カレカノごっこ。

咲倉なこ

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秘密ごと。

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それから水島くんは淡々と伊吹くんに何があったか教えてくれた。

水島くんは救急車を呼んで、病院まで連れ添ったそうだ。

すぐに親御さんが来て、あとは大丈夫って言われたけど、すぐにその場から動くことができなかったらしい。

そりゃそうだよ。

仲のいい友達が突然倒れたら、私だってどうすればいいか分からなくなる。


「そんな俺をみかねて、伊吹の母さんが伊吹の状態?を説明しにきてくれて」

「…うん」

「なんか、透析?ってやつ受けなきゃいけないのに、それサボってたんだって。
ブレスレット探すために。
あいつバカだろ?」


水島くんはそう言って眉毛を下げて笑った。

私とお揃いで買ったあのブレスレット。

なんでそこまでして…。


「そんな大事な物、なくすんじゃねーよってね。
結局伊吹が倒れて、それどころじゃなくなって見つけられなかったからさ。
伊吹も入院しちゃうし。
そのあと必死に探したよね、俺」

「だから水島くんが伊吹くんのブレスレット持ってたんだ」

「そう言うこと」


水島くんが色々話してくれたおかげで、色々分かってきた。

最初は混乱していて、状況を理解するのに時間がかかったけど。

今はちゃんと、水島くんの話を聞けるぐらいには冷静になった。


「このブレスレット探す時、形とか分かんなかったから、画像見せてもらったの。
そしたら女子とお揃いのブレスレットでさー」


きっと水島くんは、水族館で撮った時の写真を見たんだ。


「それでさー。
もしかして伊吹の好きなやつって、井上さんなんじゃないか、って思う場面が何回かあってね?」


え?


「私…?」

「でも井上さん隣のクラスの男子といつも一緒に帰ってるし、伊吹の片想いなのかなーって思ってて。
残念だったな、伊吹って。
だけどこの写真見た時、あれ?片想いじゃないのかなって」

「それは…」

「俺が前に伊吹と電話で話してる時、井上さん声かけてきたじゃん。
その時の感じとか?ビビッときたんだよね」


そっか。

そうだったんだな。

自分の気持ち、誰にもバレてないつもりでいたけど、全然だったんだな私。

水島くんにまでそう思われるくらいには、表に出てたんだ。


「このブレスレット、井上さんが伊吹に持って行ってあげてよ」

「でも見つけたのは水島くんでしょ?私が届けるじゃ意味ないと思う」

「俺は別にいいんだよ」

「でも…」


私が会いに行ってもいいの…?

伊吹くんは病気のこと私に隠してた。

こんな私が行っても…。


「井上さんは伊吹のこと、心配なんじゃないの?」

「でも、私が行ったら伊吹くん嫌がるんじゃ…」

「まー病気のこと、井上さんにも内緒にしてたってことはそうかもしれない。
じゃあ井上さんは?」

「私?」

「井上さんは伊吹に会わなくて大丈夫なの?井上さんはどうしたい?」

「それは…」

「俺はぶっちゃけ、どっちでもいいんだけどなー?」


水島くんはそう言ってブレスレットをぐるぐる回している。


「…行く」


私が小さな声でそう言うと、水島くんは笑顔を見せて、伊吹くんのブレスレットを私に渡した。


「俺が見つけたんだから、俺に感謝しろって伝えておいて」

「分かった」


私が頷いてブレスレットを握ると、水島くんは校舎の中へ入って行った。


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