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ゆるキャラ

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 也沙が何やら気配のする方を振り返ると、ゆるキャラの様な物がガッツポーズをしながら飛び跳ねている。也沙は固まって、そのゆるキャラをじっと見つめていた。やがてゆるキャラは也沙の視線に気付いたのか、也沙を見て固まった。

 也沙がやっと口を開く「何なの?この縫いぐるみは? こんな縫いぐるみ買った覚え……」すると縫いぐるみが「見えるですか?」と言った。也沙は「げっ! 何こいつしゃべった」とたじろいだ。
 
 也沙は縫いぐるみに「あんたいったい何なのよ!?」と気味が悪そうに言った。すると縫いぐるみが「鈴々は也沙の守護神なのだ!」と元気よく答えた。
 
 也沙は「このゆるキャラみたいなのがあたしの守護神?」と言うと、縫いぐるみが「神様に対してゆるキャラとは失礼なのだ!」とふくれっ面になった。也沙は「あんたみたいなゆるキャラがあたしの守護神なんて、いったい何時からそこにいるのよ!」と苛っとした口調で言った。縫いぐるみは「鈴々はずっと前から也沙と一緒にいるのだ!」と言い返した。
 
 也沙は「神様って言うなら証拠はあるの? あるなら見せなさいよ!」と言うと、縫いぐるみは「今日遅刻しなかったのもカードが良かったのも鈴々のおかげなのだ! テストだってジュースじゃんけんだって全部ぜ~ んぶ鈴々のおかげなのだ! 鈴々に感謝するのだ!」と言った。
 
 也沙は「そんな事言われたって信じられる訳……」と言うと、縫いぐるみは「鈴々はいつも也沙の為に頑張ってるのに、何で信じてくれないのだ!」と言って泣きだしてしまった。也沙は縫いぐるみが可哀想になり「分かったわよ、信じてあげるから……」と言うと、縫いぐるみは上目遣いで也沙を見て「本当に?」と言った。也沙は「とりあえずね!」と言うと、縫いぐるみは「ありがとなのだ、也沙が信じてくれて鈴々は嬉しいのだ」と言った。
 
 也沙は「でも何で急に出てきたのよ?」と聞くと、縫いぐるみは「そんな事は鈴々も知らないのだ! ところでゆるキャラって何なのだ?」と答えた。也沙は呆れて「あんたゆるキャラ知らないで怒ってたの?」と言った。縫いぐるみは怒りながら「あんたじゃないのだ!鈴々なのだ!」と言った。

 也沙は鈴々とのやりとりに少々疲れを感じ「とりあえずお風呂入るから、鈴々は着いてこないでよ!」と言って部屋を出て行った。
 
 也沙は湯船に浸かりながら「疲れてるのかなぁ~ 、きっとさっきのは夢よね?」等と独り言をつぶやいた。
 
 也沙は風呂から上がり、あのゆるキャラが消えてる事を期待して部屋のドアを開けた。すると鈴々が笑顔で「おかえりなのだ!」と言った。也沙は「やっぱ疲れてるんだ……」と言って鈴々を無視してベッドに入り電気を消した。
 
 翌朝、目覚まし時計の音で也沙は目覚めた。

 也沙は眠い目を擦りながら『あいつ!』と鈴々のことを思い出し、鈴々のいた場所へ視線をやると、そこに鈴々の姿は無くなっていた。也沙は『なんだやっぱり夢かぁ~』と思い寝返りながら横を向くと「おはよなのだ!」と鈴々が笑顔で言った。也沙は「やっぱり疲れてるんだ」と言って鈴々に背を向けて布団をかぶった。
 
 少しして也沙の部屋のドアがカバッと開き「起きなさい!」と母が入ってきた。也沙は母に「ママ、このゆるキャラの縫いぐるみがね……」と鈴々を指差して言うと、母は「何処にそんな縫いぐるみがあるのよ! 寝ぼけてないで、洗い物したいからご飯さっさと食べちゃってよ!」と言った。
 
 鈴々が「ママさんには鈴々が見えないのか?」と言ったが、也沙は「やっぱり疲れてるんだ」と自分に言い聞かせると鈴々を無視した。すると鈴々は「鈴々のこと信じるって言ったのに……」と泣きだした。也沙はそれも無視して部屋を出た。

 食事を済まし部屋へ戻ると鈴々は也沙の部屋で泣いたままだった。

 部屋に戻った也沙は痺れを切らした様に「分かったわよ! あんたのこと認めるから」と言うと、鈴々は「今度は本当? 鈴々は也沙と話せる様になって嬉しかったのだ、なのに也沙に無視されて本当に悲しかったのだ……」と言った。

 也沙が「今度は本当、たがら学校から帰ったら話そう」と言うと「約束なのだ!」と鈴々は嬉しそうに言った。也沙は「喜んでるとこ悪いけど着替えたいからちょっと出てて!」と言った。
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