勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

文字の大きさ
上 下
82 / 84
第7章 聖・魔剣使い

8.決着

しおりを挟む
魔王とのつばぜり合いの中、背後に現れた日野。

「日野、お前確かエルフの里で、牢に入っているはずじゃないのか?」

「手薄になったからな、抜け出すのは簡単だったよ!」

確かに戦力は集めるべきだけどさ、看守は残しとけよ!

「ふふふふ、この時を待っていたんだ、この時を……」

「日野くん!いくら何でも状況を考えて!」

「そうだ、今、大事な場面で……」

「だからこそさ!」

前門の魔王、後門の日野(異常者?)ってしゃれにならないな。

「工藤、僕は君が嫌いだよ、いつもいつも、君は多くの人の輪の中に居る……」

「それを言うなら、お前だって人の中心に居るだろ?」

「違う!そうじゃない、僕に付いてくるのは、金魚のふんばかりだ……」

自分で言うかい?いや、こいつも自覚有ったんだな。

「君は自然と人が集まった、羨ましかった……」

こいつ、どうした?頭を打ったか?

「……そして、同時に憎かった!」

あ、正常だわ。正常?

「お前は、僕の欲しいものを、自然に手に入れていた、それを奪ってやりたかった!」

「日野……」

そんな事を言う日野だが、何故かその目には暗いものがない、むしろ晴れやかとさえ見れる。

「工藤 明!」

そして、日野はこちらに近づいてくる。

「明くん、どうするの!?」

「どうもしないさ」

恐らくだが、日野は……。

「工藤 明、お前にばかりいい格好はさせない!」

日野は、味方だ!

「日野、ガラドボルグを握れ!」

「ああ!」

戦列に日野が加わった事により、一層聖魔剣の輝きが増す。

「己れ勇者め!!」

押されていたつばぜり合いは一気に形勢が逆転する。

「………過去にお前がどんな目に逢ったかは知らない、だが、人々の明日を奪っていい理由には成らない!」

「………人は他者の思いを踏みにじる、貴様とて、思うところがあろう?」

魔王が俺を見据えながら言う。

「それは」

「それは違うよ!」

俺が反論しようとしたところで澪が先に大きな声で叫ぶ。

「確かに、明くんはなかなか答えてくれないけど、でも、私を大切にしてくれる、私を見てくれる!だから、私の好きって気持ちは変わらない!」

「………人は他者を傷つける」

「あたしは傷つけられた、でも、明や皆のお陰で立ち直れた!人は癒す事もできる!」

「………人は力を使い他者を壊す」

「俺は力の使い方を間違った、だが、明は俺を止めてくれた!人は支え合う事ができる!」

「………人は妬み他者を蔑む」

「僕は明を妬み、明になりたいと思った、でも、それは違った、僕は明になりたいんじゃない、明みたいになりたいんだ!人は妬むけど、尊敬し合える!」

「ぬぅ!?」

全員のガラドボルグを握る力が強くなる。

「………人は明日を望む、誰かと居る明日を、その明日は誰にも奪う権利はない!それが例え魔王だろうと、神だろうと、俺達が打ち砕いてやる!」

俺が魔王に宣言すると。

〈よく言いました、人の子よ〉

いつの間にか後ろに居たのはナビさん………ではない、瞳が黄金に輝く、別の誰かだった。

〈貴方の想いに、わたしも僅かな光を添えましょう………〉

そう言って巨大な魔方陣を作り出す、そこから出てきたのは俺の所有するはずの聖剣と魔剣の全て。

〈今、切なの光を!〉

召喚された百本ずつの聖剣と魔剣は、白い光の帯と黒い光の帯に成りガラドボルグへ集まる。

「ぬぅ、己れ女神よ!又しても我が道の邪魔御するか!!」

女神?今、ナビさんの中には女神が?

〈…………〉

女神?と目が合う。

〈……さぁ、人の子よ、魔王に最後を!〉

女神が言い放つと聖魔剣の光が強くなる。

「明くん!」

「ああ、今は何でもいい、力を貸してくれるなら有りがたく使わせてもらう!」

ガラドボルグを握り直し、足を踏ん張る。

「ぐぅ、己れ!おのれ!!」

「さぁ、決着を着けるぞ!」

『おぉ!!』

「光に紡いで、明日を切り開け!ガラドボルグ!!」

掛け声と共にガラドボルグを振り抜く。

「……お、の、れぇ…………」

魔王が光に包まれていく。

あとは………。



「ぐぅ、我が、我が消えていく……」

光の中、魔王は自分の最後を悟。

「………魔王、デスを返してもらうぞ?」

「聖魔剣使い………」

魔王の腹にガラドボルグを突き刺す。

「ぐふぅ、くっ、くくく、良かろう、お主もいずれ気づく、所詮我らは、神の………」

その言葉を最後に、魔王の気配は霧散する。これで魔王の脅威は去った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...