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型落ち系ダウナー
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「だ、誰でしょうか?」
俺――――蒼崎 真成は押入れの中を二度見する。
そこには――――座りながら眠る美少女がいたからだ。
灰色の小さなTシャツとデニムパンツ。
当然、自分の知り合いにはこんな子はいない。
「あ、あのー?」
俺の問いかけになかなか反応しない。
もう目は開いているにも関わらず、だ。
「おーい?」
三度目の問いかけで、ようやく彼女は反応した。
「んん……おはようございます。マスター」
「……えぇ?」
目の前の彼女は立ち上がり、俺と目を合わせる。
――――Tシャツが小さいせいか、その瞬間、俺の目に彼女のヘソが映った。
「あちょ?!」
「ん?どうしたんです?」
俺はそれとなく腹から目をそらし、彼女に質問した。
「えーっと、君は誰だい?」
「マスターのパソコンです。20年以上前に使ってた奴」
――――は?
「この服見てくださいよ」
そう言うと、彼女はTシャツを引っ張った。
「これ、ちょうど2000年代に流行ったファッションだし」
「え?」
そういえば、この間の2000年代のファッションが今再流行していると聞いたことがある。
彼女の服装は、それにそっくりだった。
「それに見てください。このUSB端子。人間にはこういうのないでしょ?」
彼女は腕をまくる。そこには――――確かにUSB端子があった。
「お、おぉ?」
わけがわからない。なんで久しぶりにパソコンを使おうと思ったら美少女がいるんだ?
久しぶりに『あの動画』を見れると思ったのに……
URLを忘れたから、ここにブックマークが残ってると思ったんだが……
感情が波のように押し寄せる中、俺はその場に座り込んでしまった。
◇◇◇
「……あの、質問なんですけど」
座り込んだまま、俺は彼女に問いかける。
「なんですか?」
「なんでなかなか反応してくれなかったんです?」
彼女は一回目の問いかけで目を開けていたにも関わらず、三度問いかけるまで言葉を返さなかった。
「……むぅ!」
彼女の回答は予想外だった。
なぜか怒ったような声を出す彼女に、俺は更に質問する。
「ど、どうしたんです?」
「私は20年以上前のPCだからです!以上!」
そう言うと、彼女は部屋の隅へ走り去った。
「え、ちょ、どうしました!?」
彼女は部屋の隅でうずくまりながら答える。
「あなたにだって、コンプレックスくらいあるでしょ……」
その声は、さっきまでとは打って変わって弱弱しかった。
――――どうやら、この子にとって最新機種のようにサクサク動けないことはコンプレックスだったらしい。
申し訳ない気持ちになった俺は、どうしようか迷う。
その瞬間――――一つのアイデアを思いついた。
「あ、あの!あなたの動作、なんとかできるかもしれないです!」
「え……?」
首をかしげる彼女を前に、俺は今使っているPCを立ち上げた。
俺は『あるファイル』をインターネットからダウンロードする。
「なにをするつもりです?」
困惑する彼女に、俺はUSBを差し込む。
「うみゃ!?」
「一回、電源落とせる?」
俺は彼女に質問した。
「え、あ……はい」
そう言うと、彼女はうつむいた。
――――どうか、うまくいきますように。
◇◇◇
「……い」
ん?
「おーい」
私はマスターの声に反応する。
「なんでしょうか?」
すると、彼は静かに笑った。
「よかった。起動時間短くなってる」
「……え?」
そういえば、目を覚ましてから直ぐに立ち上がることができた。
――――でも、なんで?
「『Linux』って知ってる?」
「軽いOSだから、君に向いてるかな……なんて思って」
――――私は軽く体を動かす。
軽い。確かになにか違う感じはするが、明らかに体が軽い。
「あ……ありがとう、ございます」
「いえ、あ、いいよ別に、お礼なんて」
――――もしかしたら、今なら。
「あの!」
「ふぇ?」
私はその場にあった有線ケーブルを、足の裏に差す。
「『あの動画』、見ませんか?」
「……覚えてるの?」
――――忘れるわけがない。だって、何回あの動画を見たと思ってるんだ。
「ちょっとのいてください」
「うわっ?!」
マスターが驚くのも無理はない。だって、私の目から動画が投影されたんだから。
「さぁ、見ましょ」
「お、おぉ」
私とマスターは席に座る。
部屋の中を軽い音楽が響き渡る。
アニメの一部分を切り取り、面白おかしくつなぎ合わせる『Mad動画』。
その中でも、マスターのお気に入りだった作品が今始まった。
俺――――蒼崎 真成は押入れの中を二度見する。
そこには――――座りながら眠る美少女がいたからだ。
灰色の小さなTシャツとデニムパンツ。
当然、自分の知り合いにはこんな子はいない。
「あ、あのー?」
俺の問いかけになかなか反応しない。
もう目は開いているにも関わらず、だ。
「おーい?」
三度目の問いかけで、ようやく彼女は反応した。
「んん……おはようございます。マスター」
「……えぇ?」
目の前の彼女は立ち上がり、俺と目を合わせる。
――――Tシャツが小さいせいか、その瞬間、俺の目に彼女のヘソが映った。
「あちょ?!」
「ん?どうしたんです?」
俺はそれとなく腹から目をそらし、彼女に質問した。
「えーっと、君は誰だい?」
「マスターのパソコンです。20年以上前に使ってた奴」
――――は?
「この服見てくださいよ」
そう言うと、彼女はTシャツを引っ張った。
「これ、ちょうど2000年代に流行ったファッションだし」
「え?」
そういえば、この間の2000年代のファッションが今再流行していると聞いたことがある。
彼女の服装は、それにそっくりだった。
「それに見てください。このUSB端子。人間にはこういうのないでしょ?」
彼女は腕をまくる。そこには――――確かにUSB端子があった。
「お、おぉ?」
わけがわからない。なんで久しぶりにパソコンを使おうと思ったら美少女がいるんだ?
久しぶりに『あの動画』を見れると思ったのに……
URLを忘れたから、ここにブックマークが残ってると思ったんだが……
感情が波のように押し寄せる中、俺はその場に座り込んでしまった。
◇◇◇
「……あの、質問なんですけど」
座り込んだまま、俺は彼女に問いかける。
「なんですか?」
「なんでなかなか反応してくれなかったんです?」
彼女は一回目の問いかけで目を開けていたにも関わらず、三度問いかけるまで言葉を返さなかった。
「……むぅ!」
彼女の回答は予想外だった。
なぜか怒ったような声を出す彼女に、俺は更に質問する。
「ど、どうしたんです?」
「私は20年以上前のPCだからです!以上!」
そう言うと、彼女は部屋の隅へ走り去った。
「え、ちょ、どうしました!?」
彼女は部屋の隅でうずくまりながら答える。
「あなたにだって、コンプレックスくらいあるでしょ……」
その声は、さっきまでとは打って変わって弱弱しかった。
――――どうやら、この子にとって最新機種のようにサクサク動けないことはコンプレックスだったらしい。
申し訳ない気持ちになった俺は、どうしようか迷う。
その瞬間――――一つのアイデアを思いついた。
「あ、あの!あなたの動作、なんとかできるかもしれないです!」
「え……?」
首をかしげる彼女を前に、俺は今使っているPCを立ち上げた。
俺は『あるファイル』をインターネットからダウンロードする。
「なにをするつもりです?」
困惑する彼女に、俺はUSBを差し込む。
「うみゃ!?」
「一回、電源落とせる?」
俺は彼女に質問した。
「え、あ……はい」
そう言うと、彼女はうつむいた。
――――どうか、うまくいきますように。
◇◇◇
「……い」
ん?
「おーい」
私はマスターの声に反応する。
「なんでしょうか?」
すると、彼は静かに笑った。
「よかった。起動時間短くなってる」
「……え?」
そういえば、目を覚ましてから直ぐに立ち上がることができた。
――――でも、なんで?
「『Linux』って知ってる?」
「軽いOSだから、君に向いてるかな……なんて思って」
――――私は軽く体を動かす。
軽い。確かになにか違う感じはするが、明らかに体が軽い。
「あ……ありがとう、ございます」
「いえ、あ、いいよ別に、お礼なんて」
――――もしかしたら、今なら。
「あの!」
「ふぇ?」
私はその場にあった有線ケーブルを、足の裏に差す。
「『あの動画』、見ませんか?」
「……覚えてるの?」
――――忘れるわけがない。だって、何回あの動画を見たと思ってるんだ。
「ちょっとのいてください」
「うわっ?!」
マスターが驚くのも無理はない。だって、私の目から動画が投影されたんだから。
「さぁ、見ましょ」
「お、おぉ」
私とマスターは席に座る。
部屋の中を軽い音楽が響き渡る。
アニメの一部分を切り取り、面白おかしくつなぎ合わせる『Mad動画』。
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