影の中で

すなみ やかり

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「あなたは…誰なの?」

その時、ビーッビーッビーッビーッ!!と緊急事態のアラームがなった。
りなはその場所へ少し振り返りながら走り去った。

「…り、な?」

少年は細い声を出した。
焼印のある頬に涙が流れる。
その夜、りなは少年のデータを見ていた。
そして、りなは目を疑った。

『…りなという子を拾い育てていた。だが、捕まったため保護された。▷▷家で育てられた。』

「…▷▷家?」

りなの家族の家だ。
りなは少年のデータを隅々まで見て、顔色を変えた。

「もしかして…お兄ちゃんがいたの…?」

りなは気づいたのだ。

「お兄ちゃん…」

りなはほんの少しだけ覚えている少年の叫び声を思い出した。
りなを守りたい一心で叫んだ最後の言葉。
次の日。りなは少年のいる部屋へ朝早くから向かった。

「りな…」

少年がりなを呼ぶ。
りなは牢屋の扉を開け、少年の隣にきた。
少年はベッドから起き上がり、りなに抱きつく。

「お兄ちゃん…なんだね」

「り、な…」

少年の目からは涙がとまらなかった。

「きて、くれたんだ…」

少年はそんなことをつぶやいた。少年がりなを抱きしめていた力が弱くなる。

「だいすきだよ…」

少年の体は冷たく、動かなくなった。
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