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最後のデート。
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しおりを挟む「はああああ」
「すっごい深いため息だね」
私の前に座っている桃々が、私のため息を聞きつけて振りむいた。
「昨日、色々あって」
「なに、どうした?」
「いや、色々ありすぎてもうムリ…」
「うん。じゃあ、ひとつひとつゆっくりでいいから、私に話してみ?」
私は桃々に促されるまま、昨日の出来事を話した。
桃々はもう、仏様のように私の話を聞いてくれた。
優しい友人を持って私は幸せ者だよ。
「で、新奈は渉くんと付き合うの?」
「それは考えたいって言ってある…」
「考えたいねぇ」
「ねえ、桃々どうしよう!?」
「好きなら付き合う。嫌いなら付き合わない。シンプルな話だと思うけど」
「渉のことは好きだよ。優しいし、一緒にいて居心地いいし。でも恋愛対象として見てなかったから」
だから悩んでる。
渉のこと傷つけたくないし。
今まで通り、一緒にいれなくなるのもイヤだし。
気まずくなるのもイヤだ。
「じゃあ皆藤くんへの気持ちと、渉くんへの気持ち。新奈にとって一緒なもの?」
「今、皆藤くんは関係ないし…」
「なんで?関係あるじゃん。今日だってずっと皆藤くんの席チラチラ見ちゃってさ。ばればれだよ?」
「だって、それは…」
「言ったじゃん。自分の気持ちに正直になりなって」
「でも、正直になっちゃったら、きっとみんなのこと傷つける」
「恋愛ってそんなもんだよ」
桃々の言葉には重みがあった。
さすがそれなりに恋愛をこなしている桃々様の言うことは違うなって思った。
でも自分の気持ちに正直になるって。
伊吹くんを好き…って認めて、それでどうなるの?
そんなの誰も幸せにならない。
チャイムがなって授業が始まると、急に眠気が襲って来た。
そういえば昨日、全然寝てなかったんだ。
渉のこと好きなのに。
渉と手を繋いだりデートしたり、全然想像がつかない。
なんでなんだろう。
あーあ。
なんか、考えるの疲れちゃったな。
なんで今日、伊吹くんは学校に来ないんだろう。
伊吹くんの机を眺めながら、私は机に頬をついた。
そして、いつの間に目をつぶっていた。
寝不足のせいもあって、授業中はひたすら寝て、帰ってからもずっと寝ていた。
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