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Season1 探偵・暗狩 四折
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◇暗狩 四折
この季節は朝から暑い。
私は公園の400mトラックを回っていた。
そろそろ14周といったところかな。
「ねーえーちゃーん!」
「……翔太!?」
トラックの外側、そこに弟はいた。
◇暗狩 翔太
「どうしたの翔太?」
僕はベンチに姉と並んで座った。
「姉ちゃんが家からいなくなってたから、前に言ってた公園かなと思って」
「ふーん」
僕は顔の汗をぬぐいながら、姉に尋ねた。
「この暑さでよく走れるね」
ジャージ姿の姉に、僕は水を手渡した。
「知りたがりは体が資本なの」
「……なんで?」
「『好奇心は猫をも殺す』って言うでしょ?多少の問題には対応できるようにしないと」
「ふーん」
まぁ筋は通ってるな。
「それじゃ、もうちょっとトレーニングしてくる」
「がんばれー」
僕は姉から水を受け取った。その時だった。
姉のポケットから、通知音が聞こえた。
「……何だろ」
姉はスマホを取り出して、その画面をしばし見つめた。
そして、にやりと笑った。
「姉ちゃんどうしたの?」
「走るのは終わり!事件よ!」
そう言うと、姉は公園の出口に向かって駆け出した。
「姉ちゃん?!走るのは終わりじゃなかったの!?」
「急がなきゃいけないでしょ!」
姉のスピードに押されつつ、僕も後を追う。
爽やかに走る姉に、僕は少し引いていた。
◇◇◇
「それで、これがその暗号ですか」
姉は公園と同じジャージ姿で、アパートの一室にいた。
「すいませんねTPOをわきまえない姉で」
「いえいえ……こちらがお願いしているのですから」
目の前の男は苦笑いをした。
どうやら、彼がこの姉に『推理』を依頼したらしい。
「それで、その暗号というのは」
「暗号?」
そういえば姉から何の説明も受けてない。
そんな僕の疑問に、男は答える。
「四日前から、同居人の男が行方不明なんです」
「二人で過ごし始めて11年ですが、何も言わずに長い間家を空けるなんてなかったんです」
「で、そいつが残したのが、これです」
彼はちゃぶ台の上に、一つの紙を置いた。
「……翔太、これ何に見える?」
「ただの数字」
姉はうんうんと頷いた。
目の前に映る『676800567004』という数字。
どう考えても、桁数が多い数字にしか見えない。
「あいつも大人だから、そんな危ないことには巻き込まれてないと思うけど……」
「安心してください。私と翔太が暗号を解読します」
「……巻き込まれた?」
まぁ、この人の不安になる気持ちもわかる。
僕だって、姉が何も言わず四日もいなくなったら怖い。
「……僕も探します。同居人さんのこと」
「ありがとうございます」
彼はペコリと頭を下げた。
◇暗狩 四折
自分の家に帰って数分、私はコーラを一口飲んだ。
「数字で置手紙……かぁ」
翔太は手紙を前にしてうなっている。
私も同様だ。正直言って、この手紙だけで暗号解読なんて難しい。
「……ねぇ翔太」
「何?」
「散歩行かない?」
その場に、数秒の沈黙があった。
「……はぁ?」
「よくあるじゃん。変なものがヒントになるやつ」
「それは刑事ドラマの話でしょ?姉ちゃん」
「まぁいいじゃん!いこいこ!」
私はスマホをポケットに入れ、リビングを出ようとする。
「姉ちゃんさすがに着替えよ?」
翔太にやんわりと指摘された。
「別にいいじゃない。ジャージでも」
「走るんじゃないでしょ?歩くんでしょ?」
だんだんと距離を詰める翔太。
「……はーいはい」
まあ、着替えにはそれほど時間はかからない。
私は自室に戻って、適当に服を変えた。
◇暗狩 翔太
「……暑い」
炎天下、僕は爽やかな顔の姉を見た。
「なんでそんな爽やかな顔してんだよ……」
「私はいつも走ってるからね。翔太とは違って」
ちょっとディスられつつ、僕と姉は歩みを進めた。
数百メートルほど歩いた、その時のことだ。
「……あれ?」
「どしたの姉ちゃん?」
「あそこの公衆電話なくなってない?」
姉の視線の先には、何もない空間があった。
確かに、あそこに公衆電話があったような気はするが。
「まぁ最近は携帯ばっかりだもんね、翔太」
「確かにね」
そんなことを駄弁りながら、僕はまた歩き出そうとした。
しかし、姉は動かなかった。
「……姉ちゃん?」
反応がない。
「ねーえーちゃん!」
二度呼びかけた、その直後だった。
「まさかっ!?」
「ちょ、姉ちゃん?!」
スマートフォンを取り出すと、姉はその液晶を勢いよく叩き出した。
「67……68……」
20秒程経過した。姉は液晶を見るのをやめた。
「あー、だめかぁ……」
「どうしたの一体?」
姉はスマホをポケットにしまうと、暗い顔をした。
「ポケベルって知ってる?翔太」
「……知ってるけど」
ポケベル、正式名称無線呼び出し。
数字の組み合わせで文章を送れるサービスで……数字?
「あ、そうか。あれがポケベルのやつだと思ったんだ」
「そゆこと。だけど……」
姉の顔はすぐに暗くなった。
「うまくいかなかったんだね」
姉はコクコクと首を縦に振った。
「……わっかんないな。翔太わかる?」
「姉ちゃんがわからないのに、わかるわけないじゃん」
僕と姉は、散歩の途中で立ち往生してしまった。
この季節は朝から暑い。
私は公園の400mトラックを回っていた。
そろそろ14周といったところかな。
「ねーえーちゃーん!」
「……翔太!?」
トラックの外側、そこに弟はいた。
◇暗狩 翔太
「どうしたの翔太?」
僕はベンチに姉と並んで座った。
「姉ちゃんが家からいなくなってたから、前に言ってた公園かなと思って」
「ふーん」
僕は顔の汗をぬぐいながら、姉に尋ねた。
「この暑さでよく走れるね」
ジャージ姿の姉に、僕は水を手渡した。
「知りたがりは体が資本なの」
「……なんで?」
「『好奇心は猫をも殺す』って言うでしょ?多少の問題には対応できるようにしないと」
「ふーん」
まぁ筋は通ってるな。
「それじゃ、もうちょっとトレーニングしてくる」
「がんばれー」
僕は姉から水を受け取った。その時だった。
姉のポケットから、通知音が聞こえた。
「……何だろ」
姉はスマホを取り出して、その画面をしばし見つめた。
そして、にやりと笑った。
「姉ちゃんどうしたの?」
「走るのは終わり!事件よ!」
そう言うと、姉は公園の出口に向かって駆け出した。
「姉ちゃん?!走るのは終わりじゃなかったの!?」
「急がなきゃいけないでしょ!」
姉のスピードに押されつつ、僕も後を追う。
爽やかに走る姉に、僕は少し引いていた。
◇◇◇
「それで、これがその暗号ですか」
姉は公園と同じジャージ姿で、アパートの一室にいた。
「すいませんねTPOをわきまえない姉で」
「いえいえ……こちらがお願いしているのですから」
目の前の男は苦笑いをした。
どうやら、彼がこの姉に『推理』を依頼したらしい。
「それで、その暗号というのは」
「暗号?」
そういえば姉から何の説明も受けてない。
そんな僕の疑問に、男は答える。
「四日前から、同居人の男が行方不明なんです」
「二人で過ごし始めて11年ですが、何も言わずに長い間家を空けるなんてなかったんです」
「で、そいつが残したのが、これです」
彼はちゃぶ台の上に、一つの紙を置いた。
「……翔太、これ何に見える?」
「ただの数字」
姉はうんうんと頷いた。
目の前に映る『676800567004』という数字。
どう考えても、桁数が多い数字にしか見えない。
「あいつも大人だから、そんな危ないことには巻き込まれてないと思うけど……」
「安心してください。私と翔太が暗号を解読します」
「……巻き込まれた?」
まぁ、この人の不安になる気持ちもわかる。
僕だって、姉が何も言わず四日もいなくなったら怖い。
「……僕も探します。同居人さんのこと」
「ありがとうございます」
彼はペコリと頭を下げた。
◇暗狩 四折
自分の家に帰って数分、私はコーラを一口飲んだ。
「数字で置手紙……かぁ」
翔太は手紙を前にしてうなっている。
私も同様だ。正直言って、この手紙だけで暗号解読なんて難しい。
「……ねぇ翔太」
「何?」
「散歩行かない?」
その場に、数秒の沈黙があった。
「……はぁ?」
「よくあるじゃん。変なものがヒントになるやつ」
「それは刑事ドラマの話でしょ?姉ちゃん」
「まぁいいじゃん!いこいこ!」
私はスマホをポケットに入れ、リビングを出ようとする。
「姉ちゃんさすがに着替えよ?」
翔太にやんわりと指摘された。
「別にいいじゃない。ジャージでも」
「走るんじゃないでしょ?歩くんでしょ?」
だんだんと距離を詰める翔太。
「……はーいはい」
まあ、着替えにはそれほど時間はかからない。
私は自室に戻って、適当に服を変えた。
◇暗狩 翔太
「……暑い」
炎天下、僕は爽やかな顔の姉を見た。
「なんでそんな爽やかな顔してんだよ……」
「私はいつも走ってるからね。翔太とは違って」
ちょっとディスられつつ、僕と姉は歩みを進めた。
数百メートルほど歩いた、その時のことだ。
「……あれ?」
「どしたの姉ちゃん?」
「あそこの公衆電話なくなってない?」
姉の視線の先には、何もない空間があった。
確かに、あそこに公衆電話があったような気はするが。
「まぁ最近は携帯ばっかりだもんね、翔太」
「確かにね」
そんなことを駄弁りながら、僕はまた歩き出そうとした。
しかし、姉は動かなかった。
「……姉ちゃん?」
反応がない。
「ねーえーちゃん!」
二度呼びかけた、その直後だった。
「まさかっ!?」
「ちょ、姉ちゃん?!」
スマートフォンを取り出すと、姉はその液晶を勢いよく叩き出した。
「67……68……」
20秒程経過した。姉は液晶を見るのをやめた。
「あー、だめかぁ……」
「どうしたの一体?」
姉はスマホをポケットにしまうと、暗い顔をした。
「ポケベルって知ってる?翔太」
「……知ってるけど」
ポケベル、正式名称無線呼び出し。
数字の組み合わせで文章を送れるサービスで……数字?
「あ、そうか。あれがポケベルのやつだと思ったんだ」
「そゆこと。だけど……」
姉の顔はすぐに暗くなった。
「うまくいかなかったんだね」
姉はコクコクと首を縦に振った。
「……わっかんないな。翔太わかる?」
「姉ちゃんがわからないのに、わかるわけないじゃん」
僕と姉は、散歩の途中で立ち往生してしまった。
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