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Ch1・令嬢たちの初恋と黒の陰謀
1ー2・王子が抱える問題
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この広い宇宙の中で、無限ともされる時空間の中に点在している大量の"惑星"の1つ。
生命が生まれた星、賢き生物であるヒトが文明を築いた世界。
惑星の表面の大地を構成するプレート構造。その活動の活発化、そのために一時は絶え間なかった災害の連鎖から逃れるために、人々が"空中都市"を開発し、多くの人が移り住んでから数千年くらい経つ。
今や惑星世界は決定的に二分されている。
ひとつは"地上世界"。地上に残された自然豊かな島々で、大規模な社会も高度な科学文明もなしで、静かに質素に暮らす人たちの領域。
もうひとつが"空中世界"。21の都市国家を中心とした、空に築かれた連合国。複雑に絡み合ういくつもの社会を形成し、高度な科学技術を有している領域。
ツキシロ家は、空中世界において21の都市国家のひとつ、"ミューテア"の上級貴族。レイはその若き当主だった。そして彼が、地上世界の島"アルケリ"の少年ユイトを訪ねるより10日ほど前。
「これは策略だな」
「そうね」
いったいどういう訳か、かなり深刻そうなレイに、ミユはかなり呆れ顔。
ふたりがいたのは執務室、ということにしている多用途の部屋で、一応それらしい机と椅子は用意された部屋。机の上も、ペンや小型ボックスタイプのパソコン、古くさいランプのアンティークと、なかなかそれっぽい。しかし本棚には、法学や政治学などの本に加えて、流行りの漫画や小説が混じっていて、床に無造作にVRゲームのソフトパッケージがいくつか転がってもいる。
「なあミユ、なんとか自然な形で退学とか」
「それは確実に無理」
伝統的な使用人家系で、レイと同世代かつ、同じくコード能力者であったため、幼い頃から彼の世話係としてミユは仕えてきた。基本的に彼女は、家柄からするとあるまじき自由奔放なレイに対して(毎度呆れながらも)イエスマンならぬイエスウーマンである。なので、彼女がレイに対して「無理」という時は、まさしく確実に無理な時。
「だいたいねレイ。あなたが、アズエルならいいぜ、なんてトキヤ様に言ったからこうなったんじゃない。かわいい子ばかりだしとか言って」
アズエル学園は、コード能力の様々な活用法の訓練をカリキュラムに取り入れた、コード能力者の専門校の中でもかなりの名門。そしてレイの事前調査曰く、女子のレベル(?)がかなり高い。
ほぼ1年前。
義務教育を終えたばかりのレイは、学園などダルいだけと進学する気はなかったが、叔父のトキヤに、アズエルへの進学を進められる。せっかくコード能力者なのだから、その専門校の名門の卒業は後々よいステータスになるはずだと。
だがそれは罠であった。
「だってまさか、こんなことあるなんて思うか?」
「何か怪しいってわたしは言ったじゃない」
「そういやそうだったな」
入学してから明らかになったことだが、アズエル学園の女子の情報をレイに流したのはトキヤであった。彼はある目的のために、レイをアズエルに入学させたかったのである。
結果、見事に策略にハマり、レイは入学を承諾してしまった。そして入学してしまったからには、中退はもちろん、理由なしの欠席すら大貴族としては大問題になる。そうなるとミユはもちろん、どれだけ多くの人に迷惑がかかるか。それくらいはレイにもわかっている。
「ていうか、だいたいフィオナが能力者だなんて知らなかったぞ。おまえは知ってたか?」
「あなたが知らないのにわたしが知るわけないじゃない。'婚約者'のあなたが知らないのに」
婚約者という部分をかなり強調したミユ。
レイには、貴族アルデラント家のフィオナという婚約者がいるが、いろいろ事情があって、ふたりはこれまでにほとんど面識すらない。そして彼女こそ、トキヤがレイをアズエルに入学させたい動機であり、レイが今あれこれと悩んでいる原因でもあった。
「しかしあのジジイ、いったいいつから企んでやがったんだろう」
「それは、フィオナ様がアズエルに入学を決めた時じゃない」
フィオナがまだレイの正式な婚約者でなく、候補であったある時。顔見せとしてふたりが出会ったパーティーにて、ふたりの間にある事があり、それから、ふたりは互いを避けるようになった。しかし、女の子を避けるというレイの行動は、逆に軟派な彼が本気になった証拠だとツキシロ家の関係者たちは考えた。
一方で、アルデラント家は下級貴族の家柄なので、ツキシロ家の申し出をありがたく受け入れ、ふたりは正式な婚約者になったのである。
だが、そもそも周囲が考えていたような理由でなく、普通に互いを避けていたふたりは、婚約者であるのに全く会いもしない。
フィオナの方など、信頼できる従者に事前チェックさせて、パーティなどの場で偶然に再会しないように図っていたりもしているくらい。そこでふたりの再会の場を提供するために、トキヤはレイをフィオナと同じ学校に入学するよう仕向けたわけである。
「いらないお節介すぎだ」
「まあこの件に関しては、本気で同意するわ」
「ああ、マジでどうすればいい? 後たった3週間だぞ」
ミューテアの学校は、基本的に一定成績以上を維持することで無登校を許可されている。しかしコード能力者の専門学校に限っては、実習が大量にあるので、登校を義務付けられているのが普通である。
アズエルは四年制で、一年目はシミュレータでの実績があれば、実習も免除される。しかし二年目からは、全ての生徒が必ず登校しなければならない事になっている。そしてその二年生になって最初の登校日は、もう3週間後に迫っていた。
「でももう諦めるしかないんじゃない。影武者がいるわ」
「そ、それだ、それ」
ミユとしては、まったくバカバカしい、適当なアイデアだったのだが、レイはそれにすかさず食いついた。
まさに、かなり必死であった。
「いや、あの、でも無理でしょ。あの学校の登録チェック、かなり厳しいし」
「地上世界の奴ならデータ登録されてないだろ。だからぼくと同じデータを偽装できるんじゃないか」
空中世界の住人は、生まれた時からセキュリティシステムへのデータ登録を義務付けられている。なのでどれだけそっくりな人物でも、しっかりと調べられたら必ずバレてしまう。だが地上世界の住人は、空中世界を訪れない限りデータ登録はされない。
「それは、可能だと思うけど」
セキュリティシステムの管理局にレイ自らが、そのデータを偽装する者の身元を保証すれば。
「でもフィオナ様、はむしろ大丈夫かもしれないけど、けど、あなたの顔も特殊技能もけっこう知られてるじゃない」
「顔はある程度似てたらいけるだろ。フィオナとはほとんど初対面みたいなものだし、写真でしかぼくを知らない奴らには加工とかなんとか言えばいい」
「特殊技能は?」
「その影武者くんに使わないでいてもらったらそれでいいだろ。どうせぼくの能力は使ってるのがわかるような類のものじゃない」
「いや、そうですけど」
確かにレイの特殊技能である"解析"は、使って、使っているとバレるようなものではない。
つまり使わないで、使っていないとバレるものでもない。
「しかしあなたの戦闘シミュレータの成績を特殊技能なしで出せるほどの人でないと」
《解析》は、実はかなり戦闘向きであり、レイの戦闘シミュレータでの成績は、なかなかのもの。
「あなたに似てて、特殊技能なしであなたくらい戦える人」
「それと、ぼくのふりしてでも、空中世界に来たがってくれるような奴だな」
そこが一番肝心とばかりに付け足すレイ。
「正直、探せるか?」
「正直、自信はないわよ」
しかし彼はすぐ見つかった。レイによく似た少年。
また、地上世界で探す以上、戦闘能力についてはあまり問題にならない事はすぐに判明した。空中世界の者からしたら原始人のような暮らしが営まれている地上世界は、治安も悪く、コード能力は護身のための強力な武器なので、必然的に戦闘慣れした者ばかりなのである。
むしろ問題は、空中世界は贅沢三昧の成金連中が支配する世界として嫌っている者がけっこういるらしい事だった。なのだが、ユイトはその点もクリアしていた。
ーー
「こいつ、完璧じゃん。これ運命だな、運命」
調査員が極秘に撮ってきた彼の写真は、レイによく似ていて、しかも調査資料には「近場のならず者が名前を聞いただけで、揃ってビビるほどに強い」などと書かれていた。
さらに、いつか空中世界に行ってみたい人たちのコミュニティに参加するほどに、空中世界に対して憧れを抱いているのだという。
「ただひとつ問題が」
そう、ユイトにはレイの影武者を頼む相手として、決定的に足りてない要素があった。
「彼が暮らしてるアルケリという島に調査員が直に訪ねたところ、どうやら島の住人で、異性、どころか彼と同世代の人自体、彼の妹くらいしかいなかったそうです」
アルケリ島は人口200人程度の小さな島で、ユイトは妹とふたり暮らし。
「言っておくけどね、サギ王子」
サギ王子。
いつからか、レイと関係を持ち、その後に目が覚めた女性たちを中心に囁かれるようになった彼の異名。
「断言するけど、彼にあなたのふりはきついわよ。彼、確実に女の子慣れしてないわよ」
そう、そういう事。
レイに会った事はなくとも、彼の悪癖は非常に有名である。それでも彼に落とされる女性が絶えないと畏怖されるほどだ。そんな彼のふりを、妹以外に女の子と話した事あるかも怪しいくらい、せまい社会に生きてきた少年が演じるなど、無謀もいいとこであろう。
「いや、むしろそれがいい。むしろこんな容姿なのに、ぼくみたいなのじゃなさそうでよかった」
「どんだけ容姿に自信あるのって呆れるべきかな?」
「いや、おまえは彼をサポートしてあげるべきだミユ。おまえならそれでも上手くやれるさ」
「いい感じに言うわね、こういう時だけ」
しかし呆れたような返しをしながら、ミユは本心では呆れない。
長い付き合いだから知ってる。本当に、兄妹のような存在だからよくわかっている。
レイの事。
「よし、じゃ会いに行こう。このユイトって奴に」
話は終わった、善は急げ、といった感じのレイ。
「まったく」
そして堪えきれずに、ミユは笑みをこぼした。
そういう事情で、ユイトは憧れていた空中世界に招待されることになったのだった。
──
"解析"(コード能力事典・特殊技能71)
五感により得た情報を、特殊な神経回路伝達と脳機能により、即座に整理、解析し、超高速で最適解を得る特殊技能。
わずかな不自然さすら感知し、隠されたものを見つけたりするのに非常に便利。また、わずかな範囲と時間限定ではあるが、擬似的な未来予知すら可能で、戦闘にも案外向く。
生命が生まれた星、賢き生物であるヒトが文明を築いた世界。
惑星の表面の大地を構成するプレート構造。その活動の活発化、そのために一時は絶え間なかった災害の連鎖から逃れるために、人々が"空中都市"を開発し、多くの人が移り住んでから数千年くらい経つ。
今や惑星世界は決定的に二分されている。
ひとつは"地上世界"。地上に残された自然豊かな島々で、大規模な社会も高度な科学文明もなしで、静かに質素に暮らす人たちの領域。
もうひとつが"空中世界"。21の都市国家を中心とした、空に築かれた連合国。複雑に絡み合ういくつもの社会を形成し、高度な科学技術を有している領域。
ツキシロ家は、空中世界において21の都市国家のひとつ、"ミューテア"の上級貴族。レイはその若き当主だった。そして彼が、地上世界の島"アルケリ"の少年ユイトを訪ねるより10日ほど前。
「これは策略だな」
「そうね」
いったいどういう訳か、かなり深刻そうなレイに、ミユはかなり呆れ顔。
ふたりがいたのは執務室、ということにしている多用途の部屋で、一応それらしい机と椅子は用意された部屋。机の上も、ペンや小型ボックスタイプのパソコン、古くさいランプのアンティークと、なかなかそれっぽい。しかし本棚には、法学や政治学などの本に加えて、流行りの漫画や小説が混じっていて、床に無造作にVRゲームのソフトパッケージがいくつか転がってもいる。
「なあミユ、なんとか自然な形で退学とか」
「それは確実に無理」
伝統的な使用人家系で、レイと同世代かつ、同じくコード能力者であったため、幼い頃から彼の世話係としてミユは仕えてきた。基本的に彼女は、家柄からするとあるまじき自由奔放なレイに対して(毎度呆れながらも)イエスマンならぬイエスウーマンである。なので、彼女がレイに対して「無理」という時は、まさしく確実に無理な時。
「だいたいねレイ。あなたが、アズエルならいいぜ、なんてトキヤ様に言ったからこうなったんじゃない。かわいい子ばかりだしとか言って」
アズエル学園は、コード能力の様々な活用法の訓練をカリキュラムに取り入れた、コード能力者の専門校の中でもかなりの名門。そしてレイの事前調査曰く、女子のレベル(?)がかなり高い。
ほぼ1年前。
義務教育を終えたばかりのレイは、学園などダルいだけと進学する気はなかったが、叔父のトキヤに、アズエルへの進学を進められる。せっかくコード能力者なのだから、その専門校の名門の卒業は後々よいステータスになるはずだと。
だがそれは罠であった。
「だってまさか、こんなことあるなんて思うか?」
「何か怪しいってわたしは言ったじゃない」
「そういやそうだったな」
入学してから明らかになったことだが、アズエル学園の女子の情報をレイに流したのはトキヤであった。彼はある目的のために、レイをアズエルに入学させたかったのである。
結果、見事に策略にハマり、レイは入学を承諾してしまった。そして入学してしまったからには、中退はもちろん、理由なしの欠席すら大貴族としては大問題になる。そうなるとミユはもちろん、どれだけ多くの人に迷惑がかかるか。それくらいはレイにもわかっている。
「ていうか、だいたいフィオナが能力者だなんて知らなかったぞ。おまえは知ってたか?」
「あなたが知らないのにわたしが知るわけないじゃない。'婚約者'のあなたが知らないのに」
婚約者という部分をかなり強調したミユ。
レイには、貴族アルデラント家のフィオナという婚約者がいるが、いろいろ事情があって、ふたりはこれまでにほとんど面識すらない。そして彼女こそ、トキヤがレイをアズエルに入学させたい動機であり、レイが今あれこれと悩んでいる原因でもあった。
「しかしあのジジイ、いったいいつから企んでやがったんだろう」
「それは、フィオナ様がアズエルに入学を決めた時じゃない」
フィオナがまだレイの正式な婚約者でなく、候補であったある時。顔見せとしてふたりが出会ったパーティーにて、ふたりの間にある事があり、それから、ふたりは互いを避けるようになった。しかし、女の子を避けるというレイの行動は、逆に軟派な彼が本気になった証拠だとツキシロ家の関係者たちは考えた。
一方で、アルデラント家は下級貴族の家柄なので、ツキシロ家の申し出をありがたく受け入れ、ふたりは正式な婚約者になったのである。
だが、そもそも周囲が考えていたような理由でなく、普通に互いを避けていたふたりは、婚約者であるのに全く会いもしない。
フィオナの方など、信頼できる従者に事前チェックさせて、パーティなどの場で偶然に再会しないように図っていたりもしているくらい。そこでふたりの再会の場を提供するために、トキヤはレイをフィオナと同じ学校に入学するよう仕向けたわけである。
「いらないお節介すぎだ」
「まあこの件に関しては、本気で同意するわ」
「ああ、マジでどうすればいい? 後たった3週間だぞ」
ミューテアの学校は、基本的に一定成績以上を維持することで無登校を許可されている。しかしコード能力者の専門学校に限っては、実習が大量にあるので、登校を義務付けられているのが普通である。
アズエルは四年制で、一年目はシミュレータでの実績があれば、実習も免除される。しかし二年目からは、全ての生徒が必ず登校しなければならない事になっている。そしてその二年生になって最初の登校日は、もう3週間後に迫っていた。
「でももう諦めるしかないんじゃない。影武者がいるわ」
「そ、それだ、それ」
ミユとしては、まったくバカバカしい、適当なアイデアだったのだが、レイはそれにすかさず食いついた。
まさに、かなり必死であった。
「いや、あの、でも無理でしょ。あの学校の登録チェック、かなり厳しいし」
「地上世界の奴ならデータ登録されてないだろ。だからぼくと同じデータを偽装できるんじゃないか」
空中世界の住人は、生まれた時からセキュリティシステムへのデータ登録を義務付けられている。なのでどれだけそっくりな人物でも、しっかりと調べられたら必ずバレてしまう。だが地上世界の住人は、空中世界を訪れない限りデータ登録はされない。
「それは、可能だと思うけど」
セキュリティシステムの管理局にレイ自らが、そのデータを偽装する者の身元を保証すれば。
「でもフィオナ様、はむしろ大丈夫かもしれないけど、けど、あなたの顔も特殊技能もけっこう知られてるじゃない」
「顔はある程度似てたらいけるだろ。フィオナとはほとんど初対面みたいなものだし、写真でしかぼくを知らない奴らには加工とかなんとか言えばいい」
「特殊技能は?」
「その影武者くんに使わないでいてもらったらそれでいいだろ。どうせぼくの能力は使ってるのがわかるような類のものじゃない」
「いや、そうですけど」
確かにレイの特殊技能である"解析"は、使って、使っているとバレるようなものではない。
つまり使わないで、使っていないとバレるものでもない。
「しかしあなたの戦闘シミュレータの成績を特殊技能なしで出せるほどの人でないと」
《解析》は、実はかなり戦闘向きであり、レイの戦闘シミュレータでの成績は、なかなかのもの。
「あなたに似てて、特殊技能なしであなたくらい戦える人」
「それと、ぼくのふりしてでも、空中世界に来たがってくれるような奴だな」
そこが一番肝心とばかりに付け足すレイ。
「正直、探せるか?」
「正直、自信はないわよ」
しかし彼はすぐ見つかった。レイによく似た少年。
また、地上世界で探す以上、戦闘能力についてはあまり問題にならない事はすぐに判明した。空中世界の者からしたら原始人のような暮らしが営まれている地上世界は、治安も悪く、コード能力は護身のための強力な武器なので、必然的に戦闘慣れした者ばかりなのである。
むしろ問題は、空中世界は贅沢三昧の成金連中が支配する世界として嫌っている者がけっこういるらしい事だった。なのだが、ユイトはその点もクリアしていた。
ーー
「こいつ、完璧じゃん。これ運命だな、運命」
調査員が極秘に撮ってきた彼の写真は、レイによく似ていて、しかも調査資料には「近場のならず者が名前を聞いただけで、揃ってビビるほどに強い」などと書かれていた。
さらに、いつか空中世界に行ってみたい人たちのコミュニティに参加するほどに、空中世界に対して憧れを抱いているのだという。
「ただひとつ問題が」
そう、ユイトにはレイの影武者を頼む相手として、決定的に足りてない要素があった。
「彼が暮らしてるアルケリという島に調査員が直に訪ねたところ、どうやら島の住人で、異性、どころか彼と同世代の人自体、彼の妹くらいしかいなかったそうです」
アルケリ島は人口200人程度の小さな島で、ユイトは妹とふたり暮らし。
「言っておくけどね、サギ王子」
サギ王子。
いつからか、レイと関係を持ち、その後に目が覚めた女性たちを中心に囁かれるようになった彼の異名。
「断言するけど、彼にあなたのふりはきついわよ。彼、確実に女の子慣れしてないわよ」
そう、そういう事。
レイに会った事はなくとも、彼の悪癖は非常に有名である。それでも彼に落とされる女性が絶えないと畏怖されるほどだ。そんな彼のふりを、妹以外に女の子と話した事あるかも怪しいくらい、せまい社会に生きてきた少年が演じるなど、無謀もいいとこであろう。
「いや、むしろそれがいい。むしろこんな容姿なのに、ぼくみたいなのじゃなさそうでよかった」
「どんだけ容姿に自信あるのって呆れるべきかな?」
「いや、おまえは彼をサポートしてあげるべきだミユ。おまえならそれでも上手くやれるさ」
「いい感じに言うわね、こういう時だけ」
しかし呆れたような返しをしながら、ミユは本心では呆れない。
長い付き合いだから知ってる。本当に、兄妹のような存在だからよくわかっている。
レイの事。
「よし、じゃ会いに行こう。このユイトって奴に」
話は終わった、善は急げ、といった感じのレイ。
「まったく」
そして堪えきれずに、ミユは笑みをこぼした。
そういう事情で、ユイトは憧れていた空中世界に招待されることになったのだった。
──
"解析"(コード能力事典・特殊技能71)
五感により得た情報を、特殊な神経回路伝達と脳機能により、即座に整理、解析し、超高速で最適解を得る特殊技能。
わずかな不自然さすら感知し、隠されたものを見つけたりするのに非常に便利。また、わずかな範囲と時間限定ではあるが、擬似的な未来予知すら可能で、戦闘にも案外向く。
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