妻は六英雄だが俺はしがない道具屋です

どらごんまじっく

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北へ向かう3日目 アリナ視点

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揺れる馬車の中、私は昨日のセシルの淫らな姿を思い出し悶々としていた。そんな私の気など考えず、セシルは何もなかったように接してくる。
「アリナさん、これ美味しいですよ、一個どうですか」
「あ……ありがとう」

明日は山賊などが多く出没するベルクナ山の峠越えが待っている、なので今日は無理をせず、ベルクナ山の麓の町で宿泊することになった。

この辺りは温泉が豊富に沸いていて宿にも大きな温泉浴場が完備しているところが多く、私たちが選んだ宿にも露天風呂があった。

「アリナさん、あとで一緒に露天風呂行きましょうね」
「そ……そうだね……あっフリージアも一緒にどうだ、三人で入りに行こうよ」
なぜかセシルと二人っきりだと気まずいような気がしてフリージアも誘う。
「はい、いいですね、裸の付き合いといきましょう」

そんな露天風呂だけど大変な誤算があった……
「ちょっと……どうしてゼロスがここにいるのよ……」
「何言ってんだ、ここは混浴風呂だぞ、俺だって入る権利があるだろうが」
「混浴! 嘘でしょ……」

そんなのは聞いてなかった……私はすぐにその場から出ようとした。
「アリナ、どこいくんだよ、温泉に入りにきたんだろ」
「悪いけど、気が変わったの、部屋に戻ります」
「そうかい……しかし、帰ろうとしてるのはお前だけのようだぞ、この二人は入っていくみたいだが、お前がいなくなっていいのか?」

しまった! 六英雄であるゼロスには聖騎士のフリージアも神官のセシルも逆らえない……私がこの場から去って二人とゼロスだけにしてしまったら何をされるかわかったものじゃない……
「わ……わかりました……温泉には入ります……だけど少し離れてもらえるかしら、やっぱり近くで夫以外の男性と風呂に入るのは抵抗があります」
「ヘヘヘっ……いいぜ、俺は向こうの隅で寂しく湯に浸かってるよ」

ゼロスが離れるのを待って、私たちは衣服を脱ぎタオルで身を隠しながら湯船に浸かった……少し離れているとは言っても、あのゼロスと裸に近い状態でいるのがたまらなく不快であった。

「さて、俺はそろそろ湯船から上がるかな」
そういってゼロスが立ち上がる……
「おっと……タオルを落としちまった……」
私たちの前を通る時に、ゼロスは明らかに故意にタオルを落とした……すると信じられないくらいに大きく反り上がった彼のアレが嫌でも目に入ってきた。
「きゃっ! ちょっ……ちょっと何してるの! 早くタオルで隠しなさい!」
「何を隠すんだよ……俺は見られて恥ずかしいような体はしてないぜ!」
確かにゼロスの体は、均整のとれた美しいとも言える筋肉美の肉体で、世の多くの女性が好むものではあった……

「いいから隠して出て行きなさい!」
「へいへい……それじゃお先に失礼するぜ」
そう言ってゆっくりとタオルで前を隠し、彼は露天風呂から出て行った──

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