の人達は私達に良くしてくれているから……。
迷わないで、すぐに頷いた。
「助かる」
「領地を守るためなら、いつでも協力しますわ」
侵略のために使ったら許さない。そんな意図を言葉に含める。
「破壊されることになるかもしれないが、構わないのか?」
「ええ。物は代えが効きますから、気にしないでください」
「分かった。民は必ず守り抜こう」
私の意図を汲んでくれたみたいで、そんな言葉が返ってくる。
お父様も民のことを大事にしているから、それほど心配はしていなかったけれど、直接言葉で聞くと安心出来る。
「全員無事でいられるようにお祈りしますわ」
「ありがとう。私はそろそろ領地に向かわねばならないから、しばらくの別れになる。
馬車については執事に任せているから、この別荘の庭に集めておいてくれ」
「分かりましたわ」
私が頷くと、お父様は立ち上がって廊下に出て行った。
「レオン殿、娘を頼む」
「はい。必ずお守りします」
そう言って騎士の礼をするレオン様。
私もお父様に礼をして、玄関まで見送ることにした。
まだ大きな動きは無いけれど、新しく建国された国が隣国に滅ぼされることはよくあること。
王国では私達の公国を滅ぼそうとする動きもあるから、準備は早い方が良い。
だから、今は……。
「レオン様。私、しばらく商会に籠りますわ」
馬車をたくさん作って、みんなの身を守るための武器や防具を領地に運ぶ。
だから、人手は多い方が良いのだけど……。
もっと短い時間で作れるように、馬車を作るための魔道具を作ることに決めた。
「ルシアナ。力仕事もあるかな?」
「ええ、一応」
「そういうことなら、俺も手伝おう。力には自信がある」
レオン様はそう口にすると、私の手を優しい手つきで握ってくれた。
その手を握り返す私。
手を繋いだまま玄関ホールに入ると、お母様やお兄様達の姿が目に入った。それに、ここまで付いてきてきてくれた使用人さん達も総出で見送りに来ている。
「必ず、無事に戻って来てください」
「もちろんだ。帝国の援軍もあるから、危険な状態にはならないだろう」
「私も行った方が良いかしら?」
そんなことを口にしたのは、お母様だった。
お母様は治癒魔法が使えて、元聖女候補だったらしい。剣で刺された傷くらいならすぐに治せるほどの力があるけれど、お父様は首を縦に振らなかった。
「アイネアはここでみんなを守っていて欲しい。それに、アイネアを危険な目には遭わせたくない」
「分かったわ。必ず生きて戻って来て」
「ああ」
そんな会話を一通り交わしてから、玄関から外に出るお父様。
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃいませ」
私達も、使用人さん達も。笑顔で見送った。
それから少しして、私とレオン様は商会本部に泊まり込む準備を済ませて、普通の馬車で移動を始めた。
数日ぶりの激しい揺れに襲われて、不快感に襲われてしまう。
でも、私が商会から持ってきた馬車はお父様に渡したから、これで移動するしかないのよね……。
乗り心地が最悪なのに、移動にも時間がかかる。
こんな馬車で移動していたら、戦いに万全な状態で挑めなくなってしまうわ……。
「これは、酷いな」
「少し急いでいますから、仕方ないですわ」
会話なんて殆ど聞こえないから、お話も最低限だけ。
でも、普段よりも少し時間をかけるだけで商会本部に着くことが出来た。
別荘に戻った私達はお父様から呼び出されて、今は執務室になっている部屋に集まっている。
「急なお願いになってしまうが、アルカンシェル商会で作っている揺れない馬車を我が家に流してもらえないだろうか?」
「理由を聞いてもよろしいですか?」
お父様の意図が読めなかったから、問い返す私。
すると、こんな答えが返ってきた。
「防衛のための武器を輸送したいんだ。王国は私達のアスクライ公国を滅ぼそうとしている」
「分かりました。出来る限り協力しますわ」
便利な魔道具を人殺しの道具にはされたくないけれど、みんなを守るためになら使ってほしい。
自分勝手な考え方かもしれないけれど、領地の人達は私達に良くしてくれているから……。
迷わないで、すぐに頷いた。
「助かる」
「領地を守るためなら、いつでも協力しますわ」
侵略のために使ったら許さない。そんな意図を言葉に含める。
「破壊されることになるかもしれないが、構わないのか?」
「ええ。物は代えが効きますから、気にしないでください」
「分かった。民は必ず守り抜こう」
私の意図を汲んでくれたみたいで、そんな言葉が返ってくる。
お父様も民のことを大事にしているから、それほど心配はしていなかったけれど、直接言葉で聞くと安心出来る。
「全員無事でいられるようにお祈りしますわ」
「ありがとう。私はそろそろ領地に向かわねばならないから、しばらくの別れになる。
馬車については執事に任せているから、この別荘の庭に集めておいてくれ」
「分かりましたわ」
私が頷くと、お父様は立ち上がって廊下に出て行った。
「レオン殿、娘を頼む」
「はい。必ずお守りします」
そう言って騎士の礼をするレオン様。
私もお父様に礼をして、玄関まで見送ることにした。
まだ大きな動きは無いけれど、新しく建国された国が隣国に滅ぼされることはよくあること。
王国では私達の公国を滅ぼそうとする動きもあるから、準備は早い方が良い。
だから、今は……。
「レオン様。私、しばらく商会に籠りますわ」
馬車をたくさん作って、みんなの身を守るための武器や防具を領地に運ぶ。
だから、人手は多い方が良いのだけど……。
もっと短い時間で作れるように、馬車を作るための魔道具を作ることに決めた。
「ルシアナ。力仕事もあるかな?」
「ええ、一応」
「そういうことなら、俺も手伝おう。力には自信がある」
レオン様はそう口にすると、私の手を優しい手つきで握ってくれた。
その手を握り返す私。
手を繋いだまま玄関ホールに入ると、お母様やお兄様達の姿が目に入った。それに、ここまで付いてきてきてくれた使用人さん達も総出で見送りに来ている。
「必ず、無事に戻って来てください」
「もちろんだ。帝国の援軍もあるから、危険な状態にはならないだろう」
「私も行った方が良いかしら?」
そんなことを口にしたのは、お母様だった。
お母様は治癒魔法が使えて、元聖女候補だったらしい。剣で刺された傷くらいならすぐに治せるほどの力があるけれど、お父様は首を縦に振らなかった。
「アイネアはここでみんなを守っていて欲しい。それに、アイネアを危険な目には遭わせたくない」
「分かったわ。必ず生きて戻って来て」
「ああ」
そんな会話を一通り交わしてから、玄関から外に出るお父様。
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃいませ」
私達も、使用人さん達も。笑顔で見送った。
それから少しして、私とレオン様は商会本部に泊まり込む準備を済ませて、普通の馬車で移動を始めた。
数日ぶりの激しい揺れに襲われて、不快感に襲われてしまう。
でも、私が商会から持ってきた馬車はお父様に渡したから、これで移動するしかないのよね……。
乗り心地が最悪なのに、移動にも時間がかかる。
こんな馬車で移動していたら、戦いに万全な状態で挑めなくなってしまうわ……。
「これは、酷いな」
「少し急いでいますから、仕方ないですわ」
会話なんて殆ど聞こえないから、お話も最低限だけ。
でも、普段よりも少し時間をかけるだけで商会本部に着くことが出来た。
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