科学魔法学園のニセ王子

猫隼

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Ch1・令嬢たちの初恋と黒の陰謀

1ー7・本当はめちゃくちゃ強い?

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「うわっ」
 いきなり、エミィたち(?)が起こしたのだろう風圧を横からぶつけられる、ユイト。
 しかし後方から、自ら発生させた風圧を自分にぶつける事で、エミィのそれから逃れると同時に、距離を詰める。

(分身の方は倒しても意味ないんだっけ)
 事前に調べていた情報。だからこそ、しっかり覚えてもいた。
(本体は右の方)

 その本体の方に、周囲の石を操ってぶつけようとするも、やはり基本技能では弱く、本物エミィが同じように操る石で相殺されてしまう。そして次の瞬間には迫ってきて、見事な飛び蹴りをお見舞いしてくる分身エミィ。それはなんとか両腕でガードするも、本物の方が、また石つぶてを放ってくる。

「なら」
 これでどうだとばかりに、体を地につけたばかりの分身エミィの手を掴み、引っ張って自身の盾にする。と予想通り、消されてしまう分身。
 しかし予想出来てた事なので、冷静に、石はさっきエミィにそうされたように、こちらもまた石で防ぐ。
 直後、背後に再度現れた分身の放つ風圧を、振り返り様に風圧で相殺。だけでなく、やや勝っていたようで、分身を吹き飛ばす事にも成功する。
 分身はまた消え、今度は本体のエミィとユイトと三角を作るような位置取りに現れる。

「その戦いぶり、動きの先読み。それが解析アナライズの力なんだね?」
「ああ、かっこいいだろ」
 これはユイトのオリジナルだった。レイが言いそうな言葉。
 そしてはったりもいいとこだ。エミィが言うような彼の戦いぶりは、普通に、地上では日常茶飯事だった実戦で培われた経験ゆえのもの。

分身ドッペルゲンガーはもうひとりの自分を生み出す特殊技能」
 思っていたよりかなり反則的な能力。
「コード能力の強さも実質倍になるってわけか」
 本体エミィだけで放ったのだろう石つぶてや、分身エミィだけで放ったのだろう風圧に比べ、最初の風圧だけやたら強く感じた事を根拠とした推測。
「正解」
 あっさり認めたエミィ。
(本当に厄介な能力)
 けどふたつ。ふたつ気づいた。

(多分、確実なチャンスは1回)
 とりあえず分身の方に近づき風圧を放つ。
 分身の方を狙われ、不意をつかれたのか、風圧返しは分身エミィがとっさに行えただけ。しかし単体ならユイト側の方がやや強い。それが気づいたひとつめ。
 消える分身。直後、今度はすぐ背後に現れる分身。
 後は勘だった。
 どんな攻撃をしてくるにせよ、後ろに現れたのだから、多分、後ろから来るだろうと判断し、横から自分に風圧をぶつけ、その攻撃を避ける。
 そして予想は当たり、破裂した地面の破片は標的のいなくなった宙を舞う。
 気づいたもうひとつの事。二人で同時発動は、連続では出来ない。
 正確には、分身と共に能力を重ね合わせ、倍にする事ができるのは、瞬間まで精神が同一であった分身直後のみ。しかしそこまでは気づいてなくとも、結果は同じだった。

 予想よりあまりに速い切り返しへの焦りもあって、ちゃんと対応出来ず、ほとんどもろに風圧をくらう直前。エミィは負けとなった。
 そして彼女の中でも、ある疑念が芽生えた。

ーー

 放課後。

「間違いなくよ」
 解析アナライズに関しては非常によく知るところの、ミユが気づいた事。それは彼女が戦った相手、ガーディの能力。
解析アナライズじゃなかったわ。わたしの風に対してもユイト様みたいに相殺してるという感じではなかったし、多分無効化系の能力だと思う。とにかく解析アナライズではないわ」
「でも」
 そこで不安になるユイト。
「それは、おれも大丈夫かな? 戦いかたでバレたりしてないかな?」
「大丈夫だろ」
 即座にレイが言う。
「ミユは、わりと真面目に、これまでの全シミュレーション戦闘の九割くらいぼくとの対戦だしな。そりゃ解析アナライズだと想定して戦った相手が、それを使ってなかったら気づくよ」
「はい。だからあなたに関しては問題ないと思います。むしろあれだけ戦えるのに、本当は特殊技能を使っていないと知られたら、それこそレイが言ってた通り、強すぎて怪しまれるくらいです」

 しかし実際のところ、レイとミユは、楽観的すぎであった。

ーー

「多分、彼、解析アナライズじゃなかったよ。特殊技能」
 同居人でもある、年上だけど年下に見える上司の(少女にしか見えないけど)女性に、とりあえずそうかもしれないと思った事を報告するエミィ。
「それは、偽者かもしれないって事? というか、彼は一応、大がつくような貴族なんだし、影武者かしら?」
「うん、本物が、これまでずっと嘘ついてたんじゃないなら」
「何か、でもそれどころじゃないって感じね」
 さすがに鋭い上司。
 エミィはこくりと頷き、考えにくいけど、それしか考えられない事を、正直に伝えた。
「とりあえず彼ね。多分、解析アナライズじゃないというか、特殊技能を使ってなかったんだと思う。だからわたしは、特殊技能なしで負けちゃったって事になると思う」
「それは、確かに驚きね」
 エミィは決して戦闘が苦手な方ではない。むしろ確実に、同年代のコード能力者として、かなり強い部類に入るだろう。
「うん、ほんとに」
 そして苦笑いでエミィは続けた。
「とりあえず本物にしても、偽者にしても、アレはやばい、絶対。普通に、ほんとはめちゃくちゃ強いんだと思う」
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