カレカノごっこ。

咲倉なこ

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帰り道。

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自販機で飲み物を買って、渉と一緒にベンチに座った。

この公園に来るの、いつぶりだっけ。

小さい時はよく遊んでいたのに、高校に入ってからはすっかり来なくなったな。


「この公園でよく一緒に遊んだよね」

「そうだなー」

「覚えてる?渉、ブランコ全然乗れなくてさ」

「あー、あったな」

「怖くないからって、私が背中押すと本気で怒って」

「あの時は、まじでやめてくれって思ったんだよ」


今の渉はその時と同じ顔をしている。


「…渉、なんかあった?」


私の問いかけに、渉は気まずそうに顔を下げる。


「私、なんかしちゃったかな?だったらごめん、謝る!ごめん!」

「違う。新奈はなにも悪くないよ」

「じゃあなんで?」


なんで怒ってるの…?

渉はジュースの缶をベンチに置いたと思ったら、ブランコの方へ行って、ブランコに乗った。

どんどん大きく漕ぎ出していく渉。


「だいぶ高くまで漕げるようになったね!」

「まあ、もう高校生だし?」


私も渉の隣のブランコに移動する。

私がブランコをちょっとだけ漕いだタイミングで、渉は砂の音を立てて止まった。


「そのブレスレット、もしかして皆藤ってやつとお揃い?」

「へ…?」


渉の発言にびっくりして、慌てて腕を見てみる。

だけどブレスレットは隠れていた。


「あ、電車に乗ってる時、見えたから」

「あー…」


渉は、私と伊吹くんがお土産コーナーにいた時のことを見たのかな。


「やっぱお揃いなんだ」

「違うよ!?これは、何て言うかたまたまで…」

「誤魔化さなくていいから。なんでお揃いのものとか身に付けてるのかなーって、気になって」


渉が不機嫌だった原因ってこれ…?

だったらなんて言うのが正解なんだろう。

なんか渉には、なにを言っても見透かされる気がするし…。

正直に言った方がいいのかな。

別に内緒にしてなんて言われてないし。

好きにならないでって言われただけで。

渉、男子だし。

渉に話したところで、面倒なことにはなんないよね…?


「…話すと長くなるけどいい?」

「うん。聞くよ」


それから私は、私は今までの伊吹くんとの経緯を、渉に打ち明けた。

めちゃくちゃな話だけど、渉は静かに聞いてくれていた。


「なるほどね」

「…分かってくれた?」

「いや、全然分かんないけど」

「…だよね」


私も今だに分からないことだらけだもん。

男子なら伊吹くんのしてること、少しは分かるのかなーって思ったけど、やっぱ特殊だよね。


「でも、あいつといる時の新奈が楽しそうなことは分かるよ」

「へ?」

「だから焦ったっつーか…?」


焦る?

渉が?


「なんで?」

「え、だって…」


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