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こんなことになるなら
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先生は病室に戻って来たかと思うと、また椅子に座った。
「先生もう大丈夫ですよ。学校戻って下さい」
「家政婦さんが来るまでいるよ」
「でも…」
「私がいたいの」
ほら。
そうやって一瞬にして俺の気持ちを全部持っていく。
そんなこと言われたら何も言い返せないよ…。
もしかしたら、まだ俺にも可能性があるんじゃないかって期待してしまう。
ズルいよ先生。
「まだ顔色悪いよ。私のことは気にしなくていいから寝てて」
そう言って俺に布団をかぶせてくれる先生。
手を伸ばせばすぐ届いてしまう距離に先生がいる。
その手をギュッと握りたい。
もっと近くに先生を引き寄せたい。
俺がこんなこと考えてるなんて先生は思ってもいないだろうな。
久しぶりに先生と2人きり。
先生のアパートの前で話をしてから、まだ数日しかたっていないのに、随分と懐かしく感じた。
しばらく目をつぶっていて。
頭痛が少し和らいできて、頭がボーっとしてきた時だった。
「生きててよかった」
先生は、突然。
何の脈絡もなく、そう言って。
その声が今にも消え入りそうで、一瞬にして頭が冴えわたった。
前にもあった。
校外授業の時。
俺がサボって寝てるのを勘違いして、先生はすごく心配そうに俺のところに来た。
あの時、あまりにも必死だった先生を見て、俺は笑っちゃったけど。
今日の先生も過剰なくらい俺を心配してくれてる。
だって、ただの貧血に”生きててよかった”なんて言葉をかけるだろうか。
「先生、大げさです」
そう言うと先生は驚いた顔をした。
「起きてたんだ…」
「はい」
それ以降、お互い何も喋らなくて、静かな時間だけが過ぎていった。
俺はいつの間にか寝ていたみたいで。
次に起きた時には窓の外は真っ暗だった。
先生はもう帰っちゃったかな。
さっきよりも軽くなった体を起こすと、座りながらベッドにうつぶせになっている先生が目に入った。
俺の目の前で静かに寝ている先生。
きっと疲れてたんだろうな。
それでもまだ、ここにいてくれたことが嬉しかった。
もう外はこんなに真っ暗だよ。
先生はキレイだから、早く帰らないと夜道が心配だよ。
そう思うのに、ずっとこうして俺のそばにいてほしいと思ってしまう。
帰ってほしくないと思ってしまう。
先生が目を覚まさない隙に、俺は先生の髪の毛をそっと触った。
キレイな髪。
「莉子」
普段は絶対呼べない先生の名前。
呼んでみても全然反応しない。
「俺、まだ先生に全然気持ち伝えてないよ。
今でもずっと先生が好きで好きで、どうしようもないんだけど。
もう、どうすればいいか教えてよ。
…ねえ、俺を好きになってよ、せんせ…」
寝ている先生にそんなこと言ったってどうしようもない。
だけど、この想いはどうやったら消せるのか、全然分からないんだ。
「先生もう大丈夫ですよ。学校戻って下さい」
「家政婦さんが来るまでいるよ」
「でも…」
「私がいたいの」
ほら。
そうやって一瞬にして俺の気持ちを全部持っていく。
そんなこと言われたら何も言い返せないよ…。
もしかしたら、まだ俺にも可能性があるんじゃないかって期待してしまう。
ズルいよ先生。
「まだ顔色悪いよ。私のことは気にしなくていいから寝てて」
そう言って俺に布団をかぶせてくれる先生。
手を伸ばせばすぐ届いてしまう距離に先生がいる。
その手をギュッと握りたい。
もっと近くに先生を引き寄せたい。
俺がこんなこと考えてるなんて先生は思ってもいないだろうな。
久しぶりに先生と2人きり。
先生のアパートの前で話をしてから、まだ数日しかたっていないのに、随分と懐かしく感じた。
しばらく目をつぶっていて。
頭痛が少し和らいできて、頭がボーっとしてきた時だった。
「生きててよかった」
先生は、突然。
何の脈絡もなく、そう言って。
その声が今にも消え入りそうで、一瞬にして頭が冴えわたった。
前にもあった。
校外授業の時。
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あの時、あまりにも必死だった先生を見て、俺は笑っちゃったけど。
今日の先生も過剰なくらい俺を心配してくれてる。
だって、ただの貧血に”生きててよかった”なんて言葉をかけるだろうか。
「先生、大げさです」
そう言うと先生は驚いた顔をした。
「起きてたんだ…」
「はい」
それ以降、お互い何も喋らなくて、静かな時間だけが過ぎていった。
俺はいつの間にか寝ていたみたいで。
次に起きた時には窓の外は真っ暗だった。
先生はもう帰っちゃったかな。
さっきよりも軽くなった体を起こすと、座りながらベッドにうつぶせになっている先生が目に入った。
俺の目の前で静かに寝ている先生。
きっと疲れてたんだろうな。
それでもまだ、ここにいてくれたことが嬉しかった。
もう外はこんなに真っ暗だよ。
先生はキレイだから、早く帰らないと夜道が心配だよ。
そう思うのに、ずっとこうして俺のそばにいてほしいと思ってしまう。
帰ってほしくないと思ってしまう。
先生が目を覚まさない隙に、俺は先生の髪の毛をそっと触った。
キレイな髪。
「莉子」
普段は絶対呼べない先生の名前。
呼んでみても全然反応しない。
「俺、まだ先生に全然気持ち伝えてないよ。
今でもずっと先生が好きで好きで、どうしようもないんだけど。
もう、どうすればいいか教えてよ。
…ねえ、俺を好きになってよ、せんせ…」
寝ている先生にそんなこと言ったってどうしようもない。
だけど、この想いはどうやったら消せるのか、全然分からないんだ。
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