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プロローグ
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魔王と人類との戦いから400年が経った頃、七十年過ごした村から私は追い出された。
理由は人類種の絶滅を目的としている魔王の手によって、エルフという人種が根絶やしにされる前に別次元ヴェルオ・ガーベルへ移住する際、魔法が使えない私を異端者と呼び、ヴェルオ・ガーベルへの移住を認められなかったからだ。
母も父も兄もそんな私を一族の恥とし救いの手を差し伸べることはなかった。
だけど私は恨んではいない、何故ならそのおかげで私は大切な人たちと出会うことができたからだ。
私はユーラフ・ティルバージュ、魔法の使えないエルフで魔王を倒した冒険者ラテリー・ロンドの仲間だ。
[プロローグ]
仕事を探しにギルドを訪れていた私は、棚に置かれた膨大な羊皮紙に書かれた依頼を吟味していたが、
疲れてしまい窓際のベンチに腰をかけ、外を眺めている。
「ユーラフ、少しいいか?」
ヒューマンであり、私が組んでいる冒険者のラテリー・ロンドがなにやら悩んだ表情で私に話しかけてくる。
こやつのこういう表情の時は、ろくでもない事があるとここ一年の付き合いでわかっているが、行き場所のない私には拒否権がない。
「ラテリーどうしたの?」
「ここじゃ話しづらい、拠点に来てくれ」
拠点とは上位冒険者に与えられる一軒家の事だ
そこに私含む三人で暮らしている。
普段隠し事等を苦手とするこの筋肉男がこういうのだから、かなりの話なんだろう。
私もある程度身構えていた方がいいな。
今までで一番酷かった事はドラゴンをたった三人で討伐しに行ったことかな、あれは本当に死にかけた。
ラテリーと共にギルドを後にし拠点に向かう。
この街はギルドに登録している守護者が多く、子供は少ないがとても賑やかで屋台店がそこら中に見られる。
「エルフさん、この果物はいらないかい?」
屋台店を通るたびに商品を進められるのがとても困るが、活気があっていいと思う。
何も買わないが。
ちなみに、買う意思が無い時は返事をしないのが暗黙のルールだ。
数分後、市壁のそばにある二階建ての家が見えてくる。
ここが拠点だ。
拠点のそばには他の冒険者の拠点も見られるが、庭が広いためお互いに干渉することは少なくせいぜい挨拶をかわすぐらいだ。
ラテリーから先に拠点に入り、続いて私も入る。
「!」
家の中は物理的には変わった様子はないが、黒い魔力の痕跡があちらこちらから感じられる。
痕跡を魔力でたどり二階の使っていない部屋から、この黒い魔力の元がいることを感じる。
「ラテリーどういうことかな?」
「さすがエルフ、よく気付いたな」
すっとぼけた様子で答えるラテリーをぶん殴るのは後にしてまずは話を聞こう。
「いつも言っているだろう、魔法が使えないんじゃなく放出できないだけ。探知ぐらいならできる。それより、説明。してくれるかな?」
「おう」
「ラテリー、ユーラフお帰り」
二階に続く階段から、朗らかな笑みを浮かべた少年、グリュン・エルゴが降りてくる。
「グリ。あの子は?」
「見張ってたけど、全然起きないよ」
「そうか」
「そうかじゃないんだけど」
「そうだった」
ラテリーによると森に魔獣を狩りに行った際、倒れている魔族の少女を拾ってきたとざっくり説明された。
「拾ってきたって魔族なんでしょ? 今、私たち人類が何と戦っているか知っていますか? ラテリーさん」
「知っているが、子供をそのまま放置ってわけにはいかないし、あのままにして置いたら他の守護者に殺されていたかもしれない」
呆れてものが言えなかった。
確かに子供を見捨てるような男ではないがよりにもよって魔族とは、見た目は子供かもしれないが実年齢が何歳かも知らないだろうに。
「私達エルフと同じように魔族も超長寿で、見た目が子供でもラテリーより年上かもしれないんだけど、それでも子供だと言い張るのかしら?」
「何歳とかは関係ないだろ? ユーラフにしたって俺達ヒューマンからしたら年寄りだが、実際は子供みたいなものだろう?」
これに関しては言い返せない、私達はエルフの中でも古代種と呼ばれる存在で、三千年以上生きるし、個体差はあるが一万年以上生きた者もいる。
ヒューマン換算したら私はまだ赤ん坊と言っても過言ではない。
「言いたいことはわかるけど、それでも魔族なんでしょ?」
「まあ、そういうなよ。もし何かあったら俺が責任持つよ」
でたいつものセリフが、何かあるごとにこやつは責任を持つという。
まあ、いつも責任をとっている実績があるから文句が言えない。
私もこいつの責任のおかげで今ここにいる。
「わかったわ。とりあえず見せて。あと」
私は、腰にぶら下げている袋から、白い宝石を四つとりだしグリュンに手渡す。
「悪いんだけど、家の周りだけじゃなくて、敷地の角から結界をはってくれる?」
グリュンは、子供だが大人顔負けの神仰者で結界と回復がとても上手い。
媒体がなくてもいい結界をはれるが、万が一のために結界を強化する宝石を使ってもらう。
「わかった! あの子の魔力強いから漏れたらこまるしね」
「ありがとう」
グリュンはすぐに家を出ていき、ラテリーと二階にあがる。
黒い魔力が漏れ出す部屋のドアを開け中に入ると、床で寝ている魔族の少女が目に入る。
山羊の角、小さく赤い翼、この時点で上位の魔族で生後数年だとわかる、あとは瞳の色次第で魔王種なのか判別できる。
「ラテリーこの子の瞳の色は確認した?」
「いや、一度も起きていないから確認はしていない」
「この子、上位の魔族よ」
「そうなのか?」
一瞬ラテリーの魔力が引き締まるの感じる。
上位魔族と聞いて警戒したのだろう。
それにしてもおかしい。
魔王を倒したのだから魔族はもう生まれないはず、もしかして他の魔王がいるのだろうか。
「でも、子供というのは当たりね。十年以上生きた魔族なら覚醒して翼がもっと大きくなっているはず、角も小さいしね」
「そうか」
ラテリーは安堵の表情を浮かべているがまだ安心はできない、目を覚ました瞬間私たちに攻撃してこない保証はどこにもないのだから。
グリュンが結界を張ったのを感知したのでこの魔族の少女を起こすことにする。
「起こすわ」
「わかった」
ラテリーは、拳を握り身構える。
「起きて……」
魔族の身体をゆすりながら声をかける。
魔族はゆっくりと目をあけ、金色の瞳で私の顔をじっと見ている。
そして、この魔族が魔王種であることが確定した。
「こんにちは、魔族のお嬢さん」
「こ……こんにち……は」
敵意は無いみたいだけど、警戒をしたまま魔族の身体を起こす。
人類語も不得意のようでたどたどしい。
「あなた、森で倒れていたんだけど。どうしてかしら?」
「……すて……られた」
ああ、嫌になる。
魔族を敵だとわかっていても同じ境遇かもしれないと思ったら同情してしまった。
「そう。あなた名前は?」
「な……い……」
「そう。人間と魔王が争っている事は知っているわよね?」
正確には魔王軍の残党とだが。
「しって……いる……」
私は困っている。
この魔族を殺すべきなのかどうかを。
私は殺さない選択をしても後悔はしない、なぜなら魔族に近しい者を殺されたわけじゃない。
でも、グリュンやラテリーは違う。
いや、家に入れている時点で二人とも割り切っているのだろう。
「ころ……して……」
この子がどうしてこの街の近くに来たか理解できた気がした。
自分で命を絶てないから、誰かに殺して欲しくてきたんだ。
「ラテリー」
私には決めれない。
だから責任をとるといったラテリーに話をふる。
「そうだな。俺の仲間や家族は魔族に殺された。とても憎んでいる。でも、俺が憎んでいるのは争いを好む魔族だ。死にたがっている魔族じゃない。だから殺すつもりはない」
「そう、グリュンは?」
グリュンに相談しなくていいのかの意味合いでラテリーに問うが。
「俺も気にしないよ。むしろ人間のほうに酷い目にあわされたしね」
いつのまにか部屋に入ってきていたグリュンが答える。
「ねえ。死ぬのなんていつでもできるのよ、だからもう少し生きてみない? 私たちと」
「生きる……」
「そうよ。そこの筋肉男や、生意気な小童とは血が繋がっていないけど私達は家族なの、だから貴女も家族にならない?」
殺す選択をしなくてすんだことに安堵したが、この先のことを考えたら凄く軽はずみな事をいっているとわかっている。
でも捨てられたこの少女を私は見捨てられない、ここでこの子を見捨てたら私を拾ってくれたラテリーを裏切ることになる気がする、なにより私を捨てたくなかった。
「わから……ない……」
そうつぶやく少女を私は強く抱きしめた。
この言葉の意味は私とグリュンにしかわからないだろう。
なぜなら私たちはラテリーに拾われたのだから。
理由は人類種の絶滅を目的としている魔王の手によって、エルフという人種が根絶やしにされる前に別次元ヴェルオ・ガーベルへ移住する際、魔法が使えない私を異端者と呼び、ヴェルオ・ガーベルへの移住を認められなかったからだ。
母も父も兄もそんな私を一族の恥とし救いの手を差し伸べることはなかった。
だけど私は恨んではいない、何故ならそのおかげで私は大切な人たちと出会うことができたからだ。
私はユーラフ・ティルバージュ、魔法の使えないエルフで魔王を倒した冒険者ラテリー・ロンドの仲間だ。
[プロローグ]
仕事を探しにギルドを訪れていた私は、棚に置かれた膨大な羊皮紙に書かれた依頼を吟味していたが、
疲れてしまい窓際のベンチに腰をかけ、外を眺めている。
「ユーラフ、少しいいか?」
ヒューマンであり、私が組んでいる冒険者のラテリー・ロンドがなにやら悩んだ表情で私に話しかけてくる。
こやつのこういう表情の時は、ろくでもない事があるとここ一年の付き合いでわかっているが、行き場所のない私には拒否権がない。
「ラテリーどうしたの?」
「ここじゃ話しづらい、拠点に来てくれ」
拠点とは上位冒険者に与えられる一軒家の事だ
そこに私含む三人で暮らしている。
普段隠し事等を苦手とするこの筋肉男がこういうのだから、かなりの話なんだろう。
私もある程度身構えていた方がいいな。
今までで一番酷かった事はドラゴンをたった三人で討伐しに行ったことかな、あれは本当に死にかけた。
ラテリーと共にギルドを後にし拠点に向かう。
この街はギルドに登録している守護者が多く、子供は少ないがとても賑やかで屋台店がそこら中に見られる。
「エルフさん、この果物はいらないかい?」
屋台店を通るたびに商品を進められるのがとても困るが、活気があっていいと思う。
何も買わないが。
ちなみに、買う意思が無い時は返事をしないのが暗黙のルールだ。
数分後、市壁のそばにある二階建ての家が見えてくる。
ここが拠点だ。
拠点のそばには他の冒険者の拠点も見られるが、庭が広いためお互いに干渉することは少なくせいぜい挨拶をかわすぐらいだ。
ラテリーから先に拠点に入り、続いて私も入る。
「!」
家の中は物理的には変わった様子はないが、黒い魔力の痕跡があちらこちらから感じられる。
痕跡を魔力でたどり二階の使っていない部屋から、この黒い魔力の元がいることを感じる。
「ラテリーどういうことかな?」
「さすがエルフ、よく気付いたな」
すっとぼけた様子で答えるラテリーをぶん殴るのは後にしてまずは話を聞こう。
「いつも言っているだろう、魔法が使えないんじゃなく放出できないだけ。探知ぐらいならできる。それより、説明。してくれるかな?」
「おう」
「ラテリー、ユーラフお帰り」
二階に続く階段から、朗らかな笑みを浮かべた少年、グリュン・エルゴが降りてくる。
「グリ。あの子は?」
「見張ってたけど、全然起きないよ」
「そうか」
「そうかじゃないんだけど」
「そうだった」
ラテリーによると森に魔獣を狩りに行った際、倒れている魔族の少女を拾ってきたとざっくり説明された。
「拾ってきたって魔族なんでしょ? 今、私たち人類が何と戦っているか知っていますか? ラテリーさん」
「知っているが、子供をそのまま放置ってわけにはいかないし、あのままにして置いたら他の守護者に殺されていたかもしれない」
呆れてものが言えなかった。
確かに子供を見捨てるような男ではないがよりにもよって魔族とは、見た目は子供かもしれないが実年齢が何歳かも知らないだろうに。
「私達エルフと同じように魔族も超長寿で、見た目が子供でもラテリーより年上かもしれないんだけど、それでも子供だと言い張るのかしら?」
「何歳とかは関係ないだろ? ユーラフにしたって俺達ヒューマンからしたら年寄りだが、実際は子供みたいなものだろう?」
これに関しては言い返せない、私達はエルフの中でも古代種と呼ばれる存在で、三千年以上生きるし、個体差はあるが一万年以上生きた者もいる。
ヒューマン換算したら私はまだ赤ん坊と言っても過言ではない。
「言いたいことはわかるけど、それでも魔族なんでしょ?」
「まあ、そういうなよ。もし何かあったら俺が責任持つよ」
でたいつものセリフが、何かあるごとにこやつは責任を持つという。
まあ、いつも責任をとっている実績があるから文句が言えない。
私もこいつの責任のおかげで今ここにいる。
「わかったわ。とりあえず見せて。あと」
私は、腰にぶら下げている袋から、白い宝石を四つとりだしグリュンに手渡す。
「悪いんだけど、家の周りだけじゃなくて、敷地の角から結界をはってくれる?」
グリュンは、子供だが大人顔負けの神仰者で結界と回復がとても上手い。
媒体がなくてもいい結界をはれるが、万が一のために結界を強化する宝石を使ってもらう。
「わかった! あの子の魔力強いから漏れたらこまるしね」
「ありがとう」
グリュンはすぐに家を出ていき、ラテリーと二階にあがる。
黒い魔力が漏れ出す部屋のドアを開け中に入ると、床で寝ている魔族の少女が目に入る。
山羊の角、小さく赤い翼、この時点で上位の魔族で生後数年だとわかる、あとは瞳の色次第で魔王種なのか判別できる。
「ラテリーこの子の瞳の色は確認した?」
「いや、一度も起きていないから確認はしていない」
「この子、上位の魔族よ」
「そうなのか?」
一瞬ラテリーの魔力が引き締まるの感じる。
上位魔族と聞いて警戒したのだろう。
それにしてもおかしい。
魔王を倒したのだから魔族はもう生まれないはず、もしかして他の魔王がいるのだろうか。
「でも、子供というのは当たりね。十年以上生きた魔族なら覚醒して翼がもっと大きくなっているはず、角も小さいしね」
「そうか」
ラテリーは安堵の表情を浮かべているがまだ安心はできない、目を覚ました瞬間私たちに攻撃してこない保証はどこにもないのだから。
グリュンが結界を張ったのを感知したのでこの魔族の少女を起こすことにする。
「起こすわ」
「わかった」
ラテリーは、拳を握り身構える。
「起きて……」
魔族の身体をゆすりながら声をかける。
魔族はゆっくりと目をあけ、金色の瞳で私の顔をじっと見ている。
そして、この魔族が魔王種であることが確定した。
「こんにちは、魔族のお嬢さん」
「こ……こんにち……は」
敵意は無いみたいだけど、警戒をしたまま魔族の身体を起こす。
人類語も不得意のようでたどたどしい。
「あなた、森で倒れていたんだけど。どうしてかしら?」
「……すて……られた」
ああ、嫌になる。
魔族を敵だとわかっていても同じ境遇かもしれないと思ったら同情してしまった。
「そう。あなた名前は?」
「な……い……」
「そう。人間と魔王が争っている事は知っているわよね?」
正確には魔王軍の残党とだが。
「しって……いる……」
私は困っている。
この魔族を殺すべきなのかどうかを。
私は殺さない選択をしても後悔はしない、なぜなら魔族に近しい者を殺されたわけじゃない。
でも、グリュンやラテリーは違う。
いや、家に入れている時点で二人とも割り切っているのだろう。
「ころ……して……」
この子がどうしてこの街の近くに来たか理解できた気がした。
自分で命を絶てないから、誰かに殺して欲しくてきたんだ。
「ラテリー」
私には決めれない。
だから責任をとるといったラテリーに話をふる。
「そうだな。俺の仲間や家族は魔族に殺された。とても憎んでいる。でも、俺が憎んでいるのは争いを好む魔族だ。死にたがっている魔族じゃない。だから殺すつもりはない」
「そう、グリュンは?」
グリュンに相談しなくていいのかの意味合いでラテリーに問うが。
「俺も気にしないよ。むしろ人間のほうに酷い目にあわされたしね」
いつのまにか部屋に入ってきていたグリュンが答える。
「ねえ。死ぬのなんていつでもできるのよ、だからもう少し生きてみない? 私たちと」
「生きる……」
「そうよ。そこの筋肉男や、生意気な小童とは血が繋がっていないけど私達は家族なの、だから貴女も家族にならない?」
殺す選択をしなくてすんだことに安堵したが、この先のことを考えたら凄く軽はずみな事をいっているとわかっている。
でも捨てられたこの少女を私は見捨てられない、ここでこの子を見捨てたら私を拾ってくれたラテリーを裏切ることになる気がする、なにより私を捨てたくなかった。
「わから……ない……」
そうつぶやく少女を私は強く抱きしめた。
この言葉の意味は私とグリュンにしかわからないだろう。
なぜなら私たちはラテリーに拾われたのだから。
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