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正直に。
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しおりを挟む「なんで2人で来てんの?」
水島くんと2人で病室に入ると、伊吹くんは相変わらず不機嫌そうだった。
「もしかして妬いてる?大丈夫。俺、彼女一筋だから」
「聞いてないわ」
大丈夫。
今日は深刻になったりしない。
泣いたりしない。
水島くんが一緒にいるから大丈夫。
「今日水島くんと2人で、伊吹くんを問いつめようって話してたんだよね」
「そうそう。伊吹、ホント水臭いよなって」
「え、何。怖いんだけど」
「あ!!」
話の途中で、突然水島くんが大きな声を出したから、びっくりした。
「なんだよ急に。うるさいな」
「やべー、今日彼女とデートだったんだ」
「え?」
「じゃ、俺帰るわ。井上さんはゆっくりしてって」
え…?
一緒に話聞くんじゃなかったの…!?
「おい、もう帰んのかよ」
「わりーな。また来るから」
もしかして水島くんは私に気を遣って2人にしてくれようとしてる?
いや、本当に彼女とのデート忘れてたのかもしれない。
でもあの彼女大好きな水島くんがデートを忘れることなんてあるのかな…。
水島くんは病室から出る直前に、私に何かアイコンタクトをした。
残念ながら水島くんが何を言いたかったのか分からなかった。
首を傾げながら水島くんが病室から出ていくのを見届けると、伊吹くんがつぶやいた。
「いつの間に蓮とそんなに仲良くなったの?」
「え?別に仲良くなってないと思うけど」
さっき水島くんから同じ質問をされたなと思うと、少し可笑しかった。
「あっそう」
「なんか伊吹くん冷たくない?」
「そんなことないけど」
「もしかして…妬いてる?」
水島くんみたいに軽いノリで、冗談で聞いたのに。
「そんなんじゃないよ」
伊吹くんは真面目に答えた。
今までの伊吹くんなら、嘘でも私のノリに合わせて「妬いてる」って言いそうなのに。
「ねー、機嫌直してよ」
「だからこれが普通だって」
「水島くんといる時はそんなんじゃないでしょ?」
私がそう言うと、伊吹くんは私の腕を掴んで引っ張った。
私はバランスを崩して、伊吹くんの寝ているベッドに座り込んだ。
至近距離に伊吹くんの顔。
不謹慎にもドキドキしてしまった。
「さっきからなんなの?」
「そっちこそ、なんでそんなに怒ってるの?」
「怒ってない」
「怒ってる」
「もういい、帰って」
「帰らない」
あーあ、やっぱり全然上手くできない。
なんでこんな言い合いみたいなことになっちゃうんだろう。
ただ、一緒にいたいだけなのに。
伊吹くんの隣で、冗談言い合って、笑い合いたいだけなのに。
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