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異世界転生はCM明けまでに
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今日の放送は『ミッドナイト・スナイパー』史上初めて、いや、日本のラジオ史上初の事態になるだろう。
なんてったって、ラジオの放送中にパーソナリティが死亡。しかも異世界転生したのだから。
0:10
「お疲れ様です。不幸にもあなたは階段から頭を滑らせて死亡…」
「それはわかってるの!ここから生き返る方法はあるの?!」
私の目の前に座る女神は、ひどく困惑していた。
「え、あ、あるっちゃありますけど」
――――今の曲『さぶまりんぶるーす!』は確か5分30秒の曲。
曲が終了した後のCMの時間も含めると6分の猶予か。
「ねぇ!どうやったら戻れるの?!」
女神は目を回している。
「えっと…魔王を倒していただければ…」
「スキルとかもらえないの?!」
「えっと…ユニークスキルはランダム付与で」
「魔王はどこにいるの?!」
女神は目を泳がせながら答える。
「え、えっと、それは教えられなくて」
「うるさい!早く教えなさい!」
女神は椅子から落ちる。
まるで熊でも見つけたようだった。
「ちゃ、茶色い山を抜けたら魔王城が見えるので、そこにいます!」
「と、とにかく、頑張ってきてください!」
その瞬間、私の周りを光が包んだ。
――――絶対に間に合わせて見せる。
20年続いたこの番組、私が終わらせるわけにはいかない。
0:56
「あ、起きた!」
目の前には中性的な子供が中腰で私の顔を見つめていた。
「実は神様からお姉ちゃんを――――」
私は彼の言葉を遮る。
「ごめんね!急いでるんだ!」
私は彼を避け、茶色の山に向かって走り出す。
「待って!お姉ちゃん!」
「どこ行くの!?」
私は走りながら答える。
「魔王城!」
「転生したばかりなのに魔王城とか無理だよ!」
その言葉を聞き、私は一度立ち止まる。
「そう?じゃあ、お話しながら行きましょう!」
「…は?」
そして、私と彼はまた走り始めた。
1:40
「で、その噓を見抜く秘訣ってのはなんだと思う?」
「お姉ちゃん…もう無理…」
そして、彼はその場に座り込んでしまった。
「それじゃあね!お元気で!」
私は彼を置いてそのまま走り去る。
毎日深夜1時から2時半までしゃべり続けてるんだ。
私の肺活量をなめるなよ。
2:20
緊迫した空気が流れる。
「おい!誰かが俺らの縄張りに入ってきやがったぜ!」
私は目の前の鬼の山賊を無視して走り去ろうとする。
ただ――――彼らは私の前に立ちふさがった。
「どけ!」
私は山賊の一人を倒す。
しかし、後ろからやって来た山賊の一人に足をつかまれた。
「つ~か~ま~え~た!」
まずい。ここで無駄に時間を使うわけにはいかない。
私を待つ500人以上のリスナーのためにも、これ以上時間を使うわけにはいかない。
「おらぁ!」
しかし、山賊のたちは私に飛びかかる。
「嘘…」
私は軽く絶望する。その瞬間、私は女神のセリフを思い出した。
――――えっと、ユニークスキルはランダム付与で
私は息を吸い込む。
ユニークスキルの使い方。女神のおかげか、体が覚えていた。
「『荒天・漆黒』!」
3:05
「何?!」
山賊の体は真っ二つに切断される。
鬼の体からは青色の血が流れていた。
「うわっ…」
吐き気がする。まぁ、企画で『検索してはいけない言葉100本ノック』をした時よりはグロくないと思い、私は走った。
CM明けまで後3分ほど。
私は無心で走り続けた。
4:10
「くたばれ!魔王!」
私は山賊から奪った金棒を振り回す。
「いきなり入ってくるとは!今回の勇者は礼儀がないなぁ!」
その一撃は簡単に躱された。
「噓でしょ!?」
魔王は即座にカウンターパンチを繰り出す。
「よっ!」
私は跳躍してその一撃をよける。
今気づいたが、どうやら身体能力向上もつけてくれたらしい。
後であの女神に礼を言っておこう。
私はもう一度攻撃を繰り出す。
ただ、魔王はその一撃を予測していた。
「運命 天と地 幕間 1から10へ」
「『アルティメット・ステロイド』」
私は本能の警告のままに、体を大きくのけぞる。
――――その瞬間、私の金棒は砕け散り、小指が破裂した。
4:30
「最期に、一言言い残したいことはあるか?」
まずい。最悪だ。
とにかくこのままだと死んでしまう。
最期に何を言う?命乞いでもするか?
ただ、それだとどうあがいても生き返ることはできない。
私は頭を全力で回す。
その結果。一つの結論にたどり着いた。
「あの…これは私が子供の頃UFOと交信した話なんだけど」
「…何?」
「山の中でブレイクダンス踊ってたら、急に大爆発と同時にUFOが現れて」
「一言と言ったろう!」
しかし、その直後に魔王は首を横に振った。
「いや、いい。続けろ」
――――勝った!
「そこで私は宇宙人にこう言ったの」
私は勝利を確信し、はにかんだ。
「『荒天・漆黒』!」
――――魔王の体は、私が瞬きしている間に3等分された。
「何…だと!」
「無詠唱で…こんな威力が…!?」
――――ありがとう。『聖剣宮城剣』。
私は光に包まれながら、エイプリルフールにUFOのおたよりを送ったリスナーに感謝した。
5:20
「お、おい!目を覚ましたぞ!」
「早く!救急車を!」
――――どうやら、私は無事に現実に帰ってきたらしい。
「いや、このまま行く」
「む、無理ですよ!すごい出血だし!」
「大丈夫よ…私も結構頑張ったんだし」
「え?」
目の前のADは困惑しながら、私を運ぶ。
そして、私はマイクの前に座った。
6:01
「『ミッドナイト・スナイパー』今日もご清聴ありがとうございました」
私は目覚めてから5分程時間をつぶし、番組を終える。
その直後、私の携帯にメッセージが送られてきた。
《言い忘れてましたけど、異世界と現実世界では時間の流れが全く違うので急いでも意味ないです… 女神》
うん。私はその場にあったポケットティッシュを投げ捨てる。
「私の!努力は!何だったんだ!」
私の怒りは、誰にも伝わらなかった。
なんてったって、ラジオの放送中にパーソナリティが死亡。しかも異世界転生したのだから。
0:10
「お疲れ様です。不幸にもあなたは階段から頭を滑らせて死亡…」
「それはわかってるの!ここから生き返る方法はあるの?!」
私の目の前に座る女神は、ひどく困惑していた。
「え、あ、あるっちゃありますけど」
――――今の曲『さぶまりんぶるーす!』は確か5分30秒の曲。
曲が終了した後のCMの時間も含めると6分の猶予か。
「ねぇ!どうやったら戻れるの?!」
女神は目を回している。
「えっと…魔王を倒していただければ…」
「スキルとかもらえないの?!」
「えっと…ユニークスキルはランダム付与で」
「魔王はどこにいるの?!」
女神は目を泳がせながら答える。
「え、えっと、それは教えられなくて」
「うるさい!早く教えなさい!」
女神は椅子から落ちる。
まるで熊でも見つけたようだった。
「ちゃ、茶色い山を抜けたら魔王城が見えるので、そこにいます!」
「と、とにかく、頑張ってきてください!」
その瞬間、私の周りを光が包んだ。
――――絶対に間に合わせて見せる。
20年続いたこの番組、私が終わらせるわけにはいかない。
0:56
「あ、起きた!」
目の前には中性的な子供が中腰で私の顔を見つめていた。
「実は神様からお姉ちゃんを――――」
私は彼の言葉を遮る。
「ごめんね!急いでるんだ!」
私は彼を避け、茶色の山に向かって走り出す。
「待って!お姉ちゃん!」
「どこ行くの!?」
私は走りながら答える。
「魔王城!」
「転生したばかりなのに魔王城とか無理だよ!」
その言葉を聞き、私は一度立ち止まる。
「そう?じゃあ、お話しながら行きましょう!」
「…は?」
そして、私と彼はまた走り始めた。
1:40
「で、その噓を見抜く秘訣ってのはなんだと思う?」
「お姉ちゃん…もう無理…」
そして、彼はその場に座り込んでしまった。
「それじゃあね!お元気で!」
私は彼を置いてそのまま走り去る。
毎日深夜1時から2時半までしゃべり続けてるんだ。
私の肺活量をなめるなよ。
2:20
緊迫した空気が流れる。
「おい!誰かが俺らの縄張りに入ってきやがったぜ!」
私は目の前の鬼の山賊を無視して走り去ろうとする。
ただ――――彼らは私の前に立ちふさがった。
「どけ!」
私は山賊の一人を倒す。
しかし、後ろからやって来た山賊の一人に足をつかまれた。
「つ~か~ま~え~た!」
まずい。ここで無駄に時間を使うわけにはいかない。
私を待つ500人以上のリスナーのためにも、これ以上時間を使うわけにはいかない。
「おらぁ!」
しかし、山賊のたちは私に飛びかかる。
「嘘…」
私は軽く絶望する。その瞬間、私は女神のセリフを思い出した。
――――えっと、ユニークスキルはランダム付与で
私は息を吸い込む。
ユニークスキルの使い方。女神のおかげか、体が覚えていた。
「『荒天・漆黒』!」
3:05
「何?!」
山賊の体は真っ二つに切断される。
鬼の体からは青色の血が流れていた。
「うわっ…」
吐き気がする。まぁ、企画で『検索してはいけない言葉100本ノック』をした時よりはグロくないと思い、私は走った。
CM明けまで後3分ほど。
私は無心で走り続けた。
4:10
「くたばれ!魔王!」
私は山賊から奪った金棒を振り回す。
「いきなり入ってくるとは!今回の勇者は礼儀がないなぁ!」
その一撃は簡単に躱された。
「噓でしょ!?」
魔王は即座にカウンターパンチを繰り出す。
「よっ!」
私は跳躍してその一撃をよける。
今気づいたが、どうやら身体能力向上もつけてくれたらしい。
後であの女神に礼を言っておこう。
私はもう一度攻撃を繰り出す。
ただ、魔王はその一撃を予測していた。
「運命 天と地 幕間 1から10へ」
「『アルティメット・ステロイド』」
私は本能の警告のままに、体を大きくのけぞる。
――――その瞬間、私の金棒は砕け散り、小指が破裂した。
4:30
「最期に、一言言い残したいことはあるか?」
まずい。最悪だ。
とにかくこのままだと死んでしまう。
最期に何を言う?命乞いでもするか?
ただ、それだとどうあがいても生き返ることはできない。
私は頭を全力で回す。
その結果。一つの結論にたどり着いた。
「あの…これは私が子供の頃UFOと交信した話なんだけど」
「…何?」
「山の中でブレイクダンス踊ってたら、急に大爆発と同時にUFOが現れて」
「一言と言ったろう!」
しかし、その直後に魔王は首を横に振った。
「いや、いい。続けろ」
――――勝った!
「そこで私は宇宙人にこう言ったの」
私は勝利を確信し、はにかんだ。
「『荒天・漆黒』!」
――――魔王の体は、私が瞬きしている間に3等分された。
「何…だと!」
「無詠唱で…こんな威力が…!?」
――――ありがとう。『聖剣宮城剣』。
私は光に包まれながら、エイプリルフールにUFOのおたよりを送ったリスナーに感謝した。
5:20
「お、おい!目を覚ましたぞ!」
「早く!救急車を!」
――――どうやら、私は無事に現実に帰ってきたらしい。
「いや、このまま行く」
「む、無理ですよ!すごい出血だし!」
「大丈夫よ…私も結構頑張ったんだし」
「え?」
目の前のADは困惑しながら、私を運ぶ。
そして、私はマイクの前に座った。
6:01
「『ミッドナイト・スナイパー』今日もご清聴ありがとうございました」
私は目覚めてから5分程時間をつぶし、番組を終える。
その直後、私の携帯にメッセージが送られてきた。
《言い忘れてましたけど、異世界と現実世界では時間の流れが全く違うので急いでも意味ないです… 女神》
うん。私はその場にあったポケットティッシュを投げ捨てる。
「私の!努力は!何だったんだ!」
私の怒りは、誰にも伝わらなかった。
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