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26. 次の魔道具
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あの騒ぎの後、交流会のような雰囲気になったパーティーで、私はたくさんの方からダンスのお誘いを受けることになった。
でも、ずっとダンスをしていると疲れてしまうから、関係を築いた方が良さそうな人からの誘いだけ受け入れた。
帝国の社交界でも、悪意を持って近付いてくる人はいるから、事前調査は必須なのよね……。
「お疲れ様。少し休憩したら、一曲お願いしてもいいかな?」
「ええ。レオン様もお疲れ様です」
受け入れたお誘いを終わらせて、壁際で少しだけ休憩することにした私達。
この歓迎パーティーでは料理も振舞われているから、少しだけ頂くことにした。
でも、お腹がいっぱいになるまでは食べられない。
帝国では騎士として功績を挙げた人が爵位を授かることが多いのだけど、その人達は必ずと言っていいほど沢山食る。
だから、その人達のために料理も王国のものとは比べ物にならないほどの量が振舞われている。
王国と違って満腹まで食べてもマナー違反にはならないけれど、コルセットでお腹を締め付けている今の状態では満足に食事なんて出来ないのよね……。
腰が細い方が美しいと言われるのは、王国も帝国も同じだからこうしているのだけど、長時間締め付けられていると苦しいのよね……。
でも、マナーだから我慢している。
気になった料理を取り終えてレオン様の元に戻ると、彼が取ってきた料理が目に入った。
普段はたくさん食べているレオン様があまり料理をとっていなかったから、少し驚いてしまう。
「レオン様はそれだけで良いのですか?」
「ルシアナが我慢しているのに、俺だけ満足いくまで食べることは出来ないよ」
「私は元々あまり食べませんから、これで良いのです」
「コルセットのせいで食べれないのだろう?」
そう言われてしまって、返事に困る私。
彼に見てもらえて嬉しい気持と、我慢させてしまって申し訳ない気持ちが一緒に生まれていた。
「だからって、レオン様に我慢はさせたくないのです。それとも、ご気分が優れないのですか?」
「いや、体調は大丈夫だ。ルシアナがそう言うならもう少し取って来よう」
それからすぐに戻ってきたレオン様は戻ってきたのだけど、やっぱり普段よりは少なかった。
でも、体調の問題ではないみたいだから、他に意図があるのだと思うことにした。
パーティー後は、例の馬車に揺られて屋敷に戻る私達。
けれども、窓の外の景色は行きとは違っていた。
「到着いたしました」
「ありがとう」
人通りが多い場所で止まったと思ったら、御者台からそんな声がかけられる。
でも、ここは屋敷の前ではない。
この後の予定は無いから寄り道は問題ないけれど、少し驚いてしまった。
「一緒にカフェにでもと思ったのだが、嫌だったか?」
「いいえ、嫌ではありませんわ」
ここのカフェは帝国で一番美味しいと言われているお店なのだけど、いつも商会の中で済ませていたから来るのは今日が初めて。
噂を商会の人達から聞いた頃からずっと来たかったのよね……。
もしかしたら、レオン様は私の心を読めるのかもしれない。
そんなことを思いながら、レオン様のエスコートでカフェの入口に向かう。
このお店のシンボルの水車が大きな音を立てているから、外での会話は難しい。
でも、中に入れば落ち着いた静かな空気に満たされていて安心した。
流石は有名なお店。雰囲気も完璧みたいね。
このお店は貴族向けに個室も用意してあって、私達はそこに案内された。
個室とは言っても、窓の外の運河や帝都を見渡せる景色の良い場所だった。
「気に入った?」
「ええ、とっても。連れてきてくれてありがとうございます」
お礼を言う私。
ここの料理は楽しみなのだけど、水車を見てから水の力を使う魔導具を思いついてしまったのよね……。
だから、レオン様とお話しする前にメモを取った。
「なるほど、水の力を使うのか。これは凄いものが出来そうだな」
「こんなに大きな水車を回せる力があるのですから、人の手だけでは出来なかったことを沢山出来るようになると思いますの」
「この魔道具が形になったら、馬車を作るペースも上げられそうだ」
「他にも色々なことに使えそうですわ」
メモを覗いたレオン様に、笑顔で言葉を返す私。
料理が運ばれてくるまでの間、彼もアイデアを出してくれたから、作りたいものが沢山出来た。
でも、ずっとダンスをしていると疲れてしまうから、関係を築いた方が良さそうな人からの誘いだけ受け入れた。
帝国の社交界でも、悪意を持って近付いてくる人はいるから、事前調査は必須なのよね……。
「お疲れ様。少し休憩したら、一曲お願いしてもいいかな?」
「ええ。レオン様もお疲れ様です」
受け入れたお誘いを終わらせて、壁際で少しだけ休憩することにした私達。
この歓迎パーティーでは料理も振舞われているから、少しだけ頂くことにした。
でも、お腹がいっぱいになるまでは食べられない。
帝国では騎士として功績を挙げた人が爵位を授かることが多いのだけど、その人達は必ずと言っていいほど沢山食る。
だから、その人達のために料理も王国のものとは比べ物にならないほどの量が振舞われている。
王国と違って満腹まで食べてもマナー違反にはならないけれど、コルセットでお腹を締め付けている今の状態では満足に食事なんて出来ないのよね……。
腰が細い方が美しいと言われるのは、王国も帝国も同じだからこうしているのだけど、長時間締め付けられていると苦しいのよね……。
でも、マナーだから我慢している。
気になった料理を取り終えてレオン様の元に戻ると、彼が取ってきた料理が目に入った。
普段はたくさん食べているレオン様があまり料理をとっていなかったから、少し驚いてしまう。
「レオン様はそれだけで良いのですか?」
「ルシアナが我慢しているのに、俺だけ満足いくまで食べることは出来ないよ」
「私は元々あまり食べませんから、これで良いのです」
「コルセットのせいで食べれないのだろう?」
そう言われてしまって、返事に困る私。
彼に見てもらえて嬉しい気持と、我慢させてしまって申し訳ない気持ちが一緒に生まれていた。
「だからって、レオン様に我慢はさせたくないのです。それとも、ご気分が優れないのですか?」
「いや、体調は大丈夫だ。ルシアナがそう言うならもう少し取って来よう」
それからすぐに戻ってきたレオン様は戻ってきたのだけど、やっぱり普段よりは少なかった。
でも、体調の問題ではないみたいだから、他に意図があるのだと思うことにした。
パーティー後は、例の馬車に揺られて屋敷に戻る私達。
けれども、窓の外の景色は行きとは違っていた。
「到着いたしました」
「ありがとう」
人通りが多い場所で止まったと思ったら、御者台からそんな声がかけられる。
でも、ここは屋敷の前ではない。
この後の予定は無いから寄り道は問題ないけれど、少し驚いてしまった。
「一緒にカフェにでもと思ったのだが、嫌だったか?」
「いいえ、嫌ではありませんわ」
ここのカフェは帝国で一番美味しいと言われているお店なのだけど、いつも商会の中で済ませていたから来るのは今日が初めて。
噂を商会の人達から聞いた頃からずっと来たかったのよね……。
もしかしたら、レオン様は私の心を読めるのかもしれない。
そんなことを思いながら、レオン様のエスコートでカフェの入口に向かう。
このお店のシンボルの水車が大きな音を立てているから、外での会話は難しい。
でも、中に入れば落ち着いた静かな空気に満たされていて安心した。
流石は有名なお店。雰囲気も完璧みたいね。
このお店は貴族向けに個室も用意してあって、私達はそこに案内された。
個室とは言っても、窓の外の運河や帝都を見渡せる景色の良い場所だった。
「気に入った?」
「ええ、とっても。連れてきてくれてありがとうございます」
お礼を言う私。
ここの料理は楽しみなのだけど、水車を見てから水の力を使う魔導具を思いついてしまったのよね……。
だから、レオン様とお話しする前にメモを取った。
「なるほど、水の力を使うのか。これは凄いものが出来そうだな」
「こんなに大きな水車を回せる力があるのですから、人の手だけでは出来なかったことを沢山出来るようになると思いますの」
「この魔道具が形になったら、馬車を作るペースも上げられそうだ」
「他にも色々なことに使えそうですわ」
メモを覗いたレオン様に、笑顔で言葉を返す私。
料理が運ばれてくるまでの間、彼もアイデアを出してくれたから、作りたいものが沢山出来た。
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