勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第6章エルフの森

8.道案内

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「エルフの森ですか?」

魚を必要数取り終わり、人魚の族長にエルフの森について訪ねてみる。

「ああ、とある事情でエルフに会いに来たんだ」

「そうなんですか、エルフの森はこの近くに間違いなくありますよ」

「そうか………」

と、するとやっぱりあの拾い食いの奴が道案内で間違い無さそうだな。

「よろしければ、ご案内しましょうか?」

ここでまさかの提案がきた。

「できるのか!?」

「ええ、エルフとは魚と森の恵みを交換し合う仲ですから」

「え?人魚って果物とか食べるの?」

人魚って海藻とかしか食べないイメージなんだけど。

「果物だけじゃなく、野菜も食べますよ?じゃないと栄養失調になりますから」

まさか人魚から栄養失調って言葉を聞くとは思わなかった。

「あの、なぜそんなに微妙な顔をしているのです?」

「いや、人魚に会ってからイメージを壊されてばかりでな」

「人魚に夢を持ちすぎでは?」

ごもっともです。


「それで、案内してくれるのはありがたいが、どうやって?」

「少々お待ちください、よいしょ!」

人魚の族長は岸に上がると尾を地面に着けて体育座りの体勢になる、まさか尾で歩けるのか?

「うーん、みょんみょんみょんー、変化!」

何やらうねり、呪文を唱えると人魚の尾が人間の脚に変わる。

「お待たせしました」

「………マジか」

「どうかしましたか?」

「ああしたな、その脚は?」

脚はまごうことなき人間の脚になり、パレオの様なものを身に付けている。

「陸に上がるときのために、人魚はみんな変化の術を覚えるんですよ」

「副作用とかは?」

「いえ、特には」

「変化を解いたら泡になったりは?」

「しません、何ですかその怖い呪いは?」

人魚の族長が若干引く、また一つ人魚に対してのロマンが崩れる。

「現実はお伽噺みたいに夢はないな、まぁ、何はともあれ案内してくれるんだ文句は言うまい」

「明くん、そう言えばいいの?デス君が用意してくれた人は」

確かにデスがわざわざ用意してくれたのだが……。

「澪、考えてもみろ、拾い食いをして食中毒になる奴と、しっかりしてそうな人魚の族長、どっちに案内を頼むべきか」

「族長ね」

「族長さんだね」

「族長かな?」

「うむ、族長に願うべきだ」

はい、満場一致で族長一択です、因みにナビさんとミーアは俺に従います。

「という訳で改めて頼む」

「はい、改めて人魚の族長ミリテです、お見知りおきを」


その後族長改めミリテさんを連れて馬車に戻る、エレナ姫と話し合い、先にエルフの森へ行く事に。

「では、ミリテ様にエルフの森へ案内を頼んだと?」

「ああ、その方が早そうだし、安全そうだからな」

「わかりました直ぐに出発の準備をします」

「頼んだ」

エレナ姫とクロエ達に準備を任せ、その間にエルフの森への行き方を聞く事に。

「エルフの森へは正しい道順を踏まないと辿り着けません、一度間違うと入り口に戻されてしまう結界が森に掛けられているのです」

「じゃあその道順を覚えるのか?」

「日によって違うので難しいかと」

「根気よくやれば行けそうだけどな……」

「道を覚えても通行結晶が無いと結界は抜けられませんから」

そう言って見せてくれたのは勾玉が付いたペンダントだった。
 
「きれいね」

「鈴、そこじゃないだろ?何で勾玉?」

「これはエルフの工芸品です、確かナガタマと言われる物です」

「マガタマ?」

「いえ、ナガタマです」

何だろう、微妙な日本人臭がするぞ?

「まぁいい、で、これはどうやって使うんだ?」

「魔力を込めると正しい道を教えてくれるのです」

言われた通り魔力を込める、すると道が光って見えた。

「ほう、なるほどこれを辿るわけか」

「なに、なに?どれの事?」

どうやら勾玉を持っている人しか見えないようだ。

その後順番に鈴達が試してみるが、誰でも使えるらしい。

「例外のドワーフは使えないようになっています」

「それまた何で?」

「………仲がよろしくないので」

あー、そこら辺は元の世界知識と同じなのな。

「明様、準備ができました」

「わかった、じゃあミリテさんは俺達と先頭の馬車に乗ってくれ」

「はい、よろしくお願いします」

「クロエ、ミリテさんの言う通りに馬車を進めてくれ」

「畏まりました」

こうして、やっとエルフの森へ入る事ができた。



「………次の道を左です」

「………また左か、何かおかしくないか?」

最初は蛇行していた道はやがて左ばかりになった。

「そもそも、エルフの森ってこんなに遠いのか?」

「かれこれ一時間は経つね」

司達も変に思ったみたいだな。

「かなり迂回させられてるな」

「それって近付けないようにしてるって事?」

可能性はあるが、理由が見つからない。

「………ひょっとしたら逆なのかもしれません」

「ミリテさん、逆とは?」

司がミリテに訪ねる。

「結界は入る事を制限すると同時に出ないようにする事も担っています」

「つまり、エルフの森側で何かがあった?」

「入り口に戻されて要るわけではないので恐らくその可能性が高いかと」

はぁ、エルフの森で剣を受け取って終わりとはならなさそうだな。

それから馬車を走らせようやくエルフの住まう森にたどり着くと。

「ようこそいらしっしゃいました、お待ちしていましたよ、聖・魔剣使い様」

俺達を待っていたのは、エルフの族長による歓迎だった。
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