勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第6章エルフの森

6.湖に……

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さて、暇潰しに食料を集める事になったのだが。

「で?どうやって集めるの明」

「うーん、そうだなぁ」

地面をガサゴソ。

「お!キノコゲット!」

「いやいやいや、それさっきの毒キノコ!」

「うーん、じゃあ……」

再び地面をガサゴソ。

「おお!食べれそうな草ゲット!」

「………明くん」

「明、多分それは食べれないよ」

澪と司が呆れている。

「えー?そうか?島らっきょうみたいで食べれそうだけど」

「いや、それ紫の花咲いてるし、しかも黄色の斑点ついて」

うーん、食べれないか?判断ができないな。

〈こちらは薬味根ですね、食用です〉

「ナビさん解るの?」

〈はい、野草、キノコ、肉から魚介類まで全て記憶しました〉

さすがナビさん頼りになる。

「よし、どんどん取ってナビさんに見て貰おう!」

と、息巻いていたんだが………。


一時間後………。

「食用なくね?」

「ほとんど毒草、毒茸ばかりだね」

〈もともと、この近辺は毒森と言われ有名です、食料調達は無謀かと〉

「………もっと早く言ってよ」

〈気づきませんでした〉

たまに思うけどナビさんわざとじゃない?

「うーん、どうする明?」

「このまま続けても毒草ばかりだしなぁ」

〈マスター、この先に湖があります〉

ナビさんから報告を受けるが……。

「まさかとは思うけど、毒のある魚ばかりじゃあないよな?」

〈いえ、食用が多く生息しています、何より大物がいます〉

「なら、釣りに行こうか」

草刈りから釣りにシフトして湖を目指す。

〈………私はあれを食用と判断しています〉

うん、今、ナビさんが意味深な事を言ったのは気のせいかな?


森の中をしばらく歩き、開けた場所に出ると大きな湖があった。

「おー、広~い!」

「確かに大きな湖だな」

「お魚たくさんいるかな?」

パシャ、パシャ!

結構な大きさの湖に驚いていると、少し離れた所から水音が聞こえた。

「人?」

「ーー♪」

人が居りそちらに近づこうとしたら歌が聞こえ始めた、すると澪達に異変が起きる。

「あ、明くん……」

澪の方を振り返ると、澪が倒れ込んできた、慌てて抱き止める。

「どうした澪」

「わ、わかんない、急に眠く……」

見れば司や鈴、敦も同じようにへたり込んでいた。

〈マスター、精神干渉系の魔法が使用されているものと思われます〉

「精神干渉?何処から?」

「明様、あの者からです」

ミーアが指差す方には先ほどの人がいる、つまりあの歌が精神干渉か?

〈ここは我々にお任せください〉

「頼んだ」

止めるのはナビさんとミーアに任せ、俺は澪達を休ませる。

直ぐにナビさん達は件の人物に近づき、網を投げた………、いや、何で網!?

「きゃああー!」

女性の悲鳴が聞こえる、どうやら網を投げられたのは女の子だった様で、ずるずる引き摺られながらこちらに来る。

「ナビさん、何してんの?」

〈捕獲しました〉

「止めてとは言ったけど捕獲しろとは……」

そこで女の子の全体、具体的には下半身を見て言葉が止まる、この子もしかして。

「ナビさん?気のせいかな?その子下半分魚っぽいんだけど?」

〈はい、まごうことなき魚です〉

「それってもしかしなくても、人魚ってやつじゃないかな?」

〈はい、まごうことなき人魚です〉

おう、人魚ですか、そうですか、人魚って普通海にいませんかね!?

「うぅ、離してください!助けてー!」

おっと、衝撃のあまり忘れていた。

「ナビさん、離してあげて」

〈畏まりました〉

お願いすると、直ぐにナビさんは網を解いてくれた。

「ふぅ、助かりました、ありがとうございます、人間さん」

「いや、こちらこそすまない、仲間が歌にやられたようでね」

澪達を指差す、歌が止んだからかもう既に回復している、まだふらふらするみたいだが大丈夫だろう。

「え?あ!ごめんなさい!まさか近くに人間さんが居るとは思ってなくて………」

「いやいや、特に被害があった訳じゃないから平気だ」

幸い怪我人も居ないしな。

「所で、君はどうしてここに?」

「わたしはここに棲んでるです!」

「………人魚だよね?」

「はいです!」

返事をするとしっぽ(?)を大きくぺちんっと上げる。

「淡水に居て平気なのか?」

「たんすい?ですか?」

知らないようなので淡水と海水の違いを教えてみる。

「ふぇ~、そんな考えがあるんですね、知らなかったです、確かに海のお水の方がちょっと塩気がある気がしますです」

ちょっとなんだ?あれか、人間で言う普通のご飯と塩をふったご飯の違いみたいな感覚か?

「人魚はどちらでも大丈夫なのか?」

「はい!お水が有ればどこでも大丈夫なのです」

「うーん、何て言うか」

「人魚のイメージが崩れるわね」

「そうだね」

澪や鈴も同じ思いらしく、苦笑いをしている。

「所で、人間さん達は何をしているのです?」

「ん?ああ、食料の調達に魚釣りをな……」

そう言えば、人魚と魚って友達だったりするんじゃないか?そしたらここで魚釣りって不味いのでは?

「そうなんですか!ここのお魚さんはとても美味しいので自慢ですよ!」

「………なぁ、一つ聞いていいか?」

「はい!何でしょう?」

「………魚って友達だったりしないのか?」

「人間さん?変な事を聞くですね?」

心の底から不思議そうに人魚は首を傾げる。

「人間さん、逆に聞きますけど、人間さんはお野菜さんとお友達ですか?」

「……いや、違うな」

「同じように、人魚と魚はお友達ではないのです」

人魚にとって魚は作物と同じ扱いらしい。

「なら、遠慮なく取らせて貰うか」

「どうぞなのです!ちなみにおすすめの食べ方は生け作りなのです!」

「………お願いだから、やめてくれないか?何て言うか、逆に食いづらいから」

人魚の前で魚の生け作りの話とかしたくない。

「あ、そう言えば、この泉に大物が居るって話だけど知らない?」

「大物ですか?ここにずっと棲んでますけど、見たことないです」

うーん、棲んでる人(?)が知らないならもう居ないのでは?

「ナビさん、その大物ってどこら辺に居るの?」

〈マスターの目の前に居ます〉

ん?前を見ても、先ほどから話している人魚しかいないぞ?

「ナビさん?居ないけど?」

〈目の前に居ます、大きな魚が〉

「ナビさん?それってまさか、半分だけ、具体的には下半身だけ魚だったりしないよね?」

〈大物です〉

「人魚食えるか!?」

「ふ、ふえぇぇ!?わたし食べられるです!?」

俺達の会話を聞いていた人魚が涙目で慌てふためく、まさかナビさんの言う大物が人魚だったとは。

〈私は食べられると判断します〉

「いや、ナビさんはそうかも知れないけど、俺達は無理だから」

「え?」

声のした方を見るとミーアが再び人魚に網をかけようとしていた所だった。

「ミーアさん?何しているのかな?」

「いえ、生け捕りにして活け作りにしようかと……」

「人魚の生け作りとか絶対やっちゃダメだからね!?生々し過ぎて食えないからね!?」

「ふえぇぇ!わたし生け作りにされちゃうんですか!?」

〈血抜きは必要でしょうか?〉

ああ、全然場が納まらない、そもそもついてくるのが常識を知らない二人って言うのに悪意を感じるぞ?さてはクロエ、体よく押し付けたな?

「ナティア!」

場のカオス度合いが際限なく上がっていく中で湖の方から突然叫び声と共に、水の玉が投げ付けられる。

「貴方達、ナティアから離れなさい!」

あー、そりゃ、一人で棲んでるとは言って無いわな、人魚二人目登場である。
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