2 / 7
第一話 前編
しおりを挟む
「ユーラフ。何か作ってくれないか?」
俺はユーラフに食事を作ってもらうよう声をかけ、目を覚ました魔族に食事を与えることにする。
生物の魔力を吸収する魔族が調理されたものを食べるのかはわからないが、かなり弱っているのはわかる。
「わかったわ」
ユーラフが魔族を抱えて立たせてから手をつないで部屋からでて行き、それに続いてグリも部屋をでて行き一階に降りていく。
俺も部屋をでてドアを締めようとノブに手をかける、部屋の中に残った魔族の強い魔力を感じて、今は敵意を感じないが子供だからといって油断はできない、しばらくは警戒しながら様子を見るしかないと思った。
気づけば強く拳を握っていた。
捨てられた魔族と同じ境遇のユーラフに気を使ったが、正直俺の家族や友人を殺した魔族に対しては憎しみしかない。
だが魔族にとっても魔族を殺している俺は憎しみの対象のはずであり同じことを思われてもしかたない、かといって簡単に割り切れる事でもないがこれを期に魔族への考え方を改めるいい機会なのかもしれない。
殺しあわなくてもいいならそれに越したことはない、俺の知らない奴が死ぬぶんにはなんとも思わないが、俺が大切思っている人の死ぬリスクが下がることはいい事だ。
魔族については知らないが同じ風に考えてくれるならいいなと思う。
ドアを閉め下に降りるとユーラフはダイニング内のキッチンで調理をはじめていて、グリと魔族はテーブルに付き、グリが話しかけているが魔族は頷いたりするだけで会話が成り立っていなかった、もしかして人類語は理解できるが、しゃべることができないのか。
まあ、それでも仲良くしようとすることはいいことだ、俺は一階にある自室に戻り肩と腰につけているブロンズアーマーを外し防具立てにかける。
窓から外をみるとグリの張った結界と、その先にある隣の拠点の結界が見える。
襲撃に備えて結界を張るのが珍しい事じゃなく日常的な事なのが助かる。
だが、あの魔族をかくまいながらこの家で生活するのは難しいな、結界も一週間程で効力を失ってしまうし今回と同規模の結界を毎回張るわけにもいかないだろう、結界に使った石の金もグリの負担も小さくはない、そうなると引っ越しをするしかないが、周りに人がいなくて4人で住める物件が必要だ。
この街ヘイレンにそんな物件あったかな、ユーラフに相談しようと思ったが俺よりこの街にいる期間が短いユーラフに聞いても仕方ない、グリの方が知ってそうだが空き家があるかどうか気にしながら街で過ごしてる可能性は低いだろう、後で街に出かけるたびに空き家を気にしてくれと言ってもいいが、みつかるまで時間がかかりそうだ、それなら素直にギルドの運営に聞くか探してもらった方が早いか。
考えがまとまらないまま俺はグリ達のいるダイニングに向かう、テーブルには料理が並べられておりグリと魔族は食事を始めている。
使った調理器具を洗っているユーラフの横に行き、洗われた食器を乾いた布で拭き定位置に置いていく。
「ラテリー。冷める前に食べたら?」
ユーラフは手を止めず俺に食事を進めてくるが。
「一緒に食おう」
と、声をかける。
食事を作ってもらって一人だけ遅れて食べてもらうのは気が引ける。
それに対しユーラフは。
「うん」
と、返答し片づけを続ける。
そんなに量も無いので片付けはすぐに終わりユーラフと共に席に着く、そして腰の袋から1レルク取り出しユーラフに手渡す。
「いつもありがとうな」
俺達のルールで家事をやってくれた者に1レルク渡すことになっている。
「うん」
グリとグリの前に魔族、その横に俺、俺の向かいにユーラフが座っている。
空席が無く、四人で座るとこんな感じなんだなと横でもくもくと食事をしている魔族をみながら思った。
「ユーラフとグリ、引っ越しを考えているんだが、二人の意見を聞きたい」
食べながらで良かったのだが、二人とも手を止め俺を見る。
「そうね。この家じゃこの子を外に出すわけにはいかないものね」
「俺の結界も一週間持つかわからないよ」
「どこかにいい物件があればいいんだが」
スープをひと匙分口に入れる、相変わらずユーラフの作る料理は美味い。
「市壁外の森に空き家があったはず」
「あった! けっこういい家だったよ」
その空き家が誰が所有なのかわからないが、一度見に行ってみるか。
「その空き家、一度見に行ってみる。よさそうならギルドに所有者を調べてもらって引っ越しをしよう」
「ええ。いいと思うわ。市壁からそんなに離れていないし、周りに住んでいる人もいないし」
「よし。決まりだな、明日の朝一で行ってくる」
「お願いね。私はこの子の服を買いに行ってくるわ」
そうだな、俺もぼろぼろの布切れ一枚をまとった恰好は可哀想だと思う。
10レルク取り出しユーラフに渡す、安い服なら二着は買えるはず。
「俺も出すよ!」
グリも10レルク取り出し手渡す。
「私も10レルクだして全部で30レルクね。そこそこいい服が買えそうね」
話し合いも終わり俺とユーラフで食器を片付け始める。
「俺は、グリュン・エルゴ。君の名前は?」
グリが魔族に自己紹介をしているが、たどたどしい言葉づかいで魔族は名前が無いと言った。
食器の片づけを終え、白い皿を一枚持ちグリと魔族と共にリビングへと移動する。
ユーラフが紅茶を入れてくれているので、俺はリビングにあるチェストの中からチーズとクッキーを取り出し皿に乗せ、ソファーに囲まれた丸いテーブルに置く、ティーカップとポットを木のトレイに乗せてユーラフがリビングに入ってくる。
ポットを受け取り、置かれたティーカップに注いでいきその時にいい匂いがする。
魔族がテーブルの縁から顔を覗かせ見ている。
「紅茶が気になるのか?」
視線をティーカップからそらさずに、小さくうなずく。
「熱いからゆっくり飲めよ」
ティーカップを魔族の前に置くとゆっくりとカップを持ち口に入れる。
特に表情は変わらないがゆっくりと紅茶と飲み続けている。
空になったカップを俺に差し出してくる。
「飲むか?」
魔族は小さくうなずく。
差し出されたカップに紅茶を注ぐとさっきと同じようにゆっくりと飲み始める、どうやら気にったらしい。
俺はユーラフに食事を作ってもらうよう声をかけ、目を覚ました魔族に食事を与えることにする。
生物の魔力を吸収する魔族が調理されたものを食べるのかはわからないが、かなり弱っているのはわかる。
「わかったわ」
ユーラフが魔族を抱えて立たせてから手をつないで部屋からでて行き、それに続いてグリも部屋をでて行き一階に降りていく。
俺も部屋をでてドアを締めようとノブに手をかける、部屋の中に残った魔族の強い魔力を感じて、今は敵意を感じないが子供だからといって油断はできない、しばらくは警戒しながら様子を見るしかないと思った。
気づけば強く拳を握っていた。
捨てられた魔族と同じ境遇のユーラフに気を使ったが、正直俺の家族や友人を殺した魔族に対しては憎しみしかない。
だが魔族にとっても魔族を殺している俺は憎しみの対象のはずであり同じことを思われてもしかたない、かといって簡単に割り切れる事でもないがこれを期に魔族への考え方を改めるいい機会なのかもしれない。
殺しあわなくてもいいならそれに越したことはない、俺の知らない奴が死ぬぶんにはなんとも思わないが、俺が大切思っている人の死ぬリスクが下がることはいい事だ。
魔族については知らないが同じ風に考えてくれるならいいなと思う。
ドアを閉め下に降りるとユーラフはダイニング内のキッチンで調理をはじめていて、グリと魔族はテーブルに付き、グリが話しかけているが魔族は頷いたりするだけで会話が成り立っていなかった、もしかして人類語は理解できるが、しゃべることができないのか。
まあ、それでも仲良くしようとすることはいいことだ、俺は一階にある自室に戻り肩と腰につけているブロンズアーマーを外し防具立てにかける。
窓から外をみるとグリの張った結界と、その先にある隣の拠点の結界が見える。
襲撃に備えて結界を張るのが珍しい事じゃなく日常的な事なのが助かる。
だが、あの魔族をかくまいながらこの家で生活するのは難しいな、結界も一週間程で効力を失ってしまうし今回と同規模の結界を毎回張るわけにもいかないだろう、結界に使った石の金もグリの負担も小さくはない、そうなると引っ越しをするしかないが、周りに人がいなくて4人で住める物件が必要だ。
この街ヘイレンにそんな物件あったかな、ユーラフに相談しようと思ったが俺よりこの街にいる期間が短いユーラフに聞いても仕方ない、グリの方が知ってそうだが空き家があるかどうか気にしながら街で過ごしてる可能性は低いだろう、後で街に出かけるたびに空き家を気にしてくれと言ってもいいが、みつかるまで時間がかかりそうだ、それなら素直にギルドの運営に聞くか探してもらった方が早いか。
考えがまとまらないまま俺はグリ達のいるダイニングに向かう、テーブルには料理が並べられておりグリと魔族は食事を始めている。
使った調理器具を洗っているユーラフの横に行き、洗われた食器を乾いた布で拭き定位置に置いていく。
「ラテリー。冷める前に食べたら?」
ユーラフは手を止めず俺に食事を進めてくるが。
「一緒に食おう」
と、声をかける。
食事を作ってもらって一人だけ遅れて食べてもらうのは気が引ける。
それに対しユーラフは。
「うん」
と、返答し片づけを続ける。
そんなに量も無いので片付けはすぐに終わりユーラフと共に席に着く、そして腰の袋から1レルク取り出しユーラフに手渡す。
「いつもありがとうな」
俺達のルールで家事をやってくれた者に1レルク渡すことになっている。
「うん」
グリとグリの前に魔族、その横に俺、俺の向かいにユーラフが座っている。
空席が無く、四人で座るとこんな感じなんだなと横でもくもくと食事をしている魔族をみながら思った。
「ユーラフとグリ、引っ越しを考えているんだが、二人の意見を聞きたい」
食べながらで良かったのだが、二人とも手を止め俺を見る。
「そうね。この家じゃこの子を外に出すわけにはいかないものね」
「俺の結界も一週間持つかわからないよ」
「どこかにいい物件があればいいんだが」
スープをひと匙分口に入れる、相変わらずユーラフの作る料理は美味い。
「市壁外の森に空き家があったはず」
「あった! けっこういい家だったよ」
その空き家が誰が所有なのかわからないが、一度見に行ってみるか。
「その空き家、一度見に行ってみる。よさそうならギルドに所有者を調べてもらって引っ越しをしよう」
「ええ。いいと思うわ。市壁からそんなに離れていないし、周りに住んでいる人もいないし」
「よし。決まりだな、明日の朝一で行ってくる」
「お願いね。私はこの子の服を買いに行ってくるわ」
そうだな、俺もぼろぼろの布切れ一枚をまとった恰好は可哀想だと思う。
10レルク取り出しユーラフに渡す、安い服なら二着は買えるはず。
「俺も出すよ!」
グリも10レルク取り出し手渡す。
「私も10レルクだして全部で30レルクね。そこそこいい服が買えそうね」
話し合いも終わり俺とユーラフで食器を片付け始める。
「俺は、グリュン・エルゴ。君の名前は?」
グリが魔族に自己紹介をしているが、たどたどしい言葉づかいで魔族は名前が無いと言った。
食器の片づけを終え、白い皿を一枚持ちグリと魔族と共にリビングへと移動する。
ユーラフが紅茶を入れてくれているので、俺はリビングにあるチェストの中からチーズとクッキーを取り出し皿に乗せ、ソファーに囲まれた丸いテーブルに置く、ティーカップとポットを木のトレイに乗せてユーラフがリビングに入ってくる。
ポットを受け取り、置かれたティーカップに注いでいきその時にいい匂いがする。
魔族がテーブルの縁から顔を覗かせ見ている。
「紅茶が気になるのか?」
視線をティーカップからそらさずに、小さくうなずく。
「熱いからゆっくり飲めよ」
ティーカップを魔族の前に置くとゆっくりとカップを持ち口に入れる。
特に表情は変わらないがゆっくりと紅茶と飲み続けている。
空になったカップを俺に差し出してくる。
「飲むか?」
魔族は小さくうなずく。
差し出されたカップに紅茶を注ぐとさっきと同じようにゆっくりと飲み始める、どうやら気にったらしい。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる