【完結】Alternative『この世界でめっさ幸運の持ち主がオルターナティブで負ける訳がない』

すんも

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落雷

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 さかのぼること3年前、大学院生だった神野は教授からの紹介もあり、ゲーム会社のオファーで、仮想空間を利用したゲーム開発を手伝っていた。そのゲームの試作が完成し、モニターのアルバイトを募集することになった。

 神野が休憩室でコーヒーを飲んでいると、開発担当と広報担当の社員が休憩室に入ってきた。

 広報担当が「ゲームがヒットするには、女子高生受けのする物でないと、今回の募集で女子高生が引っかってくれると良いけど……」と言った。開発担当は「だから冬休みの時期に募集したんですね、開発側としても女子高生の意見も聞いてみたいところですが、クリスマスもお正月も犠牲にしてアルバイトする女子高生なんていますかね」と言った。

 広報担当は「クリスマスパーティーとか初詣でとか、友達と遊びたい歳だよなぁ~ゲーム好きなニートしか集まらなかったらどうしよう」と言った。
 
 その会話を聞いていた神野の脳裏に1人の人物が浮かんだ。神野は「あの……」と声をかけた。

 開発担当が「あぁ神野さん」と神野に気付くと、神野は「休み中ずっとゲームしてる様な女子高生なら知り合いに心当たりが……」と言った。

 広報担当は「本当ですか、アルバイト料はずむんで是非連れて来て下さい」と言った。神野は「誘ってみないと解りませんが、とりあえず声をかけてみますね」と言った。
 
 神野は携帯を取り出し「もしもし也ちゃん」と電話をかけた。電話の向こうでは也沙が「お兄ちゃん久しぶり、元気してた?仕事大変みたいだね、おばちゃんが言ってたよ、毎晩帰りが遅いって」と言った。

 神野が「そのゲームの事で相談なんだけど、バイトしない?」と言った。也沙は「どんなバイト?」と聞いた。神野が「新作のゲームやって、変な動きが無いか確認してもらったり、ゲームの感想が聞きたいんだけど」と言った。

 也沙は「ゲームするだけでお金もらえるの!?楽なバイトだね、何時?」と乗り気で言った。神野が「12月25日から10日間くらい」と言うと、也沙は「冬休みの間ずっとじゃん」と言った。

 神野が「やっぱ無理かぁ~」と言うと、也沙は「駄目だなんて言って無いじゃん、知ってると思うけどゲームにはちとうるさいよ~」と言った。神野は「それじゃ担当者に話しておくね」と言って電話を切ると「OKだそうです」と担当に伝えた。

 広報担当が「本当? 助かります、ちなみにバイトに来る子って可愛いですか?」と言うと、神野は「可愛い方だと思いますよ」と言った。開発担当が「女子高生と仕事かぁ~」と言うと、広報担当が「年末年始仕事でもおっさんばっかと仕事するより女子高生がいればテンション上がるよなぁ~」と言った。開発担当は「やっぱ仕事は楽しくないと」と言った。神野は『さっきまで言ってた理由と違わないか!?』と思った。
 
 12月25日クリスマス、その日は朝から雲ゆきが怪しかった。

 アルバイトに選ばれた10名は、とある施設に集められた。施設に着くと説明のため食堂に集められた。

 也沙が座って責任者が来るのを待っていると、隣りに座っていた女が「バイトの内容聞いてる?本当にゲームするだけなら楽で良いよね」と話し掛けてきた。
 
 也沙が「一応、新作のゲームするだけって聞いてますけど……」と言うと、女が「まだ若いよね? いくつ?」と聞いた。也沙が「16歳です」と言うと、女は「良いなぁ~ 1番楽しい時期じゃん、あ! 自己紹介まだだったね、わたし細野麻里、宜しくね」と言った。也沙は「あたしは天願也沙です」と言った。
 
 しばらく雑談をしていると、責任者が来て説明を始めた。責任者は一通りゲームの説明をした後「食事は朝7時、昼12時、夜19時にこの食堂に集まって下さい。体調が悪くなった場合は速やかに申し出て下さい。部屋は各自に1部屋づつ用意しています。これから名前を呼ばれた順に、前にいる係りの者からルームキーをもらい1度部屋へと移動して下さい。12時になったら、この食堂で食事を取って13時からスタートしたいと思います。では……」と言うと順番に名前を呼んだ。
 
 也沙達がルームキーをもらい廊下を移動していると、また細野が「1人1部屋なんて、おまけに3食付いてるなんて待遇良いよね」と言った。也沙は「お風呂の事言ってなかったですよね? 部屋にあると良いなぁ~」と言った。

 也沙が自分の部屋を確認し「あたしここだ」と言うと、細野が「隣りだね、じゃぁまた後で」と部屋に入って行った。也沙も部屋に入り確認すると、ベッドにテレビ、トイレにお風呂もありビジネスホテル並みだった。
 
 12時が過ぎ、也沙が食堂に行くと既に細野が席に着いていた。也沙は細野の隣りに座った。テーブルの上にはチキンソテーや小鉢等が並べられていた。

 細野が「パンとライスはあそこに、あとスープと味噌汁も」と指差した。その指差した方向には男が立っていて「パンはこっちで温められます。スープが左で味噌汁は右の鍋に入っているので好きな方を」等と仕切っていた。也沙は「じゃぁ取って来ます」と言って席を立った。
 
 也沙はスープとパンを持って席に着き食事をしていると、仕切っていた男も席に着き食事をし始めた。也沙が「あの人係りの人じゃないんですか?」と聞くと、細野は「同じバイトみたいね」と言った。仕切っていた男は也沙達の隣りのテーブルで、チャラい男と食事をしながら話していた。

 その男は声が大きく、嫌でもその会話が聞こえてきた。仕切っていた男は米山豊と名乗り、以前は大手企業の派遣社員をしていただの、独立し会社経営をしていただの、やたら自慢話しをしていた。それを聞いて「本当っすか、凄いですね~」等とおだてているのが大塚雄二だった。
 
 細野は「あの米山とか言うやつ、何か鼻に付くのよね~」と言った。也沙は「さっきから自慢話ししかしてないですよね」と言った。細野は「結局、会社が駄目になったからバイトなんかしてるんでしょ!? あいつにだけは負けたくないわ」と言った。
 
 食事も終わり、係りの案内でガラス張りの部屋に通された。その部屋には様々な機械が設置され、各自に用意された椅子に座ると、ベッドギアみたいな物にゴーグルと手袋の様な物を着けさせられた。
 
 也沙が『ゲームじゃないの?』と思っていると、係りの人が「映像はゴーグルに映ります、操作は言葉と手を動かすだけで、マイクと手袋が感知しますのでキーボード等は使いません」と言った。

 誰かが「こんなんで動くんだ」と言うと、係りの人が「ログオンと言って下さい」と言った。也沙が「ログオン」と言うと、目の前にリアルな臨場感のある映像が映し出され、回りで「すげ~」と声がした。

 係りの人は「中断する場合はログアウト、辞める場合はシャットダウンと言って下さい」と説明し「後はこちらでデータを取りますので、食堂で説明した通りゲームを行って下さい」と言った。
 
 それから2時間半ほどゲームを続けると休憩の時間になった。也沙が紅茶を飲んでいると、細野が来て「くっそ~ あの米山とか言うやつに負けた」と言った。

 也沙が窓の外に目をやると「雨、かなり降って来ましたね」と言った。細野は「本当だ、何か遠くでやたら光ってるし」と言った。

 也沙が「クリスマスだって言うのに……」と言うと、細野は「クリスマスも何もデートする相手も居ないし、わっ! また光った」と言った。

 也沙が「でもケーキくらい食べたいなぁ~」と言うと、細野も「あたしもケーキ食べたい! 夕飯で出ると良いね」と言った。也沙が「そろそろ戻らないと」と言うと、細野は「見てろ米山!ギッタンギッタンにしてやる」と言った。
 
 それからゲームを再開して1時間ほど経ったころだろうか、也沙は「Decisive battle」と叫んだ。

 すると仮想空間でMihira《ミヒラ》と呼ばれる碧い衣を纏い牛に乗った巨大な神が現れ、その手には金色に輝くHoly Grail《聖杯》を持っていた。
 
 正面にはAnila《アニラ》と呼ばれる紅い衣を纏いガゼルに乗った巨大な神が盾を手に対峙していた。

 MihiraがAnilaに襲い掛かろうとした瞬間事件は起きた。施設に落雷があり、1部の機械がショートを起こしシステムが停止した。

 システムに繋がれていた10名の脳に電流が逆流したのか原因は不明だが、意識障害を起こし10名は直ぐさま病院へと搬送された。

 それ以来、也沙は植物人間となり笑う事も目を覚ます事も無かった。
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