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綾音の目的
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テーブルに突っ伏したままで動かない宗助に綾音は苦笑。
(やりすぎてしまったかしら)
初対面の相手に結婚を申し込んできた宗助だが、綾音からの行動、対応に弱い。荒くれ者とされるハンターにしては、彼は礼儀正しい。それは育ちの故なのだろうか、と綾音は考える。
(宗助さんの身なりや考え方。おまけに身内に竜の従魔師……)
おそらく国に関わる、上層部にあたる武官の一族だと綾音は推測している。
気性が激しく、手懐け難しいとされる魔獣を従えされることができる従魔師はどこの国であろうと、将来が約束された職業。その中で最も使役が難しい、気性が荒い魔獣、竜の従魔師は国の最高戦力とされる。
その身内がいる時点で、宗助が一般庶民の産まれだと思えない。
「大丈夫ですか?宗助さん」
「……ああ、大丈夫………」
なんとか復活した宗助の返事は、弱弱しい。そして、宗助の顔は覚悟を決めていた。
どうしたのだろうかと綾音が不思議に思っていると、宗助は最後の一個、ジャムタルトを手に取った。
「………もう一個食べるか?」
宗助から差し出されたジャムタルトに綾音は目を瞬かせた。
もう一度チャレンジする宗助に、女性客達は心の中で拍手と声援を送る。追跡組の三人、女性陣はニマニマと笑う。ニールもようやるな、と感心。
恥ずかしながらも真っ直ぐにジャムタルトを差し出す宗助に綾音はさてどうするかと考える。もう一度食べさせてもらうのも悪くはないが、それではたらないかもしれない。
「いえ、お腹がいっぱいなので」
「……そうか」
綾音に断られて、露骨に落ち込む宗助。見ていた女性客は宗助に同情、断った綾音に少しばかりの非難を向ける。
断られた宗助は持っていたジャムタルトを食べる気にはなれなかったので、ジャムタルトを皿に戻そうとした。
「あ、えっ?」
ジャムタルトを持つ宗助の手に、綾音の手が触れる。突然のことに戸惑う宗助の手からジャムタルトを、綾音は取った。そして。
「はい、あ~ん」
取ったジャムタルトを、綾音は宗助に差し出す。
綾音があ~んしてくれている、そんなチャンスを逃す訳にはいかない。宗助は綾音が差し出したジャムタルトに食いついた。
雛鳥のように小さく小さく大切にジャムタルトを食べる宗助に、可愛いと綾音は楽しそう。そして、ジャムタルトを食べ終えた宗助に、綾音は一番の笑顔で聞いた。
「美味しかったですか?」
「………うん。おいしい…………」
そう言った宗助は、またテーブルに突っ伏した。綾音に振り回される宗助に、女性客は温かな目を向ける。
そんな女性客からの反応を確認した綾音は、視線を窓へ向けた。窓の外、通行人がこちらをチラチラと見ながら通りすがる様子が、よく見える。綾音と宗助が座った時よりも通行人が多いのは、気のせいではない。
いや、そうでなくては困る。わざわざ窓側の、外から店の中が見ることができる席に、綾音は座ったのだ。
綾音は他の人に注目される、辺境都市の噂になるように仕掛けた。だから、かかってもらわなければ困る。
テーブルに突っ伏す宗助は、鋭い目で綾音が、窓の外を見ていることに気がついていなかった。
(やりすぎてしまったかしら)
初対面の相手に結婚を申し込んできた宗助だが、綾音からの行動、対応に弱い。荒くれ者とされるハンターにしては、彼は礼儀正しい。それは育ちの故なのだろうか、と綾音は考える。
(宗助さんの身なりや考え方。おまけに身内に竜の従魔師……)
おそらく国に関わる、上層部にあたる武官の一族だと綾音は推測している。
気性が激しく、手懐け難しいとされる魔獣を従えされることができる従魔師はどこの国であろうと、将来が約束された職業。その中で最も使役が難しい、気性が荒い魔獣、竜の従魔師は国の最高戦力とされる。
その身内がいる時点で、宗助が一般庶民の産まれだと思えない。
「大丈夫ですか?宗助さん」
「……ああ、大丈夫………」
なんとか復活した宗助の返事は、弱弱しい。そして、宗助の顔は覚悟を決めていた。
どうしたのだろうかと綾音が不思議に思っていると、宗助は最後の一個、ジャムタルトを手に取った。
「………もう一個食べるか?」
宗助から差し出されたジャムタルトに綾音は目を瞬かせた。
もう一度チャレンジする宗助に、女性客達は心の中で拍手と声援を送る。追跡組の三人、女性陣はニマニマと笑う。ニールもようやるな、と感心。
恥ずかしながらも真っ直ぐにジャムタルトを差し出す宗助に綾音はさてどうするかと考える。もう一度食べさせてもらうのも悪くはないが、それではたらないかもしれない。
「いえ、お腹がいっぱいなので」
「……そうか」
綾音に断られて、露骨に落ち込む宗助。見ていた女性客は宗助に同情、断った綾音に少しばかりの非難を向ける。
断られた宗助は持っていたジャムタルトを食べる気にはなれなかったので、ジャムタルトを皿に戻そうとした。
「あ、えっ?」
ジャムタルトを持つ宗助の手に、綾音の手が触れる。突然のことに戸惑う宗助の手からジャムタルトを、綾音は取った。そして。
「はい、あ~ん」
取ったジャムタルトを、綾音は宗助に差し出す。
綾音があ~んしてくれている、そんなチャンスを逃す訳にはいかない。宗助は綾音が差し出したジャムタルトに食いついた。
雛鳥のように小さく小さく大切にジャムタルトを食べる宗助に、可愛いと綾音は楽しそう。そして、ジャムタルトを食べ終えた宗助に、綾音は一番の笑顔で聞いた。
「美味しかったですか?」
「………うん。おいしい…………」
そう言った宗助は、またテーブルに突っ伏した。綾音に振り回される宗助に、女性客は温かな目を向ける。
そんな女性客からの反応を確認した綾音は、視線を窓へ向けた。窓の外、通行人がこちらをチラチラと見ながら通りすがる様子が、よく見える。綾音と宗助が座った時よりも通行人が多いのは、気のせいではない。
いや、そうでなくては困る。わざわざ窓側の、外から店の中が見ることができる席に、綾音は座ったのだ。
綾音は他の人に注目される、辺境都市の噂になるように仕掛けた。だから、かかってもらわなければ困る。
テーブルに突っ伏す宗助は、鋭い目で綾音が、窓の外を見ていることに気がついていなかった。
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