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第7章 聖・魔剣使い
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グラン国王は魔王の倒し方を知っていると言った、が、その理由に引っ掛かった。
「ちょっと待て、デスに聞いたのか?」
「はい」
「………まぁ、前勇者だし、知ってるか?」
「いえ、魔王の思念体に直接聞いたそうです」
「………どうやったらそんな事が出来るんだ?」
「そ、そこまでは……」
もはや、頭痛を感じる。
「まぁ、いいか、で?方法は聖魔剣か?」
「はい、魔王の話に寄れば……」
まとめると、魔王を倒せるのは真に聖魔剣を使える〈勇者〉のみとの事、何でも千年前にまだ肉体を持っていた魔王を倒したのが、聖魔剣の勇者だったとか。
「そして、思念を消す事が出来るのも、聖魔剣の勇者のみとの事です」
「………それは、不味いな」
「どうしてよ?あんたがその魔王を切ればいいんでしょ?」
「ううん鈴、そうはいかないよ」
「うん、何故なら明は……」
「明は勇者ではない」
「………」
そう、唯一使える俺は勇者ではない。
「恐らく、聖魔剣使いに付属する勇者の称号は、何らかの形で消滅、もしくは魔王が所持していると考えて良いだろう、だから余裕こいてペラペラ喋ったんじゃないか?」
「うーん、何かないの他の方法は!明、いつもの不思議な力でどうにかしなさいよ!」
「だ、そうだ不思議な力のナビさん?」
〈………申し訳ありませんマスター、今回はお役に立てそうにありません〉
ナビさんが申し訳なさそうに頭を下げる。
「だってさ」
肩をすくめながら鈴に言う。
「じゃあどうするのよ!?」
鈴が喚くが答えは出ない、その後しばらく話し合い、意見は出るがどれも確信はなく、意見は纏まらなかった。
「皆様、そろそろ休憩にしませんか?今夜は戦後の宴を開きますので」
リュエさんが休む事を進める、気づけばいつの間にか日は暮れて夜になっていた。
「………そうだな、今日の所は休もう」
会議は中断しひとまず宴に参加したが、当然と言えば当然なんだが、司達はあまり盛り上がっていない。
「はぁ、寝るか………」
俺も問題が問題だけに盛り上がれるはずもなく早めに寝る事にした。
「……工藤様、少しよろしいでしょうか?」
そこにやって来たのはミレナ女王だった。
「何だ?」
「………以前次はないと言われて置きながら、今回の始末、工藤様には私を断罪する権利があります」
「…………」
あー、そんな事言ったな。
「………しかし、どうかもう少しだけお待ち頂けませんか?」
「………そうだな償いたいなら、司達を元の世界に帰すのを罰にしようか?」
「ありがとうございます」
罰を与えて礼を言われる、奇妙な光景だ。
その後は軽くミレナ女王と雑談をして、用意されたテントに行く。
が、その途中。
「今度はあんたかリュエさん」
「はい、わたくしも工藤さんにお話がありまして」
「ちょうど良い、俺もリュエさんに話があったんだ、あんたデスを知ってるな?それもかなり親しいんじゃないか?」
俺の質問にリュエさんは微笑む
「ふふふ、あの子の話通り、頭が良いのですね」
あの子とはやはり。
「デスに最近会ったのか?」
「はい、日野を連れてきたのは他でもないあの子ですから、帰って来たらお仕置きですね」
若干背筋が寒くなったが、話を続けよう。
「なら、やっぱりデスの言っていた師匠って言うのは?」
「はい、わたくしでございます、あの子には旅の中で色々な事を教えました」
懐かしそうに微笑むリュエさん。
「………グラン国王が言ったことは?」
「真実です」
「そうか、………仮に魔王を倒したらデスはどうなる?」
「………恐らく共に消えるのでしょう」
「………いいのか?」
「それが、あの子の望みですから」
それだけ言って立ち去るリュエさん。はぁ、寝るか。
テントに入ると、もう既に人が居た。
「入るテントを間違えたか?ここは俺のテントのはずだが?」
「いや、会ってるよ」
答えたのは司だが、居るのは司だけじゃない、澪、鈴、敦も居る。
「何だ?話なら明日にしてもらいたいんだが?」
「いや、そうじゃないんだ」
「みんな不安なんだよ、これからの事が」
「あんたみたいに、変な力ないし」
「うむ……」
そうゆう事ね、まぁ、無理もないか。
「クロエ」
「はっ、ここに」
出てきたのは何故か簡易ベッドの下……。
「全員分の布団を用意してくれ」
「畏まりました」
そしてベッドの下に戻る……。
「……今、ベッドの下に」
「鈴、ツッコんだら負けだ」
何をもって勝ちとするのやら。
「……そっか、下は盲点だった、ずっと上ばかり見てたから………」
「そこ感心するな」
澪に呆れつつクロエが布団を用意するのを待つ。
「所で司」
「なんだい?」
「お前、ベッド使うか?」
「………遠慮しておくよ」
司が爽やかに微笑みながら答える。
「いやいや、ほら、俺布団の方が寝付きが良いから」
「ははは、元々明のテントじゃないか、明がベッドを使うべきだよ」
中々譲ろうとしない司。
「お待たせしました」
そんなやり取りをしていると、クロエ達が布団を持って戻ってきた。
「ありがとうございます、クロエさん」
さりげなく司が布団を受け取りに動く、ちっ、先を越されたか、いつの間にか澪達も布団を受け取っていた、どう足掻いてもあのベッドに寝るしかないようだ。
「はぁ、今日は寝れない気がする……」
「馬鹿言ってないで、あんたも寝る支度しなさいよ!」
「へいへい」
鈴に促され渋々ベッドに入る。
「明かり消すよー」
「おー」
寝る準備が出来ると澪がカンデラを消す。
「………なぁ、ベッドの下誰も居ないよな?」
「居ないわよ、見る限りは」
「見えない所には居るかもしれないと?」
「そんなの分かんないわよ!」
「………ベッドの下の男って言う怪談思い出した」
「ちょっと!止めなさいよ!今から寝るんだから!」
怖いからか鈴が怒る、それを見て澪が笑う。
「ふふふ何か久しぶりだね、こうやってみんなで寝るの」
「久しぶりって人聞き悪いな、せいぜい幼稚園の時だろ?」
「えー?ちがうよ!」
「あ、わかった、小学校の林間学習のときだ」
鈴の言葉に思い出す。
「あー、そんなの有ったな」
「懐かしいね」
「うむ、確か、夜遅くまで喋っていたら、先生に怒られたな」
「そうそう、で、一番最初に寝たのが明だったよね」
「そうだったか?」
「そうよ!で、明の布団に澪が潜り込んで……」
「おい待て、何だその話は?」
「だってあんた昔から一度寝ると、なにしても起きないじゃない」
「確か、幼稚園の時もたまに澪が隣で寝てたよね」
全く記憶にない。
「明は起きるのが一番遅かったからな」
「やりたい放題だったからつい……」
ついじゃねぇよ!許容できないよ。
こうしてつかの間の平和は過ぎていった。
「ちょっと待て、デスに聞いたのか?」
「はい」
「………まぁ、前勇者だし、知ってるか?」
「いえ、魔王の思念体に直接聞いたそうです」
「………どうやったらそんな事が出来るんだ?」
「そ、そこまでは……」
もはや、頭痛を感じる。
「まぁ、いいか、で?方法は聖魔剣か?」
「はい、魔王の話に寄れば……」
まとめると、魔王を倒せるのは真に聖魔剣を使える〈勇者〉のみとの事、何でも千年前にまだ肉体を持っていた魔王を倒したのが、聖魔剣の勇者だったとか。
「そして、思念を消す事が出来るのも、聖魔剣の勇者のみとの事です」
「………それは、不味いな」
「どうしてよ?あんたがその魔王を切ればいいんでしょ?」
「ううん鈴、そうはいかないよ」
「うん、何故なら明は……」
「明は勇者ではない」
「………」
そう、唯一使える俺は勇者ではない。
「恐らく、聖魔剣使いに付属する勇者の称号は、何らかの形で消滅、もしくは魔王が所持していると考えて良いだろう、だから余裕こいてペラペラ喋ったんじゃないか?」
「うーん、何かないの他の方法は!明、いつもの不思議な力でどうにかしなさいよ!」
「だ、そうだ不思議な力のナビさん?」
〈………申し訳ありませんマスター、今回はお役に立てそうにありません〉
ナビさんが申し訳なさそうに頭を下げる。
「だってさ」
肩をすくめながら鈴に言う。
「じゃあどうするのよ!?」
鈴が喚くが答えは出ない、その後しばらく話し合い、意見は出るがどれも確信はなく、意見は纏まらなかった。
「皆様、そろそろ休憩にしませんか?今夜は戦後の宴を開きますので」
リュエさんが休む事を進める、気づけばいつの間にか日は暮れて夜になっていた。
「………そうだな、今日の所は休もう」
会議は中断しひとまず宴に参加したが、当然と言えば当然なんだが、司達はあまり盛り上がっていない。
「はぁ、寝るか………」
俺も問題が問題だけに盛り上がれるはずもなく早めに寝る事にした。
「……工藤様、少しよろしいでしょうか?」
そこにやって来たのはミレナ女王だった。
「何だ?」
「………以前次はないと言われて置きながら、今回の始末、工藤様には私を断罪する権利があります」
「…………」
あー、そんな事言ったな。
「………しかし、どうかもう少しだけお待ち頂けませんか?」
「………そうだな償いたいなら、司達を元の世界に帰すのを罰にしようか?」
「ありがとうございます」
罰を与えて礼を言われる、奇妙な光景だ。
その後は軽くミレナ女王と雑談をして、用意されたテントに行く。
が、その途中。
「今度はあんたかリュエさん」
「はい、わたくしも工藤さんにお話がありまして」
「ちょうど良い、俺もリュエさんに話があったんだ、あんたデスを知ってるな?それもかなり親しいんじゃないか?」
俺の質問にリュエさんは微笑む
「ふふふ、あの子の話通り、頭が良いのですね」
あの子とはやはり。
「デスに最近会ったのか?」
「はい、日野を連れてきたのは他でもないあの子ですから、帰って来たらお仕置きですね」
若干背筋が寒くなったが、話を続けよう。
「なら、やっぱりデスの言っていた師匠って言うのは?」
「はい、わたくしでございます、あの子には旅の中で色々な事を教えました」
懐かしそうに微笑むリュエさん。
「………グラン国王が言ったことは?」
「真実です」
「そうか、………仮に魔王を倒したらデスはどうなる?」
「………恐らく共に消えるのでしょう」
「………いいのか?」
「それが、あの子の望みですから」
それだけ言って立ち去るリュエさん。はぁ、寝るか。
テントに入ると、もう既に人が居た。
「入るテントを間違えたか?ここは俺のテントのはずだが?」
「いや、会ってるよ」
答えたのは司だが、居るのは司だけじゃない、澪、鈴、敦も居る。
「何だ?話なら明日にしてもらいたいんだが?」
「いや、そうじゃないんだ」
「みんな不安なんだよ、これからの事が」
「あんたみたいに、変な力ないし」
「うむ……」
そうゆう事ね、まぁ、無理もないか。
「クロエ」
「はっ、ここに」
出てきたのは何故か簡易ベッドの下……。
「全員分の布団を用意してくれ」
「畏まりました」
そしてベッドの下に戻る……。
「……今、ベッドの下に」
「鈴、ツッコんだら負けだ」
何をもって勝ちとするのやら。
「……そっか、下は盲点だった、ずっと上ばかり見てたから………」
「そこ感心するな」
澪に呆れつつクロエが布団を用意するのを待つ。
「所で司」
「なんだい?」
「お前、ベッド使うか?」
「………遠慮しておくよ」
司が爽やかに微笑みながら答える。
「いやいや、ほら、俺布団の方が寝付きが良いから」
「ははは、元々明のテントじゃないか、明がベッドを使うべきだよ」
中々譲ろうとしない司。
「お待たせしました」
そんなやり取りをしていると、クロエ達が布団を持って戻ってきた。
「ありがとうございます、クロエさん」
さりげなく司が布団を受け取りに動く、ちっ、先を越されたか、いつの間にか澪達も布団を受け取っていた、どう足掻いてもあのベッドに寝るしかないようだ。
「はぁ、今日は寝れない気がする……」
「馬鹿言ってないで、あんたも寝る支度しなさいよ!」
「へいへい」
鈴に促され渋々ベッドに入る。
「明かり消すよー」
「おー」
寝る準備が出来ると澪がカンデラを消す。
「………なぁ、ベッドの下誰も居ないよな?」
「居ないわよ、見る限りは」
「見えない所には居るかもしれないと?」
「そんなの分かんないわよ!」
「………ベッドの下の男って言う怪談思い出した」
「ちょっと!止めなさいよ!今から寝るんだから!」
怖いからか鈴が怒る、それを見て澪が笑う。
「ふふふ何か久しぶりだね、こうやってみんなで寝るの」
「久しぶりって人聞き悪いな、せいぜい幼稚園の時だろ?」
「えー?ちがうよ!」
「あ、わかった、小学校の林間学習のときだ」
鈴の言葉に思い出す。
「あー、そんなの有ったな」
「懐かしいね」
「うむ、確か、夜遅くまで喋っていたら、先生に怒られたな」
「そうそう、で、一番最初に寝たのが明だったよね」
「そうだったか?」
「そうよ!で、明の布団に澪が潜り込んで……」
「おい待て、何だその話は?」
「だってあんた昔から一度寝ると、なにしても起きないじゃない」
「確か、幼稚園の時もたまに澪が隣で寝てたよね」
全く記憶にない。
「明は起きるのが一番遅かったからな」
「やりたい放題だったからつい……」
ついじゃねぇよ!許容できないよ。
こうしてつかの間の平和は過ぎていった。
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