勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

文字の大きさ
8 / 84
第1章 ベアトリス王国編

7.聖剣の力

しおりを挟む

日野達が魔物と接触して直ぐ、俺はアリシアの用意してくれた馬車で街を出る。

「お姫様まで、着いてくることなかったんじゃない?」

「いいえ、工藤様にお願いしたのは、私です、最後まで見届ける義務があります」

義務ね…随分真面目なことで、これなら討伐が終わった後の約束についても大丈夫そうだな。
しばらく馬車を進めると、魔物の波が見えてきた。

「そんな……あんなに魔物が……」

「かなりまずい状況みたいだな」

魔物の波が今にも決壊しそうになっている、その中に澪や鈴、敦の姿も確認できる。

「僕が魔法で、穴を開ける、その隙に明は澪達のところへ!」

「判った、頼んだぞ司!」

「今度こそ、任せてよ!」

俺と司は、ハイタッチをして、お互いの成功を約束する。パァンと心地いい音を聞いた後、俺は魔物と勇者の間に走り出す。

ナビさんもサポートよろしく。

〈お任せ下さい、マイ・マスター〉

その後、直ぐに司から光魔法が放たれる、光は一筋のレーザーの如く、魔物を焼き払っていく。

「何あれ、カッコいい~今度教えて貰おう!」

場違いな感想を抱きつつ、魔法が収まりつつあるのを確認し、俺は脚に力を込め一気に加速する。
跳躍し、降り立ったのは、勇者と魔物の間にできた空白地帯。澪達の無事を横目で確認し、静かに右手を掲げる。

「来い!聖剣・エクスカリバー!!」

ナビさんのサポートの下、聖剣を召喚する。出てきたのは、光輝く金色の刀身を持つ剣、エクスカリバー。

「切り裂け、エクスカリバー!!」

エクスカリバーを両手で持ち振り抜く、振り抜いた刀身から光が放たれる。
その光は、先ほどの司の魔法よりも、遥かに大きく、眩く、輝き、正しく絶望の闇を切り裂く希望の光であった。

エクスカリバーを横に振るい刀身に残った光を払う、光が収まると、魔物の大群は全て跡形もなく消え去っていた。

「ふぅ……ぶっつけ本番だったけど、何とかなったな」

「明~!」

澪が抱き付いてくるのを、反射的に避ける。

「……何で、避けるの?」

「いや、つい、条件反射で」

また澪の目がどろどろとしたものになり、両腕を大きく広げて迫って来るのを、後退りして距離をとる。
澪の後ろから鈴達が、苦笑いしながら来る。
いつも通りのやり取りをしてる中、日野が割り込んでくる。

「貴様、何だ、それは?」

「何って、聖剣だけど?」

「お前が、聖剣だと?ふざけるな、この無能が!」

「なら、俺に鑑定を掛けてみろよ」

現在俺は隠匿を使用していない、これで現実が解るだろう。

「そんな…嘘だ、ありえない…ありえない!!」

日野が叫びながら、剣を振りかぶり迫って来る、とっさに聖剣を構えて応戦しようとした所で、それは水の壁によって阻まれる。
今いるこの中で、水の魔法が使えるのは澪だけだ、澪の方を見るが、首をフルフルと振っている。じゃあ、いったい誰が?

「そこまでにしていただきます、勇者様方」

大きくはないが、よく通る声が聞こえる。
そちらを見ると、一人の女性が立っていた、後ろにエレナ姫が控えているのを見ると、この国の女王だろうか?

「今は、皆様お疲れでしょう、お話は城に帰ってからでどうでしょうか?」

「俺は、それで構わないぞ」

「ふん……」

日野が忌々しげに、睨みながら馬車に歩いていく。
俺も澪達と別の馬車に行こうとした時、エレナ姫に止められる。

「皆様はこちらにどうぞ」

そう言って、案内されたのは、あからさまに豪華な、王族専用の馬車である。
澪達を見ると、本当にこれに乗るの?という顔をしている。

「さぁ、どうぞ乗ってください?」

断れる筈もなく、仕方なく乗る、馬車に揺られ王城に戻る。


王城に着くと、直ぐに謁見の間に案内される、そこには、既に玉座にふんぞり返る国王の姿があった。

「よくぞ帰って来た、我らが勇者よ!
しかし、勇者以外が居るな、その者をここから摘まみ出せ!」

「そんな事は、私が許しませんよ!」

国王が、俺を摘まみ出せと声を上げるも、女王にその声を封じられ、魔法で作った水をぶっかけられる。

「な、何をする、我が愛しの妻ミレナよ!」

「あなたこそ、何を考えているのですか?この街を、いいえ、この国を救った英雄に対して」

「この街を救ったのは勇者ではないのか!?」

「ええ、勇者ではありません、それと、そこから退きなさい」

驚きの事実を伝えられ、信じられない様子の国王、そして国王を玉座から退かせる
女王。
そろそろこの国の本当の名前と支配者を告げておこう。
この国の名前は、ベアトリス女王国、勿論支配者は、ミレナ・リイ・ベアトリス女王である。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...