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Ch1・令嬢たちの初恋と黒の陰謀
1ー11・勉強教えて
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逃げる一般人たち。意識のないコレットをその場から避難させる分身エミィと、それを手伝うミユ。 一方で、ニーシャが作ったプラスチックのリングにまとめて縛られた3人の男。
他にその場には、レイと本体エミィとニーシャ。それに今さらだが、またカツラとメガネで変装したユイト。
「こいつらはいったい、何者なんだと思う?」
ニーシャの方を見てレイが問う。
「わからないわ。でも三人とも捕まえれたし、すぐにわかると思う」
そうニーシャが言い終えたくらいのタイミングで現れた、ほぼ正三角の紺色の飛行船。
すぐに、縛られた3人の頭上で光を発し、まるで地上世界のフィクションの異星人の技術の如く、飛行船は三人を取り込む。
「あの飛行船、知ってる。きみらはじゃあ"秘密情報局"の?」
「ええ、そうよ。わたしはあれのエージェント7。エミィはエージェント7の03、ようするにわたしの直属の部下にあたるわ」
レイの推測をあっさり肯定するニーシャ。
秘密情報局。あるいは"SIA"。正式名称、"ミューテア秘密情報局"は、ミューテア政府が抱える諜報組織のひとつ。
ニーシャたち。正確にはニーシャの任務は、レイ・ツキシロに関する調査と、可能ならば協力者としてのスカウト。
民間の貴族ながら、独自ルートによる高い情報収集能力。それに、少ない接触でたいていの女性を口説けるその誘惑能力に、実はわりと前からSIAは注目していたのだという。
エミィは、ニーシャお抱えの秘蔵っ子だが、公式的には見習いであり、まだ学生なので、あくまで臨時のエージェント。しかし偶然にもレイと同じ学校で、しかも同学年である事から、ニーシャに協力を頼まれたわけであった。
「で、きみたちこそ、やっぱり学園に通ってるのは偽王子くん、きみなわけなの?」
そこは楽しそうに問うエミィ。
「ああ、いろいろ事情があってね」
レイもそれをあっさり認める。
それから、自分たちの事情と共に、ガーディら、他の経歴詐称組の事も、レイは隠さずに全てエミィたちに伝えた。
ーー
麗寧館の一室に集まったレイたちとニーシャとエミィ。
「しかし、あんな街中でコード能力者に襲われるなんて、もう尋常な事態じゃないよな?」
「ええ、アズエルも潜入者が複数。何か起ころうとしてるのかもね」
レイの言葉に、ニーシャも頷く。
「でも、さすがにあそこでは、下手な事は出来ないと思うけど」
すぐさま言うエミィ。
アズエル学園のセキュリティは非常に硬く、潜入は出来ても、一般生徒に手出しするのはかなり難しい。
「まあ、だからこそ今回みたいに、普通に外出してる時を狙ったのでしょうね」とニーシャ。
「でも、生徒が狙われてるの?」
ユイトの疑問。
「いや、コレットもぼくもそうだし、貴族だと思う。最近、成金や貴族が破滅したってケースが異常に多い」
しかし破滅してるのは、裏で悪事を働いていたりする者が多く、おそらくそこを利用されて、何者かにやられてるのだと推測していたレイ。
「犯人に関しても心当たりがある」
「クロ姫、ルルシア嬢ね。彼女が関係してると思うの?」
ニーシャも彼女の事は知っていた。
確かに、最近破滅した多くの資産家たちは、実は彼女にやられたという噂がある。
「可能性はあると思う」
そしてユイトにも、その黒令嬢の事をレイは説明した。
「とにかく、もともとぼくのスカウトが目的だったんだろ。ならこれからは情報を共有して、協力していこう」
「ええ、こちらとしても助かるわ」
そして、がっちり握手したレイとニーシャ。
ーー
「レイ先輩」
次の日の登校時、またしても教室前でコレットに呼び止められた偽物レイのユイト。
「あ、あの、わたし、恥ずかしながら気を失っちゃいましたけど」
ちなみに彼女には、運悪く犯罪組織と警察の抗争に巻き込まれてしまった、というふうにエミィたちの仲間が説明していた。
「昨日はありがとうございます。噂通り、ううん、噂以上に、先輩とってもかっこよかったです」とそこまで早口で告げて、彼女はその場を後にした。
「役得じゃん、'サギ'王子」
あからさまにサギ、の部分を強調しながら、背後から親しげに背中を叩いてくる、今や彼がユイトである事を知っているエミィ。
「ああ、そうだね」
一応笑顔で、しかしほぼ機械的に返しながら、ちらと、すでに自身の席について、おそらくは自身の分だろう課題をやっているミユを見る。
(「わたしたちもデートしましょうよ」
「決まりです、決定ですよ」
「わたしは楽しかったです」
「最高の初デートになりました」)
頭の中で自然とループしていた、昨日の彼女のいくつもの言葉。
楽しそうに笑ってくれた。手を繋いでくれて、その温もりはまだ残っているようだった。それに、初めてのデートとも言っていた。
でも、かなり間違いなくその時間のせいで、本来は昨日するはずだった課題もあまりできていないのだろう。ただでさえ二人分を任されてるのに。
「こっち」
唐突に、ユイトを近くの空き教室に連れ込むエミィ。
「何か悩み事だね、そうなんでしょ?」
そして聞く。
「ユイト」
その本当の名前も出す。
「エミィちゃん」
ユイトも素の自分を出す。
そして意を決し、切り出した。
「エミィちゃん、お願い、おれに。おれに勉強を教えてほしいんだ」
他にその場には、レイと本体エミィとニーシャ。それに今さらだが、またカツラとメガネで変装したユイト。
「こいつらはいったい、何者なんだと思う?」
ニーシャの方を見てレイが問う。
「わからないわ。でも三人とも捕まえれたし、すぐにわかると思う」
そうニーシャが言い終えたくらいのタイミングで現れた、ほぼ正三角の紺色の飛行船。
すぐに、縛られた3人の頭上で光を発し、まるで地上世界のフィクションの異星人の技術の如く、飛行船は三人を取り込む。
「あの飛行船、知ってる。きみらはじゃあ"秘密情報局"の?」
「ええ、そうよ。わたしはあれのエージェント7。エミィはエージェント7の03、ようするにわたしの直属の部下にあたるわ」
レイの推測をあっさり肯定するニーシャ。
秘密情報局。あるいは"SIA"。正式名称、"ミューテア秘密情報局"は、ミューテア政府が抱える諜報組織のひとつ。
ニーシャたち。正確にはニーシャの任務は、レイ・ツキシロに関する調査と、可能ならば協力者としてのスカウト。
民間の貴族ながら、独自ルートによる高い情報収集能力。それに、少ない接触でたいていの女性を口説けるその誘惑能力に、実はわりと前からSIAは注目していたのだという。
エミィは、ニーシャお抱えの秘蔵っ子だが、公式的には見習いであり、まだ学生なので、あくまで臨時のエージェント。しかし偶然にもレイと同じ学校で、しかも同学年である事から、ニーシャに協力を頼まれたわけであった。
「で、きみたちこそ、やっぱり学園に通ってるのは偽王子くん、きみなわけなの?」
そこは楽しそうに問うエミィ。
「ああ、いろいろ事情があってね」
レイもそれをあっさり認める。
それから、自分たちの事情と共に、ガーディら、他の経歴詐称組の事も、レイは隠さずに全てエミィたちに伝えた。
ーー
麗寧館の一室に集まったレイたちとニーシャとエミィ。
「しかし、あんな街中でコード能力者に襲われるなんて、もう尋常な事態じゃないよな?」
「ええ、アズエルも潜入者が複数。何か起ころうとしてるのかもね」
レイの言葉に、ニーシャも頷く。
「でも、さすがにあそこでは、下手な事は出来ないと思うけど」
すぐさま言うエミィ。
アズエル学園のセキュリティは非常に硬く、潜入は出来ても、一般生徒に手出しするのはかなり難しい。
「まあ、だからこそ今回みたいに、普通に外出してる時を狙ったのでしょうね」とニーシャ。
「でも、生徒が狙われてるの?」
ユイトの疑問。
「いや、コレットもぼくもそうだし、貴族だと思う。最近、成金や貴族が破滅したってケースが異常に多い」
しかし破滅してるのは、裏で悪事を働いていたりする者が多く、おそらくそこを利用されて、何者かにやられてるのだと推測していたレイ。
「犯人に関しても心当たりがある」
「クロ姫、ルルシア嬢ね。彼女が関係してると思うの?」
ニーシャも彼女の事は知っていた。
確かに、最近破滅した多くの資産家たちは、実は彼女にやられたという噂がある。
「可能性はあると思う」
そしてユイトにも、その黒令嬢の事をレイは説明した。
「とにかく、もともとぼくのスカウトが目的だったんだろ。ならこれからは情報を共有して、協力していこう」
「ええ、こちらとしても助かるわ」
そして、がっちり握手したレイとニーシャ。
ーー
「レイ先輩」
次の日の登校時、またしても教室前でコレットに呼び止められた偽物レイのユイト。
「あ、あの、わたし、恥ずかしながら気を失っちゃいましたけど」
ちなみに彼女には、運悪く犯罪組織と警察の抗争に巻き込まれてしまった、というふうにエミィたちの仲間が説明していた。
「昨日はありがとうございます。噂通り、ううん、噂以上に、先輩とってもかっこよかったです」とそこまで早口で告げて、彼女はその場を後にした。
「役得じゃん、'サギ'王子」
あからさまにサギ、の部分を強調しながら、背後から親しげに背中を叩いてくる、今や彼がユイトである事を知っているエミィ。
「ああ、そうだね」
一応笑顔で、しかしほぼ機械的に返しながら、ちらと、すでに自身の席について、おそらくは自身の分だろう課題をやっているミユを見る。
(「わたしたちもデートしましょうよ」
「決まりです、決定ですよ」
「わたしは楽しかったです」
「最高の初デートになりました」)
頭の中で自然とループしていた、昨日の彼女のいくつもの言葉。
楽しそうに笑ってくれた。手を繋いでくれて、その温もりはまだ残っているようだった。それに、初めてのデートとも言っていた。
でも、かなり間違いなくその時間のせいで、本来は昨日するはずだった課題もあまりできていないのだろう。ただでさえ二人分を任されてるのに。
「こっち」
唐突に、ユイトを近くの空き教室に連れ込むエミィ。
「何か悩み事だね、そうなんでしょ?」
そして聞く。
「ユイト」
その本当の名前も出す。
「エミィちゃん」
ユイトも素の自分を出す。
そして意を決し、切り出した。
「エミィちゃん、お願い、おれに。おれに勉強を教えてほしいんだ」
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