上 下
13 / 21

墜落

しおりを挟む
 銀河連合の取り締まり機関である宇宙警察、通称ジャスティスが駆け付けた頃には時すでに遅く、魔人が星の半分を焼き尽くした後だった。ジャスティスは、魔法道具を回収し本部へと帰還する際、生き残っていた化け物の宇宙船から攻撃を受けてしまい墜落したのだった。それこそが10年前ニュースで話題になり、新井優が死の直前に目にした隕石だった。

 墜落する寸前、イマジンは息子を想う優の声を聞いていた。イマジンは月読と優を重ね「この願いを叶えてあげたい……」と思った。しかし宇宙船が墜落炎上した際、魔法道具も砕け炎に包まれた。憑代である魔法道具が砕けてしまったイマジンは、月読達を護れなかった強い後悔の念から思念体へと変貌を遂げた。しかし本体が砕け弱り切っていたイマジンには生命力のある憑代が必要だった。

 イマジンが「こんな所で消えて無くなるのか……」と思った時、墜落現場を野良猫が通り掛った。イマジンは迷わず野良猫に憑依した。イマジンが野良猫に憑依して直ぐに、宇宙警察の捜索部隊が墜落現場に派遣されて来た。墜落した宇宙船の側には難を逃れた隊員が倒れていた。捜索部隊の隊員が倒れていた隊員を助け起こし「魔法道具は!?」と聞くと「墜落した宇宙船の中に……」と答えた。

 捜索部隊は直ぐに消化活動を始め、墜落した宇宙船の回収に当たった。捜索部隊の宇宙船では、回収した宇宙船のブラックボックスの解析が始まった。解析をしていた隊員が「これは何だ?」と呟いた。そこには砕けた魔法道具から光の泡の様な物が出ている映像が映っていた。解析を進めると光の泡は何かしらのエネルギーだと解り、捜索部隊はエネルギーの行方を追った。

 捜索部隊に追われる事となった野良猫は街へと逃げ込むが、追手に見付かり逃げる途中、交通事故に巻き込まれ、それこそが10年前に武が目撃した野良猫だった。野良猫が武の腕の中で息を引き取る寸前、イマジンは武のしていたロザリオへと憑依する場所を移した。それからイマジンは武の生命力を借りながら回復するのを待ち10年が経っていた。

 武の見るヒーローアニメに最初は「何だこの化け物は!? この化け物を一撃で倒す強いヤツは何なんだ!?」と驚いたイマジンだったが、毎週繰り広げられるストーリーに次第に惹きつけられていった。イマジンは「これがこの星の人間の想像から生まれた物なのか!」と感心し、武が思い描くヒーローが楽しみとなり真っ直ぐな心を持つ武に好意を抱く様になっていった。

 武はイマジンの話しを聞きながら涙を流し「イマジンさん辛い思いして来たんだね……」と言った。イマジンは「さっきは聞き流したが、俺の名はイマジンサンじゃなくイマジンだ!」と言った。武は「あぁ…… イマジンてどんな字書くの? 異世界の魔人で異魔人?」と聞いた。イマジンは「イマジンはイマジンだ! 文字など知らん!」と言った。武は「じゃぁ~ 異世界の魔人って書いて異魔人にしようよ! その方が格好良いし!」と言った。イマジンは「そうか? まぁお前がそうしたいなら好きにすれば良い……」と少し照れた様に言った。

 武は「異魔人はあんな力があるのに何であの時逃げろって言ったの? ってか何で化け物だって分かったの?」と聞いた。異魔人は「あれは俺が魔人を具現化した時流れ込んで来た悪意の一部、一度は俺と同化した物だから感じるんだ!」と言った。武は「あんな力が有るなら、もっと早く変身させてくれても良かったのに……」と言った。異魔人は「最近になって、やっと具現化出来るまで回復したんだ!」と言った。

 武は「そうなんだ…… あの化け物は悪意の一部って言ったけど、他にもあんな化け物が居るの?」と聞いた。異魔人は「10年前魔法道具が砕けた時に俺の中に有った悪意も幾つかに分かれたんだと思う…… 俺の具現化する力が回復したのを切っ掛けに悪意が動き出したのかもしれない……」と言った。

 武は「他にも居るのなら2人で力を合わせて、俺の考えた正義の味方アライブで化け物を退治しようよ!」と言った。異魔人は「お前を危険なめにあわせる訳にはいかない! それに……」と言った。武が「それに何なの?」と聞くと、異魔人は「俺は追われる身、一緒に居ない方が良い……」と言った。武は「10年も捕まえに来ないんだから大丈夫だよ!」と言った。異魔人は「公園で派手に力を使ったから、存在が暴露(ばれ)たかも知れない…… もう既にジャスティスの奴らがここに向かってるかも……」と言った。

 武は「異魔人が悪い訳じゃないじゃん! 良いじゃん、2人でやろうよ~ !」と駄々を捏ねたが、異魔人は「暴走してたとは言え、俺がやった事に違いない……」と言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...