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こんなことになるなら
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今度は先生の手をギュッと握ってみる。
そんな俺の手に、先生の手が反応するかのように、ギュッと握り返してきた。
え…?
起きてるのかと思ってドキッとした。
そんな時、病室のドアが開いたから、急いで先生から手を離した。
入ってきたのは家政婦の今井さんだった。
「あら」
今井さんが、寝ている先生を見て驚いたから、
「担任だよ」
そう言うと納得したように頷いた。
「先生、起きて下さい」
そう言っても先生は起きなくて。
「先生」
体を揺らすと先生はゆっくりと顔を上げた。
「こんな時間までわざわざありがとうございます」
今井さんは先生に挨拶をしている。
「あれ、あ、すみません…。えっと…」
先生は寝ぼけながら辺りをきょろきょろと見渡している。
やっぱり寝てたんだよな?
さっき手を握り返してきたのは、条件反射的に動いただけなのかな。
「では、あとはお願いします」
今井さんと交代して、先生は病室を出て行った。
1人で大丈夫かな。
病室を出ていく先生の後ろ姿を見ると心配になってくる。
夜道は危ないから送って行きたいのに。
送って行けない現状が悔しかった。
「可愛らしい先生ですね」
今井さんは、先生が去った後も、病室のドアを眺めていた俺に向かって笑いかける。
「そうですね」
とてもそう思います。
「荷物ここに入れておきますね」
今井さんは俺の荷物を袋から出して、整理し始めた。
「すみません、出勤日じゃないのにこんなお願いしちゃって」
「なに言ってるんですか。これぐらいさせて下さい。お母様とお父様も、夕惺さんのこと心配してますよ」
いいよ、そんな事言わなくても分かってるから。
「俺のことなんて、なんとも思ってないよ」
「いつも私のところに連絡がくるんです」
「俺には来ないよ」
「もうちょっと、夕惺さんから歩み寄ってもいいんじゃないですか?」
なんだよ。
なんなんだよ。
どいつもこいつも、俺の前からいなくなるクセに。
みんな自分勝手だよ…。
翌日になって、目が覚めて。
すぐそこに先生がいてくれてるんじゃないかって、確認して。
いなくて。
溜息をつく。
検査は特に異常もなく、すぐに退院することになった。
今井さんが迎えに来てくれて、
「誰かお探しですか?」
今井さんの声で自分が先生を探していることに気づく。
「別に」
「じゃあ、行きましょうか」
そう言って車に乗り込む今井さん。
車に乗ると、先生が運転に緊張しながらも俺を家まで送ってくれたことを思い出した。
先生。
今でも、先生が好き。
俺、どうしたらいい?
どうしたら先生のこと忘れられるのかな?
ねぇ先生、教えてよ。
そんな俺の手に、先生の手が反応するかのように、ギュッと握り返してきた。
え…?
起きてるのかと思ってドキッとした。
そんな時、病室のドアが開いたから、急いで先生から手を離した。
入ってきたのは家政婦の今井さんだった。
「あら」
今井さんが、寝ている先生を見て驚いたから、
「担任だよ」
そう言うと納得したように頷いた。
「先生、起きて下さい」
そう言っても先生は起きなくて。
「先生」
体を揺らすと先生はゆっくりと顔を上げた。
「こんな時間までわざわざありがとうございます」
今井さんは先生に挨拶をしている。
「あれ、あ、すみません…。えっと…」
先生は寝ぼけながら辺りをきょろきょろと見渡している。
やっぱり寝てたんだよな?
さっき手を握り返してきたのは、条件反射的に動いただけなのかな。
「では、あとはお願いします」
今井さんと交代して、先生は病室を出て行った。
1人で大丈夫かな。
病室を出ていく先生の後ろ姿を見ると心配になってくる。
夜道は危ないから送って行きたいのに。
送って行けない現状が悔しかった。
「可愛らしい先生ですね」
今井さんは、先生が去った後も、病室のドアを眺めていた俺に向かって笑いかける。
「そうですね」
とてもそう思います。
「荷物ここに入れておきますね」
今井さんは俺の荷物を袋から出して、整理し始めた。
「すみません、出勤日じゃないのにこんなお願いしちゃって」
「なに言ってるんですか。これぐらいさせて下さい。お母様とお父様も、夕惺さんのこと心配してますよ」
いいよ、そんな事言わなくても分かってるから。
「俺のことなんて、なんとも思ってないよ」
「いつも私のところに連絡がくるんです」
「俺には来ないよ」
「もうちょっと、夕惺さんから歩み寄ってもいいんじゃないですか?」
なんだよ。
なんなんだよ。
どいつもこいつも、俺の前からいなくなるクセに。
みんな自分勝手だよ…。
翌日になって、目が覚めて。
すぐそこに先生がいてくれてるんじゃないかって、確認して。
いなくて。
溜息をつく。
検査は特に異常もなく、すぐに退院することになった。
今井さんが迎えに来てくれて、
「誰かお探しですか?」
今井さんの声で自分が先生を探していることに気づく。
「別に」
「じゃあ、行きましょうか」
そう言って車に乗り込む今井さん。
車に乗ると、先生が運転に緊張しながらも俺を家まで送ってくれたことを思い出した。
先生。
今でも、先生が好き。
俺、どうしたらいい?
どうしたら先生のこと忘れられるのかな?
ねぇ先生、教えてよ。
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