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12. 試作品だから
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「ルシアナ様、馬車の試作品が出来たので報告に参りました」
レオン様とお話をしていると、ここ商会長室の扉がノックされた。
「ええ、少し待ってもらえるかしら?」
扉の向こう側にそう返してから、レオン様に向き直る私。
「お話し中に申し訳ないのですけど、少し席を外しても良いですか?」
「構わない。欲を言えば、ルシアナが新しい魔道具を作っているところを見たいのだが……良いだろうか?」
私が魔道具を作っている様子を見たいのか、そんなことを口にするレオン様。
彼に隠し事をするつもりは無かったから、私はこう返した。
「まだ売りに出さない物なので、内密にお願いしますね?」
「もちろんだ」
「ありがとうございます。これから工房に行くのですけど、危険な魔道具が沢山あるので気を付けてくださいね」
注意点を伝えてから立ち上がる私。
レオン様とのお話はあまり出来なくなってしまうけれど、試作品を作ってくれた人と情報を交換しながら工房に向かうことになった。
「一日で完成させられるとは思わなかったわ」
「風を送る魔道具を流用したんです。空気の量を調整する機構が完成したら、あっという間でした」
風を送る魔道具と聞いて、少し前に作った失敗作を思い出した。
埃を集める目的で作ったのだけど、威力が強すぎる上に埃を飛ばすだけだったのよね……。
魔力を込めすぎると椅子が吹き飛ぶ危険なものだったけれど、馬車の車体を持ち上げる目的なら上手く使えるらしい。
ちなみに、空気の量を調整する機構の基本は私が考えたものだけれど、実物を見ると改良が加えられていることが分かった。
「この金属の筒は何かしら?」
「風を直接ゴムレドンの筒に送ると微調整が難しかったので、鉄の筒に一度空気を貯めることにしたんです」
「そういうことね。理解したわ」
試しに、荷台に乗ってみる私。
普通の馬車ならほとんど揺れないけれど、私が乗るだけでも少しだけ揺れた。
でも、気になる揺れではないから、問題ではないわ。
もっと大事なのは、重い荷物を載せても壊れないこと。
だから、水を貯められる樽を積み込んでもらってから、その中に水魔法を使って水を満たした。
その直後のこと、何かが破裂する音が響いた。
「重さが一気に増えるとかなりゴムレドンの筒が潰れてしまうんです」
「潰れると折れてしまうのね……」
「はい。少しずつなら、問題は無いのですが……」
「この筒の部分はすぐに変えられるように作ってあるわよね?」
「そう指示されましたので、交換は出来ます。ですが、素材の方が足りなくて……」
壊れる前提で作ってあるけれど、ゴムレドンの素材が足りない様子。
だから、壊れた筒を直すことに決めた。
「ここに穴が開いただけだから、少し溶かせば直せそうね。次は折れるまで沈み込まないようにしましょう」
「分かりました」
それから水魔法で出した水を消してから、改良を始める私達。
物を持ち上げる魔道具を使って筒を取り出して、火魔法で穴を塞いでいく。
「レオン様、何もお話しできなくて申し訳ないですわ」
「俺のことは気にしなくていい。こうして見ているだけでも楽しいからね」
気にしなくて良いと言ってもらえたけれど、お話しできるときは彼との会話も楽しむ私。
そうして何度も改良していくと、ようやく水を一気に増やしても壊れない馬車が出来上がった。
「完成ね」
「はい。あとは物を載せていないときでも乗り心地が良ければ大丈夫です」
「試しに乗ってみましょう」
私がそう口にすると、レオン様や他の人たちが集まってきた。
ここにいる人達は全員、この完成を心待ちにしていたみたいね。
レオン様とお話をしていると、ここ商会長室の扉がノックされた。
「ええ、少し待ってもらえるかしら?」
扉の向こう側にそう返してから、レオン様に向き直る私。
「お話し中に申し訳ないのですけど、少し席を外しても良いですか?」
「構わない。欲を言えば、ルシアナが新しい魔道具を作っているところを見たいのだが……良いだろうか?」
私が魔道具を作っている様子を見たいのか、そんなことを口にするレオン様。
彼に隠し事をするつもりは無かったから、私はこう返した。
「まだ売りに出さない物なので、内密にお願いしますね?」
「もちろんだ」
「ありがとうございます。これから工房に行くのですけど、危険な魔道具が沢山あるので気を付けてくださいね」
注意点を伝えてから立ち上がる私。
レオン様とのお話はあまり出来なくなってしまうけれど、試作品を作ってくれた人と情報を交換しながら工房に向かうことになった。
「一日で完成させられるとは思わなかったわ」
「風を送る魔道具を流用したんです。空気の量を調整する機構が完成したら、あっという間でした」
風を送る魔道具と聞いて、少し前に作った失敗作を思い出した。
埃を集める目的で作ったのだけど、威力が強すぎる上に埃を飛ばすだけだったのよね……。
魔力を込めすぎると椅子が吹き飛ぶ危険なものだったけれど、馬車の車体を持ち上げる目的なら上手く使えるらしい。
ちなみに、空気の量を調整する機構の基本は私が考えたものだけれど、実物を見ると改良が加えられていることが分かった。
「この金属の筒は何かしら?」
「風を直接ゴムレドンの筒に送ると微調整が難しかったので、鉄の筒に一度空気を貯めることにしたんです」
「そういうことね。理解したわ」
試しに、荷台に乗ってみる私。
普通の馬車ならほとんど揺れないけれど、私が乗るだけでも少しだけ揺れた。
でも、気になる揺れではないから、問題ではないわ。
もっと大事なのは、重い荷物を載せても壊れないこと。
だから、水を貯められる樽を積み込んでもらってから、その中に水魔法を使って水を満たした。
その直後のこと、何かが破裂する音が響いた。
「重さが一気に増えるとかなりゴムレドンの筒が潰れてしまうんです」
「潰れると折れてしまうのね……」
「はい。少しずつなら、問題は無いのですが……」
「この筒の部分はすぐに変えられるように作ってあるわよね?」
「そう指示されましたので、交換は出来ます。ですが、素材の方が足りなくて……」
壊れる前提で作ってあるけれど、ゴムレドンの素材が足りない様子。
だから、壊れた筒を直すことに決めた。
「ここに穴が開いただけだから、少し溶かせば直せそうね。次は折れるまで沈み込まないようにしましょう」
「分かりました」
それから水魔法で出した水を消してから、改良を始める私達。
物を持ち上げる魔道具を使って筒を取り出して、火魔法で穴を塞いでいく。
「レオン様、何もお話しできなくて申し訳ないですわ」
「俺のことは気にしなくていい。こうして見ているだけでも楽しいからね」
気にしなくて良いと言ってもらえたけれど、お話しできるときは彼との会話も楽しむ私。
そうして何度も改良していくと、ようやく水を一気に増やしても壊れない馬車が出来上がった。
「完成ね」
「はい。あとは物を載せていないときでも乗り心地が良ければ大丈夫です」
「試しに乗ってみましょう」
私がそう口にすると、レオン様や他の人たちが集まってきた。
ここにいる人達は全員、この完成を心待ちにしていたみたいね。
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