5 / 21
Season1 探偵・暗狩 四折
読み解いて2
しおりを挟む
◇ 暗狩 四折
腕時計の針は1を指していた。
そろそろ昼食が食べたいけど……どこかにいい店はないものか。
「翔太、お昼何食べたい?」
「……特に何も」
じゃあ私の好きなのを選ぶか。
「姫路駅前のファミレスでいい?」
「いいよ」
ここから駅まで5分、その間になにか考えられるかな。
「そういや姉ちゃん、一つ質問なんだけど」
「……何?」
「姉ちゃんメール見た途端急に飛び出したけど、メールに何かあったの?」
何か、と言われても困る。
ただ依頼人が指定した場所が近くて、興味を引くものだったから以外の理由はないんだが。
「……強いて言うなら、パソコン?」
「どんなパソコンだったの?姉ちゃん」
私はパソコンの画像を思い出していた。
確か、横に『00』のキーがついたテンキーがあった気がする。
『00』というキーに見覚えがなかったから、よく覚えている。
「テンキー付きの随分古いパソコンで、確か10年前の機種のはずだけど」
翔太は聞くだけ聞くと、「ふーん」とだけ言った。
「失踪した人の私物?」
「うん。失踪した人が依頼人にもらったやつみたい」
翔太の質問に答えながら、私は道を歩いた。
◇暗狩 翔太
「で、どうだと思う?翔太」
落ち着いたファミレスの店内で、僕達は謎解きに励んでいた。
「どうだと思うって……これは姉ちゃんが頼まれたんじゃ」
「まぁいいじゃん!なんか考えてよ」
「そんなこと言われても……」
一応、僕は姉の言うことに従う。
暗号の数字『676800567004』。
何かの型番にしては長い気がするし、語呂合わせでもなさそうだ。
だとしたら……
「やっぱり、ポケベル?」
「……でも、私が試したらうまくいかなかったけど?」
「そうなんだよなぁ」
僕はどうしようか考えあぐねた。
目の前の姉は、のんきにステーキを食べていた。
「そういう姉ちゃんは?なんか考えてるの?」
「考えてもどうしようもないから、のんびり食べてる」
この人どうしようもないな。
「ま、食べ終わったらもう一度ゆっくり考えるから」
「はいはい」
僕はハンバーグを切り分けて、口に運んだ。
ドリンクバーに行って戻ってきたら、姉はステーキを平らげていた。
「食べるの早いね。ちゃんと噛んだ?」
「おかんか」
そうツッコむと、姉は顎に手を置いた。
「じゃ、考えましょうか」
「オッケー姉ちゃん」
姉と同じように、僕も顎に手を置く。
ポケベルでも語呂合わせでもないとしたらなんだ?
やっぱり型番?それか二人にしか通じない何かか?
そもそも、暗号化するならもっと複雑にしなきゃ。
ポケベルとかだと、ヒントさえあればすぐに元に戻される。
じゃあどうする?もっと複雑な方法で暗号化したのか?
もしくは……まさか。
「組み合わせ」
「……組み合わせ!」
数秒後、僕は目を見開いた。
「どうやら、翔太も同じところにたどり着いたみたいね」
「らしいね、姉ちゃん」
カルピスソーダを飲みながら、僕は姉と目を合わせた。
「暗号は二つ以上の方法を組み合わせて作られた。でしょ、翔太?」
「そういうことだね」
あくまで可能性の段階だが、それっぽさはある。
第一、ポケベル以外の方法は少々現実味がないように感じる。
それに、さっき思いついた方法以外は少々複雑すぎる気がする。
だが……どうするんだ?
「ねぇ翔太」
「……何、姉ちゃん」
「考えてる姿、結構様になってるよ!」
姉は涼しい笑顔で言った。
「……あっそ」
僕は姉から目をそらしながら、この状況の突破口を探していた。
◇暗狩 四折
「タッチパネルって便利だよね、翔太」
「それな」
もう少し推理が長引くことを悟った私は、デザートも注文することにした。
「……組み合わせとしても、何と何を組み合わせたんだろ」
私はソファにもたれかかり、推理を続ける。
簡単な暗号を作るとしたら、何を使う?
まぁ、そりゃ身近にあるものを使うよな。
わざわざ何かを買いに行った可能性もあるが……
「トリュフアイスでございます」
「ありがとうございます。姉ちゃん来たよ」
店員はペコリと頭を下げた。
美味しそうな黒色のそれを、私はスプーンで削る。
「どうする姉ちゃん?とりあえず家帰る?」
「それがいいかもね」
私は伝票を確認する。
さすがにこれ以上注文するのはまずそうだ。
「ねぇ翔太。翔太は何が暗号に使われたと思う?」
「え?」
私はふと、翔太に訊いてみた。
一人じゃ難しくなってきたから……ってのもある。
まぁ、翔太の考える姿をもう一度見たかったってのが本音だが。
「ねぇ翔太」
「……何?」
私はその瞬間、にやりと笑って見せた。
「まだまだだなー翔太も」
「え何が?」
「私くらいになると、考えてるときは何を言われても反応しないもん」
翔太は呆れた顔になった。
「それ何の自慢にもならないよ?」
「わかってまーす」
私はいつのまにか、トリュフアイスを食べ終わっていた。
弟は席を立ち、こちらに目を向けた。
「じゃ、帰ろっか。姉ちゃん」
「オッケー」
席を立ち、伝票を持つ。
その時、翔太が声をかけた。
「姉ちゃん、やっぱり暗号に使うとしたらあのパソコンじゃないの?」
「……どういうこと?」
翔太の声に、私は一瞬歩みを止めた。
「あれは失踪した人が依頼人にもらったやつなんでしょ?」
私はうんうんと首を縦に振った。
「だとしたら、何か二人にとって大切な物じゃないのかな?」
「……確かにね、翔太」
そうは言っても、パソコンで暗号を作るなんて何かおかしい。
機械で作るような暗号を、人間が解読できるわけ……その時だった。
私の体をぞわぞわした感覚が襲った。
「待ってて、翔太」
私はもう一度椅子に座り、周りの世界から自分をシャットアウトする。
パソコンを利用してどうする?パソコンを使って……違う!
暗号を作るのに利用したのはパソコンの『中』じゃなくて『外』なんじゃないのか?
キーボード?キーボードの順番……これも違う。
だとしたら……そうか!
「翔太、帰るわよ!」
「え、ちょっと!?」
私はその場から走り出していた。
会計を済ませると大急ぎで家に帰った。
腕時計の針は1を指していた。
そろそろ昼食が食べたいけど……どこかにいい店はないものか。
「翔太、お昼何食べたい?」
「……特に何も」
じゃあ私の好きなのを選ぶか。
「姫路駅前のファミレスでいい?」
「いいよ」
ここから駅まで5分、その間になにか考えられるかな。
「そういや姉ちゃん、一つ質問なんだけど」
「……何?」
「姉ちゃんメール見た途端急に飛び出したけど、メールに何かあったの?」
何か、と言われても困る。
ただ依頼人が指定した場所が近くて、興味を引くものだったから以外の理由はないんだが。
「……強いて言うなら、パソコン?」
「どんなパソコンだったの?姉ちゃん」
私はパソコンの画像を思い出していた。
確か、横に『00』のキーがついたテンキーがあった気がする。
『00』というキーに見覚えがなかったから、よく覚えている。
「テンキー付きの随分古いパソコンで、確か10年前の機種のはずだけど」
翔太は聞くだけ聞くと、「ふーん」とだけ言った。
「失踪した人の私物?」
「うん。失踪した人が依頼人にもらったやつみたい」
翔太の質問に答えながら、私は道を歩いた。
◇暗狩 翔太
「で、どうだと思う?翔太」
落ち着いたファミレスの店内で、僕達は謎解きに励んでいた。
「どうだと思うって……これは姉ちゃんが頼まれたんじゃ」
「まぁいいじゃん!なんか考えてよ」
「そんなこと言われても……」
一応、僕は姉の言うことに従う。
暗号の数字『676800567004』。
何かの型番にしては長い気がするし、語呂合わせでもなさそうだ。
だとしたら……
「やっぱり、ポケベル?」
「……でも、私が試したらうまくいかなかったけど?」
「そうなんだよなぁ」
僕はどうしようか考えあぐねた。
目の前の姉は、のんきにステーキを食べていた。
「そういう姉ちゃんは?なんか考えてるの?」
「考えてもどうしようもないから、のんびり食べてる」
この人どうしようもないな。
「ま、食べ終わったらもう一度ゆっくり考えるから」
「はいはい」
僕はハンバーグを切り分けて、口に運んだ。
ドリンクバーに行って戻ってきたら、姉はステーキを平らげていた。
「食べるの早いね。ちゃんと噛んだ?」
「おかんか」
そうツッコむと、姉は顎に手を置いた。
「じゃ、考えましょうか」
「オッケー姉ちゃん」
姉と同じように、僕も顎に手を置く。
ポケベルでも語呂合わせでもないとしたらなんだ?
やっぱり型番?それか二人にしか通じない何かか?
そもそも、暗号化するならもっと複雑にしなきゃ。
ポケベルとかだと、ヒントさえあればすぐに元に戻される。
じゃあどうする?もっと複雑な方法で暗号化したのか?
もしくは……まさか。
「組み合わせ」
「……組み合わせ!」
数秒後、僕は目を見開いた。
「どうやら、翔太も同じところにたどり着いたみたいね」
「らしいね、姉ちゃん」
カルピスソーダを飲みながら、僕は姉と目を合わせた。
「暗号は二つ以上の方法を組み合わせて作られた。でしょ、翔太?」
「そういうことだね」
あくまで可能性の段階だが、それっぽさはある。
第一、ポケベル以外の方法は少々現実味がないように感じる。
それに、さっき思いついた方法以外は少々複雑すぎる気がする。
だが……どうするんだ?
「ねぇ翔太」
「……何、姉ちゃん」
「考えてる姿、結構様になってるよ!」
姉は涼しい笑顔で言った。
「……あっそ」
僕は姉から目をそらしながら、この状況の突破口を探していた。
◇暗狩 四折
「タッチパネルって便利だよね、翔太」
「それな」
もう少し推理が長引くことを悟った私は、デザートも注文することにした。
「……組み合わせとしても、何と何を組み合わせたんだろ」
私はソファにもたれかかり、推理を続ける。
簡単な暗号を作るとしたら、何を使う?
まぁ、そりゃ身近にあるものを使うよな。
わざわざ何かを買いに行った可能性もあるが……
「トリュフアイスでございます」
「ありがとうございます。姉ちゃん来たよ」
店員はペコリと頭を下げた。
美味しそうな黒色のそれを、私はスプーンで削る。
「どうする姉ちゃん?とりあえず家帰る?」
「それがいいかもね」
私は伝票を確認する。
さすがにこれ以上注文するのはまずそうだ。
「ねぇ翔太。翔太は何が暗号に使われたと思う?」
「え?」
私はふと、翔太に訊いてみた。
一人じゃ難しくなってきたから……ってのもある。
まぁ、翔太の考える姿をもう一度見たかったってのが本音だが。
「ねぇ翔太」
「……何?」
私はその瞬間、にやりと笑って見せた。
「まだまだだなー翔太も」
「え何が?」
「私くらいになると、考えてるときは何を言われても反応しないもん」
翔太は呆れた顔になった。
「それ何の自慢にもならないよ?」
「わかってまーす」
私はいつのまにか、トリュフアイスを食べ終わっていた。
弟は席を立ち、こちらに目を向けた。
「じゃ、帰ろっか。姉ちゃん」
「オッケー」
席を立ち、伝票を持つ。
その時、翔太が声をかけた。
「姉ちゃん、やっぱり暗号に使うとしたらあのパソコンじゃないの?」
「……どういうこと?」
翔太の声に、私は一瞬歩みを止めた。
「あれは失踪した人が依頼人にもらったやつなんでしょ?」
私はうんうんと首を縦に振った。
「だとしたら、何か二人にとって大切な物じゃないのかな?」
「……確かにね、翔太」
そうは言っても、パソコンで暗号を作るなんて何かおかしい。
機械で作るような暗号を、人間が解読できるわけ……その時だった。
私の体をぞわぞわした感覚が襲った。
「待ってて、翔太」
私はもう一度椅子に座り、周りの世界から自分をシャットアウトする。
パソコンを利用してどうする?パソコンを使って……違う!
暗号を作るのに利用したのはパソコンの『中』じゃなくて『外』なんじゃないのか?
キーボード?キーボードの順番……これも違う。
だとしたら……そうか!
「翔太、帰るわよ!」
「え、ちょっと!?」
私はその場から走り出していた。
会計を済ませると大急ぎで家に帰った。
1
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる