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20. 繋がりの予感
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「ルシアナ様、一曲お願いしても?」
穏やかな雰囲気の曲が流れ始めた時のこと、私は数人からダンスのお誘いを受けていた。
「ごめんなさい。最初はレオン様と踊ると決めていますの。その後でしたら、順番にご一緒させていただきますわ」
「失礼しました。また後ほどお誘いしますね」
「ええ、お待ちしていますわ」
今お話ししている相手は殿方だけれど、ご婦人方からもお誘いを受けている。
このパーティーの目的は交流を増やすことだから、私もレオン様も積極的に誘いを受けていかないといけない。
レオン様が私以外の女性に親切にしている様子を見ていると少し寂しくなってしまうけれど、いつも私に向けられている笑顔が無いことに気付いたから不安には襲われていない。
私が浮かべている笑顔だって社交用の仮面のようなものだから、お互い様だ。
「ルシアナ、一曲お願いしても?」
「ええ、もちろんですわ」
差し出されたレオン様の手をとって、曲に合わせてステップを踏む私。
あまり意識はしていないけれど、レオン様の動きに遅れたりすることは無い。
婚約する前から何回も彼と踊っているのだから、これくらいのことは造作もない。
「最初に難しい曲か……。このペースで大丈夫か?」
「ええ、レオン様となら余裕ですわ」
彼とならステップを踏むタイミングが変わってしまうことも無いから、難しい曲でも困ることは無い。
でも、他の方と一緒だと……相手の足を踏まない自信が無いわ……。
「そうか、それは嬉しいな」
「レオン様も同じですわよね?」
「確かに、ルシアナ以外だと厳しいかもしれないな」
そんなことをお話ししているうちに一番難しいところに差し掛かったから、会話は一旦終わり。
この曲は話しながらだと少し厳しいから、恥をかかないためには仕方ないわよね……。
躍り始めた時よりも視線を感じるから、失態は許されないわ。
だから気を引き締めて、最後まで無事に踊り切ったのだけど……。
「視線を感じると思ったら、俺達だけになっていたのか」
「注目されると少し恥ずかしいですわ」
「これだけの人数だから無理もない。俺も今すぐに壁際に行きたい気分だ」
半分は冗談だけれど、そんな言葉を交わす私達。
こんなにも注目されることは今までになかったから、緊張してしまうわ……。
でも、ダンスのお誘いを受けているから壁際には行けない。
そう思っていたのに、こんな声をかけられてしまった。
「誘っておいて申し訳ないのですが、貴女のようなお上手な方と踊ると恥をさらしてしまいそうなので今日は遠慮します」
「私、そんなに上手ではありませんわ。レオン様とだから、息が合うだけですの。
遠慮されると、私まで申し訳なくなってしまいますわ」
人脈を作る機会を失いたくないから、断らないで欲しいという意思を示してみる。
すると相手の方は渋々といった様子で……。
「申し訳ありません。やっぱり緊張で無理そうです」
「では、わたくしが代わりに踊ってもよろしくって?」
……断られてしまったのだけど、ふと姿を見せたご銀髪の女性に声をかけられた。
「皇女殿下のお気の召すままに」
「ルシアナさん、よろしくって?」
「ええ。よろしくお願いしますわ」
このお方はアイネア・アルバラン第一王女殿下。
銀髪に大空を彷彿とさせる透き通った蒼い瞳を持つ、美しいお方。
私と同い年で、身に着ける装飾品を作るために宝石商を営んでいるというお話は、ここ帝国では有名なお話。
アイネア殿下のシエル商会が作っている装飾品はどれも質が良いそうで、帝国に留まらずグレール王国でも人気になっている。
お姿を見るのは初めてだったから、最初は間違えてしまったけれど、私の知識が間違っていなければ、このお方は
驚きを笑顔の仮面の下に隠して、頷く私。
王国ではダンスの組は男女と決まっていたけれど、ここ帝国では交流を深めるために同性同士の組も多くみられる。
男性パートと女性パートとで分かれていた王国とは違って、帝国のダンスは最初に立つ方角によって動きが変わっている。
幼い頃から帝国の方々とも交流があったお陰で、私もレオン様も帝国のダンスだって難なく踊れる。
でも、まさか皇女殿下の目に入ってしまうなんて、夢にも見なかったわ。
穏やかな雰囲気の曲が流れ始めた時のこと、私は数人からダンスのお誘いを受けていた。
「ごめんなさい。最初はレオン様と踊ると決めていますの。その後でしたら、順番にご一緒させていただきますわ」
「失礼しました。また後ほどお誘いしますね」
「ええ、お待ちしていますわ」
今お話ししている相手は殿方だけれど、ご婦人方からもお誘いを受けている。
このパーティーの目的は交流を増やすことだから、私もレオン様も積極的に誘いを受けていかないといけない。
レオン様が私以外の女性に親切にしている様子を見ていると少し寂しくなってしまうけれど、いつも私に向けられている笑顔が無いことに気付いたから不安には襲われていない。
私が浮かべている笑顔だって社交用の仮面のようなものだから、お互い様だ。
「ルシアナ、一曲お願いしても?」
「ええ、もちろんですわ」
差し出されたレオン様の手をとって、曲に合わせてステップを踏む私。
あまり意識はしていないけれど、レオン様の動きに遅れたりすることは無い。
婚約する前から何回も彼と踊っているのだから、これくらいのことは造作もない。
「最初に難しい曲か……。このペースで大丈夫か?」
「ええ、レオン様となら余裕ですわ」
彼とならステップを踏むタイミングが変わってしまうことも無いから、難しい曲でも困ることは無い。
でも、他の方と一緒だと……相手の足を踏まない自信が無いわ……。
「そうか、それは嬉しいな」
「レオン様も同じですわよね?」
「確かに、ルシアナ以外だと厳しいかもしれないな」
そんなことをお話ししているうちに一番難しいところに差し掛かったから、会話は一旦終わり。
この曲は話しながらだと少し厳しいから、恥をかかないためには仕方ないわよね……。
躍り始めた時よりも視線を感じるから、失態は許されないわ。
だから気を引き締めて、最後まで無事に踊り切ったのだけど……。
「視線を感じると思ったら、俺達だけになっていたのか」
「注目されると少し恥ずかしいですわ」
「これだけの人数だから無理もない。俺も今すぐに壁際に行きたい気分だ」
半分は冗談だけれど、そんな言葉を交わす私達。
こんなにも注目されることは今までになかったから、緊張してしまうわ……。
でも、ダンスのお誘いを受けているから壁際には行けない。
そう思っていたのに、こんな声をかけられてしまった。
「誘っておいて申し訳ないのですが、貴女のようなお上手な方と踊ると恥をさらしてしまいそうなので今日は遠慮します」
「私、そんなに上手ではありませんわ。レオン様とだから、息が合うだけですの。
遠慮されると、私まで申し訳なくなってしまいますわ」
人脈を作る機会を失いたくないから、断らないで欲しいという意思を示してみる。
すると相手の方は渋々といった様子で……。
「申し訳ありません。やっぱり緊張で無理そうです」
「では、わたくしが代わりに踊ってもよろしくって?」
……断られてしまったのだけど、ふと姿を見せたご銀髪の女性に声をかけられた。
「皇女殿下のお気の召すままに」
「ルシアナさん、よろしくって?」
「ええ。よろしくお願いしますわ」
このお方はアイネア・アルバラン第一王女殿下。
銀髪に大空を彷彿とさせる透き通った蒼い瞳を持つ、美しいお方。
私と同い年で、身に着ける装飾品を作るために宝石商を営んでいるというお話は、ここ帝国では有名なお話。
アイネア殿下のシエル商会が作っている装飾品はどれも質が良いそうで、帝国に留まらずグレール王国でも人気になっている。
お姿を見るのは初めてだったから、最初は間違えてしまったけれど、私の知識が間違っていなければ、このお方は
驚きを笑顔の仮面の下に隠して、頷く私。
王国ではダンスの組は男女と決まっていたけれど、ここ帝国では交流を深めるために同性同士の組も多くみられる。
男性パートと女性パートとで分かれていた王国とは違って、帝国のダンスは最初に立つ方角によって動きが変わっている。
幼い頃から帝国の方々とも交流があったお陰で、私もレオン様も帝国のダンスだって難なく踊れる。
でも、まさか皇女殿下の目に入ってしまうなんて、夢にも見なかったわ。
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