カレカノごっこ。

咲倉なこ

文字の大きさ
上 下
21 / 73
水族館デート。

21

しおりを挟む


お昼ご飯も食べ終わって、午後からは桃々が目当てのペンギンのところまで来た。


「めっちゃ可愛い!」


おおはしゃぎの桃々。

確かにめちゃくちゃ可愛い。

なのに泳ぐのが早くて、ギャップがすごい。

もう少しでペンギンのふれあいイベントの時間だから、それまで少し待つことになった。

桃々がペンギンを激写している間、後ろで微笑ましく見守っていると、肩をとんとんとされる。

振り向いて見てみると、伊吹くんだった。


「なに?」


私がそう言った瞬間、私の腕を掴んで引っ張る伊吹くん。


「え!?なに?ちょっと!」

「しー!」


口に人差し指を当てて、私に”喋るな”と言ってるみたいだった。

どんどん、桃々たちのいるペンギンのところから離れて行く。

班のみんなはペンギンを見ていて、私たちがいなくなったことに誰も気がついていない。


「伊吹くんどうしたの!?ペンギンのふれあいタイム始まっちゃうよ?」

「このまま2人でデートしよ」

「はー?!」

「だから、デート!」


そう言って伊吹くんは私の腕を引っ張り続ける。

なんなの、この状況!?


私は誰かに見られてるんじゃないかと思って周りをキョロキョロ見渡す。

だけどうちの学校の生徒はいなさそう。

そうか、みんなペンギンかイルカのショーに集まっているんだ。

班でどっちを見に行くか揉めたもんな。

結局桃々の強い希望で、ペンギンの方に行くことになったんだけど。


「分かったから、腕離して」


私がそういうと、疑いの目を向ける伊吹くん。

誰かに見られて困るのは伊吹くんの方でしょ…?!


一度言ったら私の意見なんて聞いてくれない伊吹くん。

もう分かってるから。

私は観念して伊吹くんについて行くことにした。


突然のことに心拍数が上がっていくのが分かる。

今まで普通にしてたのに、なんで…。

私は伊吹くんの背中を見ながら、ほんのり色づく頬を隠した。


結局、伊吹くんから連れてこられた場所は、カメのコーナーだった。


「カメ好きなの?」

「うん、大好き」


カメコーナーはほとんど人がいなくて、閑散としていた。


「ほら見て。止まっているように見えるけど、すごくゆっくり動いてる」

「あ、ほんとだ」


って、課外授業中に私は何をやってるの…?

冷静になればなるほど、おかしな状況に気づいてく。


「やっぱ桃々たちの所に戻ろう?」

「俺は新奈とデートしたい」


ゆっくり動くカメの目の前で。

ムードもクソもないけど、伊吹くんに目を見つめられて、やっぱりドキッとしてしまう。


「デートならまた今度、ね?」

「今がいい」

「もう!伊吹くん、いつもわがまま!」

「新奈は俺と一緒にいたくない?」


ずるい。

伊吹くんは本当にずるいよ。


「…分かった。ちょっとだけだからね」


私が観念すると、伊吹くんはくしゃっと笑った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

愛してほしかった

こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。  心はすり減り、期待を持つことを止めた。  ──なのに、今更どういうおつもりですか? ※設定ふんわり ※何でも大丈夫な方向け ※合わない方は即ブラウザバックしてください ※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください

処理中です...