21 / 70
21. 商談成立です
しおりを挟む
アイネア殿下の後を追って、会場の真ん中の辺りに戻った私。
レオン様は皇帝様に捕まってしまったみたいで、私達の隣に来ていた。
ここは帝国で一番力のある侯爵家のパーティーだから、皇族が居ることは知っていたけれど、こんな展開は予想出来なかった。
レオン様も想定外のことに、少し戸惑っている雰囲気を感じた。
「わたくしは東側でいいかしら?」
「ええ、大丈夫ですわ」
笑顔で言葉を交わしていると、次の曲が流れ始める。
曲に合わせて、ステップを踏む私達。
「そちらの髪飾りはシエル商会のものでして?金の輝きが良いアクセントになって、とても似合っていますわ」
「ええ。貴女の髪飾りはアルカンシェル商会のもで合っているかしら?」
「合っていますわ。アイネア殿下の髪飾り、銀髪によく似合っていますわ。私も銀髪に生まれたかったですわ」
「ふふ、褒めてくれたありがとう。でも、貴女の明るいブロンドの方が綺麗だと思うわ。銀のお飾りって少し控え目だけれど、付けている人が引き立てられるように感じるわ」
お互いに褒め合いながら、息を乱さずにステップを踏んでいく。
アイネア様の優雅さに目を奪われそうになってしまうけれど、何とか押しとどまって言葉を返そうと口を開いた。
「褒めて頂きありがとうございます。私はアイネア殿下の髪色を羨ましく思っていますわ。
髪色と違うものも良いと思いますけれど、髪色と同じ色でも似合うと思いますわ」
「そう言われたら試したくなってしまうわ。曲が終わったら、交換してみたいわ」
そんな提案をされたから、曲が終わってからお互いの髪飾りを少しの間だけ交換することになった。
大きさは同じくらいのものだけれど、金と銀の違いのせいで印象は全く違う。
でも、私が身に着けていた髪飾りはアイネア殿下が付けても良く似合っていた。
「本当に似合うのね。私の方はどうかしら?」
「ええ、とても似合っていますわ」
それから少しの間、色々なことをお話しすることになった。
関わりが無かったアイネア殿下だけれど、私と同じように商会を経営している身だから話は弾んだ。
いつの間にか商談の話に変わっていたけれど、今は気にしない。
「私の瞳と同じ色のサファイアがあるのね。すごく気になるわ」
「今着けられているサファイアにも使っていますわ。私の首飾りのものは目立たないですけれど、一応この辺りにありますの」
私もアイネア殿下も、空を思わせるような蒼い瞳を持っているから、サファイアは似合うと思っている。
彼女も同じ考えだったみたいで、少し話題に上げたら興味を持たれたのよね。
「見つけたわ。そのサファイア、シエル商会に流してもらっても良いかしら?
銀の装飾品はシエル商会では作らないと約束するわ」
「では、私はアクアマリンを頂きたいですわ。もちろん、金の装飾品は作らないとお約束しますわ」
そんな風に言葉を交わしてからは、細かい条件に付いて話し合っていく。
五分が過ぎるころには、無事に話しがまとまった。
「わたくしはその条件で大丈夫よ」
「私も、この条件で合意しますわ」
契約書を交わすのは後になるけれど、無事に商談は成立した。
帝国で爵位を持たない私が皇族と関係を持つことになるなんて、お母様達に驚かれそうね。
そんなことを思っていたら、今度はアイネア殿下に似た髪色を持つ殿方が近付いてきた。
このお方は、皇帝陛下。爵位を持たない私が話しかけて良いお方ではないから緊張してしまう。
でも、そんな私よりもアイネア殿下が少し怯えているような気がした。
「アイネア、商談か?」
「ええ。このパーティーは人脈を広めるためのものと聞いていますわ。だから、無礼には当たらないはずですの」
「我も商談に来たのだから、気にするな」
陛下がそう口にすると、アイネア殿下は表情を緩めた。
けれども、その代わりに陛下から視線を向けられた私は緊張に襲われてしまった。
「アルカンシェルの商会長殿。――いや、アスクライ公国の皇女殿下とお呼びした方が良いか?」
そんな言葉をかけられて、返事に困ってしまう。
アスクライ公国を建国する話は昨日の夕食の席でお父様から伝えられていたけれど、こんなに早く帝国に根回しをしているとは思わなかったわ。
ちなみに、私が聞いたのは、公国の政治体制だけ。
ほとんどの国に倣って爵位は残しつつ、政治に関わるアストライア伯爵家とクライアス侯爵家は公家に身分を改める。
最初の二年間はクライアス侯爵様が主大公を務めて、お父様は副大公を務めるらしい。
政治を主導する立場が主大公で、副大公は補佐や主大公の監視役になる。
両家の跡継ぎになりうる人物は、王子や公女と呼ばれることになると聞いている。
王国では男性しか家を継げないのだけど、帝国と同じように女性であっても家を継げるようにするらしい。
そのことも含めて帝国にも話が回っているみたいね……。
皇帝陛下と良い関係を築けたら、お父様に迷惑をかけたことの償いが出来るかもしれない。
でも、今の一瞬だけでも一国の代表になるだなんて、私には荷が重すぎるわ。
レオン様は皇帝様に捕まってしまったみたいで、私達の隣に来ていた。
ここは帝国で一番力のある侯爵家のパーティーだから、皇族が居ることは知っていたけれど、こんな展開は予想出来なかった。
レオン様も想定外のことに、少し戸惑っている雰囲気を感じた。
「わたくしは東側でいいかしら?」
「ええ、大丈夫ですわ」
笑顔で言葉を交わしていると、次の曲が流れ始める。
曲に合わせて、ステップを踏む私達。
「そちらの髪飾りはシエル商会のものでして?金の輝きが良いアクセントになって、とても似合っていますわ」
「ええ。貴女の髪飾りはアルカンシェル商会のもで合っているかしら?」
「合っていますわ。アイネア殿下の髪飾り、銀髪によく似合っていますわ。私も銀髪に生まれたかったですわ」
「ふふ、褒めてくれたありがとう。でも、貴女の明るいブロンドの方が綺麗だと思うわ。銀のお飾りって少し控え目だけれど、付けている人が引き立てられるように感じるわ」
お互いに褒め合いながら、息を乱さずにステップを踏んでいく。
アイネア様の優雅さに目を奪われそうになってしまうけれど、何とか押しとどまって言葉を返そうと口を開いた。
「褒めて頂きありがとうございます。私はアイネア殿下の髪色を羨ましく思っていますわ。
髪色と違うものも良いと思いますけれど、髪色と同じ色でも似合うと思いますわ」
「そう言われたら試したくなってしまうわ。曲が終わったら、交換してみたいわ」
そんな提案をされたから、曲が終わってからお互いの髪飾りを少しの間だけ交換することになった。
大きさは同じくらいのものだけれど、金と銀の違いのせいで印象は全く違う。
でも、私が身に着けていた髪飾りはアイネア殿下が付けても良く似合っていた。
「本当に似合うのね。私の方はどうかしら?」
「ええ、とても似合っていますわ」
それから少しの間、色々なことをお話しすることになった。
関わりが無かったアイネア殿下だけれど、私と同じように商会を経営している身だから話は弾んだ。
いつの間にか商談の話に変わっていたけれど、今は気にしない。
「私の瞳と同じ色のサファイアがあるのね。すごく気になるわ」
「今着けられているサファイアにも使っていますわ。私の首飾りのものは目立たないですけれど、一応この辺りにありますの」
私もアイネア殿下も、空を思わせるような蒼い瞳を持っているから、サファイアは似合うと思っている。
彼女も同じ考えだったみたいで、少し話題に上げたら興味を持たれたのよね。
「見つけたわ。そのサファイア、シエル商会に流してもらっても良いかしら?
銀の装飾品はシエル商会では作らないと約束するわ」
「では、私はアクアマリンを頂きたいですわ。もちろん、金の装飾品は作らないとお約束しますわ」
そんな風に言葉を交わしてからは、細かい条件に付いて話し合っていく。
五分が過ぎるころには、無事に話しがまとまった。
「わたくしはその条件で大丈夫よ」
「私も、この条件で合意しますわ」
契約書を交わすのは後になるけれど、無事に商談は成立した。
帝国で爵位を持たない私が皇族と関係を持つことになるなんて、お母様達に驚かれそうね。
そんなことを思っていたら、今度はアイネア殿下に似た髪色を持つ殿方が近付いてきた。
このお方は、皇帝陛下。爵位を持たない私が話しかけて良いお方ではないから緊張してしまう。
でも、そんな私よりもアイネア殿下が少し怯えているような気がした。
「アイネア、商談か?」
「ええ。このパーティーは人脈を広めるためのものと聞いていますわ。だから、無礼には当たらないはずですの」
「我も商談に来たのだから、気にするな」
陛下がそう口にすると、アイネア殿下は表情を緩めた。
けれども、その代わりに陛下から視線を向けられた私は緊張に襲われてしまった。
「アルカンシェルの商会長殿。――いや、アスクライ公国の皇女殿下とお呼びした方が良いか?」
そんな言葉をかけられて、返事に困ってしまう。
アスクライ公国を建国する話は昨日の夕食の席でお父様から伝えられていたけれど、こんなに早く帝国に根回しをしているとは思わなかったわ。
ちなみに、私が聞いたのは、公国の政治体制だけ。
ほとんどの国に倣って爵位は残しつつ、政治に関わるアストライア伯爵家とクライアス侯爵家は公家に身分を改める。
最初の二年間はクライアス侯爵様が主大公を務めて、お父様は副大公を務めるらしい。
政治を主導する立場が主大公で、副大公は補佐や主大公の監視役になる。
両家の跡継ぎになりうる人物は、王子や公女と呼ばれることになると聞いている。
王国では男性しか家を継げないのだけど、帝国と同じように女性であっても家を継げるようにするらしい。
そのことも含めて帝国にも話が回っているみたいね……。
皇帝陛下と良い関係を築けたら、お父様に迷惑をかけたことの償いが出来るかもしれない。
でも、今の一瞬だけでも一国の代表になるだなんて、私には荷が重すぎるわ。
30
お気に入りに追加
3,315
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる