科学魔法学園のニセ王子

猫隼

文字の大きさ
上 下
11 / 34
Ch1・令嬢たちの初恋と黒の陰謀

1ー11・勉強教えて

しおりを挟む
 逃げる一般人たち。意識のないコレットをその場から避難させる分身エミィと、それを手伝うミユ。 一方で、ニーシャが作ったプラスチックのリングにまとめて縛られた3人の男。
 他にその場には、レイと本体エミィとニーシャ。それに今さらだが、またカツラとメガネで変装したユイト。
「こいつらはいったい、何者なんだと思う?」
 ニーシャの方を見てレイが問う。
「わからないわ。でも三人とも捕まえれたし、すぐにわかると思う」
 そうニーシャが言い終えたくらいのタイミングで現れた、ほぼ正三角の紺色の飛行船。
 すぐに、縛られた3人の頭上で光を発し、まるで地上世界のフィクションの異星人の技術の如く、飛行船は三人を取り込む。
「あの飛行船、知ってる。きみらはじゃあ"秘密情報局ひみつじょうほうきょく"の?」
「ええ、そうよ。わたしはあれのエージェント7。エミィはエージェント7の03、ようするにわたしの直属の部下にあたるわ」
 レイの推測をあっさり肯定するニーシャ。

 秘密情報局。あるいは"SIAシア"。正式名称、"ミューテア秘密情報局"は、ミューテア政府が抱える諜報組織のひとつ。
 ニーシャたち。正確にはニーシャの任務は、レイ・ツキシロに関する調査と、可能ならば協力者としてのスカウト。
 民間の貴族ながら、独自ルートによる高い情報収集能力。それに、少ない接触でたいていの女性を口説けるその誘惑能力に、実はわりと前からSIAシアは注目していたのだという。
 エミィは、ニーシャお抱えの秘蔵っ子だが、公式的には見習いであり、まだ学生なので、あくまで臨時のエージェント。しかし偶然にもレイと同じ学校で、しかも同学年である事から、ニーシャに協力を頼まれたわけであった。

「で、きみたちこそ、やっぱり学園に通ってるのは偽王子くん、きみなわけなの?」
 そこは楽しそうに問うエミィ。
「ああ、いろいろ事情があってね」
 レイもそれをあっさり認める。

 それから、自分たちの事情と共に、ガーディら、他の経歴詐称組の事も、レイは隠さずに全てエミィたちに伝えた。

ーー

 麗寧館の一室に集まったレイたちとニーシャとエミィ。

「しかし、あんな街中でコード能力者に襲われるなんて、もう尋常な事態じゃないよな?」
「ええ、アズエルも潜入者が複数。何か起ころうとしてるのかもね」
 レイの言葉に、ニーシャも頷く。
「でも、さすがにあそこでは、下手な事は出来ないと思うけど」
 すぐさま言うエミィ。

 アズエル学園のセキュリティは非常に硬く、潜入は出来ても、一般生徒に手出しするのはかなり難しい。

「まあ、だからこそ今回みたいに、普通に外出してる時を狙ったのでしょうね」とニーシャ。
「でも、生徒が狙われてるの?」
 ユイトの疑問。
「いや、コレットもぼくもそうだし、貴族だと思う。最近、成金や貴族が破滅したってケースが異常に多い」
 しかし破滅してるのは、裏で悪事を働いていたりする者が多く、おそらくそこを利用されて、何者かにやられてるのだと推測していたレイ。
「犯人に関しても心当たりがある」
「クロ姫、ルルシア嬢ね。彼女が関係してると思うの?」
 ニーシャも彼女の事は知っていた。
 確かに、最近破滅した多くの資産家たちは、実は彼女にやられたという噂がある。
「可能性はあると思う」
 そしてユイトにも、その黒令嬢の事をレイは説明した。

「とにかく、もともとぼくのスカウトが目的だったんだろ。ならこれからは情報を共有して、協力していこう」
「ええ、こちらとしても助かるわ」
 そして、がっちり握手したレイとニーシャ。

ーー

「レイ先輩」
 次の日の登校時、またしても教室前でコレットに呼び止められた偽物レイのユイト。
「あ、あの、わたし、恥ずかしながら気を失っちゃいましたけど」
 ちなみに彼女には、運悪く犯罪組織と警察の抗争に巻き込まれてしまった、というふうにエミィたちの仲間が説明していた。
「昨日はありがとうございます。噂通り、ううん、噂以上に、先輩とってもかっこよかったです」とそこまで早口で告げて、彼女はその場を後にした。

「役得じゃん、'サギ'王子」
 あからさまにサギ、の部分を強調しながら、背後から親しげに背中を叩いてくる、今や彼がユイトである事を知っているエミィ。
「ああ、そうだね」
 一応笑顔で、しかしほぼ機械的に返しながら、ちらと、すでに自身の席について、おそらくは自身の分だろう課題をやっているミユを見る。

(「わたしたちもデートしましょうよ」
「決まりです、決定ですよ」
「わたしは楽しかったです」
「最高の初デートになりました」)

 頭の中で自然とループしていた、昨日の彼女のいくつもの言葉。
 楽しそうに笑ってくれた。手を繋いでくれて、その温もりはまだ残っているようだった。それに、初めてのデートとも言っていた。
 でも、かなり間違いなくその時間のせいで、本来は昨日するはずだった課題もあまりできていないのだろう。ただでさえ二人分を任されてるのに。

「こっち」
 唐突に、ユイトを近くの空き教室に連れ込むエミィ。
「何か悩み事だね、そうなんでしょ?」
 そして聞く。
「ユイト」
 その本当の名前も出す。
「エミィちゃん」
 ユイトも素の自分を出す。
 そして意を決し、切り出した。
「エミィちゃん、お願い、おれに。おれに勉強を教えてほしいんだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...