上 下
2 / 3

2

しおりを挟む


そして、あっという間に土曜日になった。

今日は葉乃と兄貴がデートする日。

朝早くに目が覚めてしまった。


葉乃と兄貴はどこに行くんだろう。

どんなデートをするんだろう。


あー、やめやめ!

好きな女の子の恋路を邪魔するなんて嫌だし、とっとと諦めよ。


そう思ってたのに。




「お邪魔します」

兄貴は葉乃を連れて家に帰ってきた。

「なんで?」

「話の流れで」


兄貴は葉乃を家の中へ案内する。

なんで家になんか連れてくんだよ。


俺はすぐ自分の部屋へ行った。

2人のイチャイチャを間近で見るなんて、拷問以外の何ものでもない。


自分の部屋で、普段は絶対しない勉強を始めた。

隣りの部屋の扉が閉まる音が聞こえる。


最悪だ。

初めてのデートで葉乃を部屋に連れ込むなんて…。


「くそっ…」

俺は何も聞こえないようにヘッドホンをしてシャープペンをはしらせる。

何も聞こえない。

何も聞きたくない。

俺はこれを機にがり勉になるんだ。

恋愛?なにそれ、シラナイ。





「勉強?えらいね」

ヘッドホンをしていたはずなのに、すぐ近くで声が聞こえて。

びっくりして振り返ると、葉乃が超至近距離にいた。


「わっ!!」

「わっ…!」

俺がびっくりして出した声に、葉乃もびっくりした様子だった。


「大きい声出してごめん」

「私の方こそ、急にごめんね。
何回か呼んだんだけど」

「え、」


ヘッドホンしてるから全然気づかなかった。

いつの間にか俺のしていたヘッドホンは葉乃が持っていた。

てか、

「なんでここにいるの?
兄貴の部屋隣だけど」

「知ってる」


なんだよ。

何なんだよ。


「冬夜さん、急にバイト入ったからって、帰るように言われて…」

「じゃあ帰れば?」


あーあ。

今の俺の言い方、めちゃくちゃ感じ悪い。



「あのね、相談なんだけど…」

また兄貴のこと?


「…なに?」

「冬夜さんって、私のことどう思っているのかなーって。
何か聞いてない?」

「…」


本当に兄貴のこと好きなんだろうな。

くそっ。

なんで葉乃の好きな相手は俺じゃないんだ。


「なにも聞いてない」

「そっか、もしよかったら、それとなく聞いておいてくれないかな…なんて」



「そんなの無理だよ」

「へ?」



もう無理。

限界だ。



「お前さ、男の部屋に入るってどう言うことか分かってる?」

「え?」


無防備にのこのこ俺の部屋へ来やがって。

諦められるもんも諦められなくなる。



「咲斗、なんか怒ってる?」



「兄貴なんて辞めて、俺にしろよ」



俺は椅子から立ち上がって、葉乃を強く自分に引き寄せていた。



「え…どうしたの…?」

「なんでよりによって兄貴なんだよ…」


思わず葉乃を抱きしめる腕に力が入る。


何やってんだ俺。

こんな事したって、葉乃の気持ちは手に入らないのに。



「俺じゃだめ?」

「えっと…」



ほら葉乃が困ってんじゃん。

自分の行動につくづく嫌気がさす。

俺は抱きしめていた葉乃からそっと離れた。



「お前、もう帰れ」


「ねえ、今のなに…?」

「うるさいなー!
もう兄貴の相談のれないから。
二度と俺に関わらないで」


俺の言葉に戸惑いながらも葉乃は部屋から出て行った。


「あー…」

こんなはずじゃなかったのに。

くそっ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

甘々に

緋燭
恋愛
初めてなので優しく、時に意地悪されながらゆっくり愛されます。 ハードでアブノーマルだと思います、。 子宮貫通等、リアルでは有り得ない部分も含まれているので、閲覧される場合は自己責任でお願いします。 苦手な方はブラウザバックを。 初投稿です。 小説自体初めて書きましたので、見づらい部分があるかと思いますが、温かい目で見てくださると嬉しいです。 また書きたい話があれば書こうと思いますが、とりあえずはこの作品を一旦完結にしようと思います。 ご覧頂きありがとうございます。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

彼氏が完璧すぎるから別れたい

しおだだ
恋愛
月奈(ユエナ)は恋人と別れたいと思っている。 なぜなら彼はイケメンでやさしくて有能だから。そんな相手は荷が重い。

ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編

タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。 私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが…… 予定にはなかった大問題が起こってしまった。 本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。 15分あれば読めると思います。 この作品の続編あります♪ 『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

処理中です...