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第7章 聖・魔剣使い

5.魔王の力

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俺を庇い貫かれたデュラハンの身体から剣が引き抜かれる。

ガシャン!

という鎧が倒れる大きな音で我に代える。

「チッ、邪魔をしよって……」

「お前!!」

聖魔剣を振り抜くがそこには何も居なかった、魔王は既に広間の反対側にある玉座に座っていた。

「くそ!」

直ぐに追撃に出ようとするが、それをデュラハンが俺の腕を掴む事で止める。

「っ!!」

デュラハンは落ち着けと言いたげに俺の腕を離さない、だが、着実に掴む手は力を失いつつある、刺された鎧からは黒い靄が空中に消えていき、その存在が消えつつ有ることを物語っていた。

「どうした聖魔剣使い?所詮はただの魔物、悲観することはないだろ?」

その物言いとニタついた顔はデスの物ではなかった。

「……お前はデスじゃないな?」

「当たらずも遠からず、今はわたしがデスだ」

「……本人はどうした?」

「だから、わたしが……」

「答えろ!!」

殺気を込めながら怒鳴る、魔王はため息を着きながらめんどくさそうに。

「死んだよ、いや、正確には消滅か?存在事態が抹消されたのだからな?」

魔王が高笑いをする。その瞬間何が切れた音がした。

「明くん!?」

澪の声がやたら遠くに聞こえた。気づいた時には魔王に向かって聖魔剣を再び叩き付けていた。

「クックックハハハ、聖魔剣も使えないのに、よくやるな?」

「黙れ!!」

聖魔剣は軽々と魔王に受け止められる。

何度かの応戦の後、力負けして吹き飛ばされる。

「ガッ、グッ……」

「明くん!」

「邪魔はさせん!!」

俺と澪達の間に魔物の壁が出来る。

「くっ、澪、司!」

「明!」

「今は生き残ることを考えろ!」

「………明、わかった!みんな!陣形を組め!」

司の指示に従い、勇者組は一ヶ月間みっちり仕込んだ陣形を組始める。

「あっちは大丈夫そうだな」

本来エルフの弓とガレオンの重装甲を踏まえた陣形だが、うまく司が調整したらしく、問題無く立ち回っている。

「あとは……」

「よそ見をしてていいのか!?」

司達の状況を確認していると、魔王に蹴り飛ばされる。

「チッ、癖の悪い足だな!」

魔王の足に向かって聖魔剣を横凪ぎにする。

「フン、陰気な剣だな、陰剣道だったか?」

魔王は軽く剣でいなし、現代の知識を披露する。

「………前の勇者の知識か」

少なくとも、この世界には剣道は無かった、あるのは剣術だ。

「あぁ、そうだよ、わたしは宿主の知識を食らう、お前の知識も食らってやりたいが、勇者で無いのが残念だよ」

「ちっ、趣味の悪い」

「お前の代わりに、あそこに居る娘を食らうとするかな?」

澪を指差し、笑うデスの顔に拳を叩き込む。

「させると思うか?」

拳は届く寸前でデスに止められる。

「お前に止められるのか?」

「グッ……」

そのまま投げ飛ばされ壁に叩きつけられる。

「さて、そろそろ遊びは終わりにしようか?」

そう言うと魔王はその体に剣を突き刺した。

「くくく、この剣はな、聖魔剣・死王と言って、まぁ、簡単に説明するとわたしの本来の力を取り戻す事ができるのだよ!」

徐々に禍々しい黒い靄が膨れ上がる。その靄は炎の様に揺らめくが霧散することはなく、高い天井に届くほどの大きな影になる。

「見よ!恐れよ!これが我が本来の力!」

「………絶望の化身とは良く言ったもんだな」

その姿はまさに絶望、威圧感も去ることながら、見た者に死の恐怖を与える力でも有るかのようだ。

「加えて頼みの綱の聖魔剣は使えない、ナビさん?何か良い手は無いかな?」

〈…………〉

どうした、何か言ってくれよナビさん。

〈二つだけ、有ります〉

ほう、聞こうじゃないか。

〈一つは、この場から全力で逃げること、少なくともマスターは助かります〉

却下だ、司達を見捨てる選択肢はない。

〈二つ目は、勇者の一人を犠牲に魔王を再度封印する事です〉

却下だ!!誰かを犠牲になんて、絶対にしない!

「………結局やることは変わらずか」

「いい加減諦めよ、その方が楽になるぞ?」

「あいにく、諦めが悪い性分でね、行くぞ魔王!」

未だ見ぬ勝機を信じて聖魔剣を振り上げる。

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