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次の日の学校。

いつもだったら兄貴のことで話しかけてきていた葉乃は、その日から一切俺に話しかけなくなった。

俺が言ったことだ、仕方ない。


もう葉乃の口から、兄貴のことなんて聞きたくないんだ。

これでよかったんだ。
って、何回も何回も頭の中で繰り返した。





葉乃と全然喋らなくなっって1カ月。

学校に行く直前に、兄貴から一番聞きたくない言葉を聞いた。



「俺、葉乃ちゃんと付き合うことになったわ」

「あっそう」


1カ月もたったのに、なんでこんなにもショックを受けているんだろう。

もう、頭ではふっきているつもりだったのに。


そのまま学校を休んでしまいそうだったけど、何とか登校できた自分を褒めたい。

靴を履き替えていると、葉乃が俺の目の前に現われた。

いつもだったら目すら合うこともないのに、今日に限って最悪。


「よう、兄貴と付き合うことになったんだって?
よかったじゃん」

約1カ月ぶりに葉乃に喋りかける。

俺は葉乃の反応が怖くて、葉乃の返事を聞く前に教室に向かおうとした。


「あのっ…」

そんな俺を引き止める葉乃。



「なに?」

「咲斗とちゃんと話がしたくて」


今更俺と何を話そうって言うんだ?

兄貴とののろけ話でも聞かされんの?

勘弁してくれよ。




朝は誰も通らない廊下で、

「お兄さんとは付き合ってない…」

葉乃は意味の分からないことを言った。



「は?」

「昨日冬夜さんに言われたの、付き合いたいって。
でも断っちゃった」

「なんで…?」


意味が分からない。

兄貴は付き合うことになったって言ってたよ。


「兄貴のこと好きなんじゃねーの?」



俺がどんな想いでお前を兄貴に紹介したか分かってる?

断るぐらいならはじめっから…


「あれから…。
咲斗に関わらないでって言われてから、もうずっと咲斗のこと考えてる。
ずっと咲斗が頭から離れなくなっちゃったの…」

「なんだよそれ」


まじで意味分かんないんだけど。

俺が葉乃を諦めようと、どんなに苦しんだと思ってんだよ。



「俺もずっと葉乃のこと考えてた」

「え?」


「ずっと、兄貴のことで一喜一憂してる葉乃を見てるのが辛かった」

「そうだったんだ…。
私、何も知らなくて本当にごめん」


「そう思うなら、俺と付き合って」

俺は軽い冗談のつもりだった。



「いいよ」



葉乃は俺の前で久しぶりに笑った。


「やば」

「え?」


急展開すぎる。


今日頑張って学校来てよかった、とか。

後で兄貴を問い詰めてやる、とか。

色々思考は回るけど。



「俺でいいの?」



「咲斗がいいの!」



葉乃の笑顔に全部もってかれた。







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