カレカノごっこ。

咲倉なこ

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水族館デート。

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先生の話が終わって、各班ごとに水族館をまわる。

トンネルの水槽があったり、ジンベイザメがいる大きな水槽があったり、昔来た時より豪華になっていた。


「新奈、写真撮ろう!」

「うん」


学校の行事で来てるから本当はダメなんだけど…。

桃々と来る機会なんて中々ないから、ちょっとぐらいいいよね。

そう思ってトンネル水槽の中でスマホを構える。


うん、いい感じに撮れてる。

お互いのスマホで撮り合ってると、伊吹くんがスマホを覗き込んできた。


「写真?」

「あ、うん」


伊吹くんの顔がやけに近くてちょっと焦った。

だって桃々や他のクラスメイトも近くにいるから。

そう思って、一歩距離をとる。

伊吹くんが、みんないる前で普通に話しかけてくるなんて珍しかった。


「どうせなら班のみんなで撮ろうぜ」


伊吹くんはそう言って、私のスマホを取り上げた。

水島くんたちにも声をかけて、班のみんなで写真を撮る。

インカメだからみんなぎゅっと近づく。

せっかく伊吹くんと離れたのに、あっという間に距離を縮められる。

そして相変わらず隣にいる伊吹くんに、ちょっとだけ緊張する。


写真を撮り終わると、伊吹くんは私のスマを返してくれた。


「写真、俺にも送って」

「…分かった。後で送る」


伊吹くんはにっこり笑うと、水島くんたちと先に行ってしまった。

送るって言ったけど、そういえば伊吹くんの連絡先知らない。


「あれ、新奈って皆藤くんと仲良かったっけ?」

「え、なんで?」

「なんとなく、そんな感じがした」


桃々にそう言われてドキッとした。

隠している訳じゃないけど、伊吹くんの関係をなんて説明していいかも分からない。

それに伊吹くんはみんなには内緒にしてほしいっぽいし…。


「まあ、ちょっと色々あって…。時期がきたら話すね」

「え、めちゃくちゃ気になる言い方するじゃん」

「大したアレじゃないんだけど、ほら、向こうの都合もあるし…」

「分かった。って、よく分かんないけど、まあ今度教えてね!」


桃々はそう言って伊吹くんたちの後を追った。

さっきの流れで桃々はどこをどう見て、私と伊吹くんが仲良いって思ったんだろう。

大した話しはしてなかったように思ったけど。

確かにみんなの前であんまり話す機会もなかったから、喋るだけでもレアだったのかも。


伊吹くん面倒は嫌いだって言ってたし。

私もその面倒に巻き込まれるのは嫌だし。

だから、もうちょっとちゃんと気をつけないとな、と思った。


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