勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

文字の大きさ
上 下
27 / 84
第3章ガレオン帝国奪還編

1.狂信者ってこうやって出来るんだ

しおりを挟む
ガレオン帝国との国境まで、馬車で三日間の道中、無駄に豪華な馬車に揺られる。

「ねぇねぇ、やっぱり何かおかしくない?」

「うん、王族のエレナちゃんを差し置いて、私達の馬車がこんななのは、変だよ」

「それに、気になるのは、エレナ姫達の疲れきった顔だね」

「あぁ、それにそれだけじゃない、クロエさんの、明を見る目が異常だった」

と、全員の意見が出そろった所で、俺を見てくる。 
いや、俺も知らんよ?

「とりあえず、様子を見るしかないだろ?あと、休憩の時にでもエレナ姫に聞こう」

その後、馬車は進み休憩の地点に到着、直ぐにエレナ姫とアリシア団長を呼び出す。

「さて、一帯どういうことか、説明してもらおうか?」

「ハイ、実は……」

エレナ姫の話をまとめると昨日夜に突然、クロエが王城勤めをやめると言い出した、もちろんミレナ女王やエレナ姫が止めたが、決意は固く覆す事はできなかった。

「その時に退職理由を聞いたら、信仰に生きたいと言っていたので、てっきり教会でシスターになるのだと思っていたのですが……」

「今朝、馬車を持って城門の前に居り、工藤様御一行は、自分の馬車に乗せますと言って聞かないのです」

「ちょっと待って、あの馬車ってクロエさんの私物なの?」

「ハイ、元々クロエは私欲のためにお金を使わなかったので、給料もほとんど手付かずだったようです」

「なら、信仰って言うのは?」

「クロエは、ダークエルフと言う種族でして神に対して信仰心が篤く、それに加え、クロエは職業柄多くの死に立ち合っていたので……」

「信仰に生きると言っても、何ら不思議ではなかったと」

ここまで聞いて、俺の脳裏に一つの答えが出てきたが、認めたくない!

司達も同じ答えに辿り着いたのか、微妙な顔で俺を見てくる。

「ねえ、これって、まさか……」

「待て鈴!まだ、結論を出すのは早い!」

「いや、どう考えても…」

「とにかく、もう休憩も終わりだろう、結論は夜に出そうじゃないか」

そうだ、そんなことはない、そう自分に言い聞かせ、馬車に戻るが現実は残酷だった……

夜、夜営の準備をしたあと、夕食を摂るときクロエが作ってくれたのだが……

「どうぞ、明様御召し上がりください」

「あぁ、ありがとう、だが何故膝間付き、供物を捧げる見たいにしているんだ?」

「お気に為さらず、習慣みたいなものです」

気になるは!とは怖くて言えない、そして、司達には普通に配るのな?
そのあと食べようとしたら、後ろに食事を配り終えたクロエが立つ。

「何をしているんだ?クロエ」

「ハイ、明様に何かあった際、直ぐに対応できるようにそばに控えております、ご安心下さい」

安心できねぇ!むしろ気になるは!
そこで、とうとう、鈴がクロエに確信をつく。

「ね、ねえ、クロエさん、えっと、あの、明の事を、慕ってるの?」

なるべく、言葉を選んで聞いてみたものの、変な風になってしまった鈴の質問に対しクロエは……

「ハイ、心身を捧げる所存です」

実にストレートに答えた!

「それは、明くんが好きって事?」

こういう事には、いつもどろどろした目になる澪も今回は毛色が違うため、通常道理だ。

「いいえ、崇め奉っています!」

力強く、信仰していることを認めたクロエ。これはもうダメだ…

「えっと、なぜ、明を?」

「ハイ、わたくしは蟲人の村で助けられた時、神の光を見ました、命を救われ、鼓動が高鳴り、私はこの方こそ神の使わした使徒なのだと、確信しました!」

熱く語るクロエに、全員がドン引きである。そしてこれは、ひょっとして……

「吊り橋効果じゃない?」

「鈴さん、吊り橋効果って?」

「エレナちゃん、吊り橋効果ってね、危ない状況でのドキドキをその人の事が好きなドキドキと、勘違いしちゃう事を言うの、今回もそれに当てはまると思うな」

「な、なるほど」

女子三人の会話を聞きつつ、クロエの様子を見る、完全に陶酔仕切った顔だ。

あぁ、狂信者ってこうやって出来るんだ…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...