勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第7章 聖・魔剣使い

8.決着

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魔王とのつばぜり合いの中、背後に現れた日野。

「日野、お前確かエルフの里で、牢に入っているはずじゃないのか?」

「手薄になったからな、抜け出すのは簡単だったよ!」

確かに戦力は集めるべきだけどさ、看守は残しとけよ!

「ふふふふ、この時を待っていたんだ、この時を……」

「日野くん!いくら何でも状況を考えて!」

「そうだ、今、大事な場面で……」

「だからこそさ!」

前門の魔王、後門の日野(異常者?)ってしゃれにならないな。

「工藤、僕は君が嫌いだよ、いつもいつも、君は多くの人の輪の中に居る……」

「それを言うなら、お前だって人の中心に居るだろ?」

「違う!そうじゃない、僕に付いてくるのは、金魚のふんばかりだ……」

自分で言うかい?いや、こいつも自覚有ったんだな。

「君は自然と人が集まった、羨ましかった……」

こいつ、どうした?頭を打ったか?

「……そして、同時に憎かった!」

あ、正常だわ。正常?

「お前は、僕の欲しいものを、自然に手に入れていた、それを奪ってやりたかった!」

「日野……」

そんな事を言う日野だが、何故かその目には暗いものがない、むしろ晴れやかとさえ見れる。

「工藤 明!」

そして、日野はこちらに近づいてくる。

「明くん、どうするの!?」

「どうもしないさ」

恐らくだが、日野は……。

「工藤 明、お前にばかりいい格好はさせない!」

日野は、味方だ!

「日野、ガラドボルグを握れ!」

「ああ!」

戦列に日野が加わった事により、一層聖魔剣の輝きが増す。

「己れ勇者め!!」

押されていたつばぜり合いは一気に形勢が逆転する。

「………過去にお前がどんな目に逢ったかは知らない、だが、人々の明日を奪っていい理由には成らない!」

「………人は他者の思いを踏みにじる、貴様とて、思うところがあろう?」

魔王が俺を見据えながら言う。

「それは」

「それは違うよ!」

俺が反論しようとしたところで澪が先に大きな声で叫ぶ。

「確かに、明くんはなかなか答えてくれないけど、でも、私を大切にしてくれる、私を見てくれる!だから、私の好きって気持ちは変わらない!」

「………人は他者を傷つける」

「あたしは傷つけられた、でも、明や皆のお陰で立ち直れた!人は癒す事もできる!」

「………人は力を使い他者を壊す」

「俺は力の使い方を間違った、だが、明は俺を止めてくれた!人は支え合う事ができる!」

「………人は妬み他者を蔑む」

「僕は明を妬み、明になりたいと思った、でも、それは違った、僕は明になりたいんじゃない、明みたいになりたいんだ!人は妬むけど、尊敬し合える!」

「ぬぅ!?」

全員のガラドボルグを握る力が強くなる。

「………人は明日を望む、誰かと居る明日を、その明日は誰にも奪う権利はない!それが例え魔王だろうと、神だろうと、俺達が打ち砕いてやる!」

俺が魔王に宣言すると。

〈よく言いました、人の子よ〉

いつの間にか後ろに居たのはナビさん………ではない、瞳が黄金に輝く、別の誰かだった。

〈貴方の想いに、わたしも僅かな光を添えましょう………〉

そう言って巨大な魔方陣を作り出す、そこから出てきたのは俺の所有するはずの聖剣と魔剣の全て。

〈今、切なの光を!〉

召喚された百本ずつの聖剣と魔剣は、白い光の帯と黒い光の帯に成りガラドボルグへ集まる。

「ぬぅ、己れ女神よ!又しても我が道の邪魔御するか!!」

女神?今、ナビさんの中には女神が?

〈…………〉

女神?と目が合う。

〈……さぁ、人の子よ、魔王に最後を!〉

女神が言い放つと聖魔剣の光が強くなる。

「明くん!」

「ああ、今は何でもいい、力を貸してくれるなら有りがたく使わせてもらう!」

ガラドボルグを握り直し、足を踏ん張る。

「ぐぅ、己れ!おのれ!!」

「さぁ、決着を着けるぞ!」

『おぉ!!』

「光に紡いで、明日を切り開け!ガラドボルグ!!」

掛け声と共にガラドボルグを振り抜く。

「……お、の、れぇ…………」

魔王が光に包まれていく。

あとは………。



「ぐぅ、我が、我が消えていく……」

光の中、魔王は自分の最後を悟。

「………魔王、デスを返してもらうぞ?」

「聖魔剣使い………」

魔王の腹にガラドボルグを突き刺す。

「ぐふぅ、くっ、くくく、良かろう、お主もいずれ気づく、所詮我らは、神の………」

その言葉を最後に、魔王の気配は霧散する。これで魔王の脅威は去った。
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