勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第6章エルフの森

11.銘

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「空前絶後の!超絶怒濤の美少女サキュバス!」

突然の登場に驚いていると、聞こえなかったと思ったのか、二度目の自己紹介を始めた。

「って、ちょっと待て!それ以上は待て!」

ジャスティス!のポーズで止まるリミア。

「聞こえてたなら、返事してくださいよ~」

「あ、うん、それは悪かった、ただ衝撃的過ぎてな」

「それは仕方ないですね、何て言ったって、超絶美少女が出てきたのですから」

うん、そうゆう意味じゃないんだけどな。

「えっと、超絶美少女のリミアさん?は何か知っているのか?」

「あ、リミアでいいですよ、特別にさんは付けないでいいです」

「あ、うん、ありがとう」

「いえいえ、で、ですね、何を隠そう、リミアは聖魔剣を目覚めさせる方法を知っているのです!」

どやぁ!と後ろに文字が出てきそうなほど、胸を張るリミア、後ろで澪の歯軋りの音が聞こえたのは気のせいだろう。

「知っているなら教えて欲しい」

「構わないですよ、それがリミアの使命ですから」

リミアが近づきニヤリと笑みを見せる。

「でも、ただ教える訳にはいかないですね」

「………どうゆう事だ?」

「ふっふっふ、教えて欲しいなら、報酬をいただくのです、サキュバス的な」

サキュバス的な?いや、でも確か。

「お前したことないんだろ?」

言った瞬間、にやけ顔が赤くなる。

「な、な、な!」

「あ、何でか?デスから聞いた」

「…………」

目に見えてテンションの下がるリミア、以前にデスから聞いていたが、このリミアは見た目はギャルだが中身は初である。

「やれやれ、だから個人の情報は話すべきじゃないと言ったのに」

「話したデスくんもだけど、わざわざ言ったあんたにも問題あるわよ?」

鈴からツッコミを受ける。

「まぁ、なんだ、元気出せ」

「うぅ、お嫁に行けなくなった」

「サキュバスって結婚するの?まぁ、それは置いといて、聖魔剣について教えてくれ」

「くっ、ただで教える訳には!」

「いや、ただでじゃないだろ?生き倒れてる所助けたんだから」

「うん、それはすごく感謝してるよ!」

「だ・か・ら、その恩を返せよ?」

「え~?でも、それはリミアが頼んだわけじゃあ……」

「よし、わかった、ナビさん!」

〈はい、こちらに〉

ナビさんが取り出したのは、かご一杯の草やキノコ。

「えっと、これは?」

「森で取れた毒草、毒キノコ各種だ」

だらだらと汗を流し始めるリミア。

「治療したのが恩にならないならしかたない、食え」

「い、いえ、あの」

「まぁ、俺達もそこまで鬼じゃない、ミーア!」

「はい、こちらに」

ミーアが持って来たのは皿に盛られたいい匂いのする料理。

「わぁ、美味しそうです」

「………どちらかを食え」

「じゃあお皿の方を……」

「ちなみに皿に盛られた方は、毒草、毒キノコのバター焼き、もちろん毒抜きはしていない」

「………」

毒オア毒、さぁ、どっち?

「悪魔じゃないですか!?わかりましたぁ、教えます、教えますからぁ、毒はいやぁ」

ふむ、毒に若干のトラウマが芽生えたようだな。

「仕方ない……」

許してもらえると思い、ホッとした笑みを見せるリミア。

「………俺が直々に食べさせてやろう」

「えぇ!?今の許す流れじゃん!?それに食べさせるのが、どう仕方ないに繋がるのかわからないんだけど!」

「何を言っている、俺が食べさせるなら例え毒でも喜ぶものだぞ?なぁ、澪」

「はい!喜んで!」

うん、活気のいい居酒屋店員みたいないい返事だ。

「喜ぶのその子だけだよね!?」

「いや、少なくともあと七人は喜ぶ」

「えぇ~」

リミアがドン引きする、うん、気持ちはわからなくはない。

「聖魔剣使い様、そろそろよろしいですか?あまり悠長には……」

リュエさんがいい加減にしろと止めに入ってくる、もう少し遊びたかったが、まぁ、仕方ない、忘れてはいないがわりと緊急時だからな、バーサーカーがいつまで持つかわからないし。

「というわけだ、サクッと教えろリミア」

「うぅ、はいぃ」


リミアの登場で一悶着あったが、気を取り直して、聖魔剣について話を聞く。

「ゴホン、では、改めましてリミアが聖魔剣について教えましょう」

「その前に質問、お前は魔王なんだよな?俺達に協力していいのか?」

一応敵対関係な訳だし、念のため確認する。

「それを言うなら、ミーアさんもそうだよね」

「あー、でも、ミーアって」

澪に指摘されミーアを見るが。

「身命をとして命を捧げます!」

これだからな、あと身命をとしてと命を捧げますは意味が被ると思うんだけど。

「それなら大丈夫です、聖魔剣が出来たからといってリミア達が死ぬ訳ではないので」

「まぁ、ならいいか」

色々聞きたいことはあるが、リミアではそんな期待はできなさそうなので放置だな。

「で、結局これから何をするんだ?」

「今の聖魔剣には力がありません、その力を取り戻すために"銘"が必要なんです」

「銘?確か刀とかに彫られてるあれだよな?」

「うむ、しかし銘とは本来製作者の名などを彫るもののはずだが?」

「こちらの世界では剣に名を付ける時に用いるのです!」

ふむ、名は体をなす的な感じか?

「じゃあ彫ればいいんだな?」

「いえ、ただ彫るだけじゃダメです、聖魔剣と意識的に繋がり、その本質的な銘を読み説かなければなりません」

「………」

「どうしました?」

「いや、まさか、リミアからそんな小難しい話が出てくるとは」

おバカとばかり思っていたが、案外難しい話をする、現に鈴は話についていけないらしく真剣な顔で止まっている。

「ふふん!何て言ったって超絶美少女サキュバスですから」

うん、やっぱりバカだ。

「で?意識的に繋がりって、どうするんだ?」

「それはリミアちゃんにお任せなのです!」

そう言って、リミアは魔方陣を書き始めた。

「この魔方陣を囲むように皆さん並んで下さい」

言われた通り並ぶ、魔方陣の中心には聖魔剣が置いてある。

「今から、聖魔剣使い、えっと」

「工藤 明だ」

そう言えば名乗って無かった。

「明君ですね、明君の意思を聖魔剣に送ります、明君は聖魔剣に銘を聞いてきてください」

「ふむ、直接聞き出すのか」

分かりやすくていい。

「じゃあ、私達は?」

「皆さんは明君の帰って来るための目印です、この儀式は皆さんの絆が成功のカギになります」

「………絆、では、わたくしは加わらない方が良いのでは?」

リュエさんが小さく手を上げる、確かにリュエさんとはついさっき会ったばかりだしな。

「うーん、そうですね、なるべく雑音は無い方がいいと思います」

雑音って。

「あ、あの!大丈夫なんだよね?」

澪がリミアに聞く、何が?とは言うまでもないだろう。

「何がですか?」

おい、リミア!聞くまでもないって言っただろ!

「その、安全何ですよね?」

「うーん、完全に安全とは言えないです、場合によっては意識が聖魔剣の中に閉じ込められて、帰って来れないかもしれません」

「そ、そんな!」

「大丈夫だよ」

澪の頭を撫でながら、周りを見渡す。

「根拠なんて無い、でも、なんとなく大丈夫だと思う」

「根拠は無いって、そこはみんなが居るからって言うところでしょ?」

鈴は呆れながらため息をつく。

「明らしいと言えばらしいけどね」

司が苦笑いする。

「うむ、悩んでも変わらないなら、前に進むに限る」

敦は腕を組み頷く。

「工藤様なら出来ると、信じています」

エレナ姫が微笑む。

「明様ならきっと……」

ミーアが手を組む。

〈マスター、帰りをお待ちしています〉

ナビさんがお辞儀をする。

「……明くん」

澪が心配そうに見上げてくる。

「平気さ、帰りを待ってくれてる人が居るなら、人は強くなれるらしいからな」

うん、どっかのアニメで言ってた。

「リミア、始めてくれ」

「わかりました」

リミアが呪文を唱えると魔方陣が光始める、さて、何が待っているかな?

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