上 下
1 / 32

幸運

しおりを挟む
 天願也沙(てんがんなりさ)は「Decisive battle」と叫んだ。

  するとMihira《ミヒラ》と呼ばれる碧い衣を纏い牛に乗った巨大な神が現れ、その手には金色に輝くHoly Grail《聖杯》を持っていた。
 
 正面にはAnila《アニラ》と呼ばれる紅い衣を纏いガゼルに乗った巨大な神が盾を手に対峙していた。

 MihiraがAnilaに襲い掛かろうとした瞬間、闇と静寂が也沙を襲った。
 
 「也沙…… 也沙……」也沙は遠くで自分を呼ぶ声を聞いていた。「也沙、いい加減起きないと遅刻するわよ!」その声の主は母だった。
 
 也沙は飛び起き時計を見て「やばっ!」と言うと、急いで着替えを済ませ階段を駆け下り母に「何でもっと早く起こしてくれなかったの!」と言って洗面所に向かった。母は「起こしたじゃない! また遅くまでゲームでもしてたんでしょ!」と怒鳴った。

 母が「ご飯は?!」と聞くと、也沙は「時間ないから要らない!」と言いながら洗面所を出ると鞄を手に廊下を走りながら「行ってきまぁ~ す」と言って玄関を飛び出した。
 
 左右もみないで門を飛び出し少し走った所で、後ろからプッ!とクラクションを鳴らされた。振り返ると、赤いミニクーパーが左によりハザードを点けて止まった。
 
 助手席の窓が開くと「也ちゃん学校間に合うの?」と声をかけられた。中を覗き込むと、隣りに住んでいる幼馴染みの神野未来(じんのみらい)だった。
 
 也沙は「こりゃ完全に遅刻ですな」と苦笑いすると、神野は「乗ってく?」と言って助手席のドアを開けてくれた。也沙は「ラッキー!本当にいいの?神野様は神様です」などと言いながら助手席に乗滑り込んだ。
 
 神野は右にウィンカーを出して発車すると「寝坊したの?」と聞いた。也沙は「まぁ~ そんなところで……」と言いながら頭をかいた。神野は「また遅くまでゲームでもしてたんだろ」と母と同じ事を言った。也沙は「お兄ちゃんに教えてもらったゲームが面白くて……」と答えた。
 
 也沙と神野は幼馴染みで、子供の頃から色々な漫画やゲームを教えてくれたり、ポケットゲームで攻略出来ないでいると一晩ポケットゲーム渡してる間に攻略してくれたりした。そんな神野を也沙は「お兄ちゃん」と呼んで懐いていた。
 
 「今日は俺が手掛けたゲームが発売されるんだ」と神野が嬉しそうに言った。神野は大手企業Σジャパンのグループ会社でゲームの開発を担当していた。也沙が「ご機嫌だね~ だから学校まで送ってもらえたのかな?」と言うと神野は「ご機嫌じゃなくても俺が困ってる也ちゃん見捨てたことないだろ!」と言った。也沙は「いつもいつもお前にばかり苦労かけてすまないね~」とおどけてみせた。
 
 也沙が「ところでそれってどんなゲーム?」と聞くと「Alternative(オルターナティブ)ってカードゲームなんだけど、簡単に言うと運の良い人が強いゲームかな?」と神野は簡単に説明した。「お兄ちゃんが作りったゲームなら面白そうだね」と也沙が言うと、神野は「最近、金使って強化すれば勝てるゲームばかりじゃん、だからジャンケンみたいに子供でも大人に勝てる様なゲームが作りたかったんだ」と目を輝かせた。神野は「まぁ~多少は確率とかあるかも知れないけど、どんなに強いカード持ってても運が悪ければ負けるし……」と言った。
 
 也沙が「カードゲームなんだ、面白そうだね」と言うと「携帯、ネット版は開発中だけど、とりあえず子供達が何処でも出来る様にカードゲームを先行で発売するんだ、オセロみたいに誰もが楽しめると良いけど……」などと神野が熱く語っいる間に也沙が通う学校に到着した。
 
 校門の前で車を止めると「間に合った?」と神野が聞いた。也沙は「余裕で、助かりました」とお辞儀をした。神野が「それじゃ勉強頑張って」と言うと、也沙は「うん、帰りにおもちゃ屋寄ってみる、友達にも宣伝して置くね」と言うと車を降りて手を振りながら校舎へと走って行った。
 
 「おはよ~」と也沙が教室に入ると友達の三枝深雪(さえぐさみゆき)が「おはよ~ 、何時も遅刻ギリギリなのに、今日はお早い登校で」と話しかけてきた。也沙は「ギリギリでも無遅刻だもん、流石に今日は終わったかと思ったけど」と言うと、三枝が「何時もより早いじゃん」と言った。也沙は「ラッキーな事にたまたま隣りのお兄ちゃんが車で通りかかって」と言うと、三枝が「あんたどんだけツイてるのよ」と言った。

 也沙は「日頃の行ないが良いから」と言うと、三枝が「どの口がそんなこと言うかね~ 、この前大遅刻したくせに」と呆れた顔をした。也沙は「あの時は本当ラッキーだったよ、担任は休みだし1時間目も担任の授業だったし」と言った。三枝が「あんた本当についてるよね~」等と話していると、担任が「みんな席について~ 、ホームルーム始めるよ~」と教室に入ってきた。
 
 ホームルームも終わり、三枝が「1時間目の数学、小テストだよね~」と言った。也沙が「え!忘れてた!! 昨日の夜ゲームしかしてないよ」と頭を抱えていると始業のチャイムが鳴った。
 
 数学の授業が終わり「小テストどうだった?」と三枝が話しかけると也沙はニヤリと笑った。三枝が「なんなのその不敵な笑みは?」と聞くと也沙は「昨日、ちょうど塾でやったとこが出た」と言ってチョコっと舌を出した。
 
 三枝は「あたしにもその運分けて欲しいわ!でも運の量は決まってるって言うし、そのうち纏めて悪いことが起きるかもしれないよ」と言った。也沙は「そうなんだよね~ 、これだけついてると恐いよね~」と嬉しそうに言った。三枝は「チッ」っと舌打ちをして「お前なんか不幸になれ!不幸になってしまえ!」とふざけて見せた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冬に鳴く蝉

橋本洋一
SF
時は幕末。東北地方の小さな藩、天道藩の下級武士である青葉蝶次郎は怠惰な生活を送っていた。上司に叱責されながらも自分の現状を変えようとしなかった。そんなある日、酒場からの帰り道で閃光と共に現れた女性、瀬美と出会う。彼女はロボットで青葉蝶次郎を守るために六百四十年後の未来からやってきたと言う。蝶次郎は自身を守るため、彼女と一緒に暮らすことを決意する。しかし天道藩には『二十年前の物の怪』という事件があって――

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

グラディア(旧作)

壱元
SF
ネオン光る近未来大都市。人々にとっての第一の娯楽は安全なる剣闘:グラディアであった。 恩人の仇を討つ為、そして自らの夢を求めて一人の貧しい少年は恩人の弓を携えてグラディアのリーグで成り上がっていく。少年の行き着く先は天国か地獄か、それとも… ※本作は連載終了しました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

宇宙警察ドラスティック・ヘゲモニー

色白ゆうじろう
SF
西暦3887年、地球と人口植民惑星「黒門」を結ぶ中継植民衛星「連島」 物流や経済、交通の拠点として地球規模以上の大都市として発展を遂げていた。 発展する経済、巨大化する資本。日に日に植民衛星「連島」の影響力は増大していき、もはや本国である日本政府ですら連島議会の意向を伺い、経済面では依存している状況にすらあった。 一方で「連島」には地球における政府のような強い権限と統治能力を有する行政機関が未発展であった。 とりわけ、衛星最大都市である【連島ネオシティ】では治安の悪化が顕著であった。 連島衛星は治安の悪化から、地球の自治体警察部に警察力の支援を要請した。 軍隊上がりの巡査五百川平治はじめ、多数の地球自治体警察から警官が特別派遣部隊員として連島へ送り込まれる。 到着した五百川らを待っていたのは、治安の安定した地球とは全く異なる世界であった。 インフラ整備のため先遣隊として初期為政を担った軍部、弱肉強食社会に異を唱える革新武装政治結社「ポリティカルディフェンダーズ」、連島の資本に熱い視線を注ぐ日本政府、カルト教団、国粋主義者たち、テロリスト・・・【連島ネオシティ】は様々な勢力が覇権を争う無法都市であった。

聖女は断罪する

あくの
ファンタジー
 伯爵家長女、レイラ・ドゥエスタンは魔法の授業で光属性の魔力を持つことがわかる。実家へ知らせないでと食い下がるレイラだが…… ※ 基本は毎日更新ですが20日までは不定期更新となります

エイリアンコップ~楽園14~

志賀雅基
SF
◆……ナメクジの犯人(ホシ)はナメクジなんだろうなあ。◆ 惑星警察刑事×テラ連邦軍別室員シリーズPart14[全51話] 七分署機捜課にあらゆる意味で驚異の新人がきて教育係に任命されたシドは四苦八苦。一方バディのハイファは涼しい他人顔。プライヴェートでは飼い猫タマが散歩中に出くわした半死体から出てきたネバネバ生物を食べてしまう。そして翌朝、人語を喋り始めた。タマに憑依した巨大ナメクジは自分を異星の刑事と主張、ホシを追って来たので捕縛に手を貸せと言う。 ▼▼▼ 【シリーズ中、何処からでもどうぞ】 【全性別対応/BL特有シーンはストーリーに支障なく回避可能です】 【ノベルアップ+にR無指定版/エブリスタにR15版を掲載】

エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ
SF
百万年の時を越え 地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時 人類の文明は衰退し 地上は、魔法と古代文明が入り混じる ファンタジー世界へと変容していた。 新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い 再び人類の守り手として歩き出す。 そして世界の真実が解き明かされる時 人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める... ※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが  もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います  週1話のペースを目標に更新して参ります  よろしくお願いします ▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼ イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です! 表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました 後にまた完成版をアップ致します!

処理中です...