カレカノごっこ。

咲倉なこ

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最後のデート。

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翌日、渉はまた家の前にいて、一緒に登校した。

たくさん寝たおかげか、今日は頭がスッキリしている。

何も問題は解決していないけど。

渉はいつもと変わらない感じで接してくれるけど、たまにどう反応していいか分からない言葉をくれて、なんだかむずがゆい。


私のクラスの前で渉と別れて、教室に入るとすぐに伊吹くんと目があった。

今日は来てる。

1日会ってないだけなのに、すごく久しぶりに感じるのはなんでだろう。

1日ぶりの伊吹くんに少しの緊張を覚えながらも、挨拶をして席に座る。

平常心、平常心。


そう思いながら、カバンを開けて筆箱を出していると、自分のスマホが震えた。

ポケットからスマホを取り出して確認すると、差出人は伊吹くんだった。


”今日の放課後ヒマ?”


なんで…。


”いや、もうデートしないって”

”あと一回だけ”


なんであと一回だけとか言うの。

やめようって言った時、すぐに了承してくれたじゃん。

もう終わったんだよ…。

私はもう伊吹くんとどう接するにしても、友達じゃいられないから。

だから期待してしまうようなこと言わないで…。


”渉に告白された。真剣に考えたいからもう伊吹くんとはデートできない”


私はこれ以上伊吹くんに気持ちを持っていかれたくない。

お願いだから引き下がって…。

しばらくして、またスマホが震える。


”付き合うの?”


伊吹くんからそう返ってきて、思わず伊吹くんの顔を見てしまった。


「っっ…」


一点の曇りもなく私を見据えていた伊吹くん。

そんな顔で私を見ないで…。

私は耐えきれなくなって、すぐにスマホに目を戻した。


”ちゃんと向き合おうと思ってる”

”まだ付き合ってないならいいじゃん”

”そーゆー問題じゃないんだってば”

”今日で最後にするから。お願い”


もう、なんか、泣きそう。

なんなの。

伊吹くんのことなんてすぐに忘れて、ちゃんと渉とのこと、考えたいって思ってるのに、なんで…。


放課後。

学校の下駄箱に行くと、伊吹くんが誰かを待っているかのようにそこにいた。

私はそんな伊吹くんに声をかける。


「本当に今日で最後だからね!?」


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