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ACT-19

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「あはは、お疲れのようだね」

「あははじゃないですよ、こっちは引っ張り回されてクタクタなんですから」

「いや~、世の中には不思議な英雄がいて、まだまだ退屈しないな~」

「絶対に馬鹿にしてますよね、師匠」


 健太郎は、宴が終わった後に、口直しに御子柴堂に寄っていた。


「そういえば、いつも一緒にいる彼女は?」

「シエラなら、ギルドの冒険者たちと飲み比べして、酔い潰れて寝てます」

「あそこのギルドは、昔から変わらないね」

「なんだか、楽しそうですね」

「そうかな、普段どおりのつもりなんだけど」

「通常が今の感じなら、師匠は妖精かなんかですよ」

「ピクシー?」

「YES ピクシー」


 酒が回り、思考回路が大雑把になってきた二人の会話は、居酒屋に四六時中いるおじさんのようだった。


「そうだ、今から修行をしないかい」

「こんな夜中にですか?」

「うん、こんな夜中に」


 翔は、胸ポケットからステータスプレートを取り出した。


「知ってるかもしれないけど、ステータスプレートには面白いギミックがあるんだよ」

「ステータスプレートを売ったら、億万長者にでもなれるんですか?」

「意外とひねくれた考え方をしているんだね…。でも違います。面白いギミックとは、スキルの伝授のことです」

「ステータスプレートを使うと、他者のスキルを習得することができるのですか」

「そうだよ、でもね、習得というよりは、引き継ぐと言った方が、意味的には正しいかな」

「引き継ぐ?」

「他者からスキルを教えてもらう時は、教える先生側が、スキルを失うことになるんだよ」

「じゃあ、スキルは教えてあげた時点で、自分自信のもとから消えてしまう…。そういうことですか」

「そうなるよね。僕が今からやらせる修行も、スキル伝授を使ったものなんだよ」

「師匠のスキル…、まさか!?」

「御察しの通り、転生特典で貰ったスキルだよ」

「笑顔で言ってますが、転生特典を渡しちゃっても、いいんですか!」

「今回の件もあったし、君には強くなってもらいたいからね」

「師匠…」


 健太郎は、翔の思いに応えるべく、ステータスプレートを取り出す。


「前にも言ったと思うけど、僕の転生特典は、君の転生特典と、とても相性が良いんだよ」

  (師匠の転生特典って、いったい、どんなモノなんだろう)

「それじゃあ、渡すね」

「お願いします」


 二人のステータスプレートが重なり合うと、銀色に煌き始めた。


  (長い付き合いだったけど、次の世代のために、君にはまだまだ現役で働いてもらうから…。バイバイ、僕の転生特典)


 煌きが徐々に薄れていくと、健太郎のステータスプレートには、新たなスキルが書き込まれていた。


「黒竜の暴食? これが、師匠が転生特典として受け取ったスキルですか」

「そうだよ、これが僕の転生特典だよ」

  (俺は複数の転生特典を貰ったから、なんだか物足りない感があるな)

「ふふふ、物足りない気持ちは理解できるけど、このスキルを甘く見てもらっては困るよ」

「今、俺の頭の中を読んだんですか!?」

「今のは黒竜の暴食のおかげかな」

  (どういうことだ、スキルは他者に伝授すると、渡した本人のスキルは消えるんじゃないのか)


 不思議そうな顔をしていると、師匠が笑いながらに言った。


「これから謎を解明するとしようか」

「ゴクリ…」


 翔は厨房に入り、お茶漬けを作って、こちらへ持って来た。


「どうぞ、お召し上がり下さい」

「お茶漬け…、これがスキルとどういった関係が…」


 半信半疑で、お茶漬けを平らげた。


「ふぅ~、美味しかった。さすがは師匠です、安定の美味しさでした」


 ピロリン♫

『スキルを獲得しました』


「この声は」


 健太郎はステータスプレートを確認してみる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名前:鈴木 健太郎 年齢:17 性別:男

 Level: 999 職業:鑑定士 ギルドランク:ダイヤ

 筋力:1000000(+9000000)

 耐久:1000000(+9000000)

 敏捷:1000000(+9000000)

 魔力:無限

 魔攻:1000000(+9000000)

 魔防:1000000(+9000000)

 魔法一覧

 全所得

 技能一覧

 [言語理解][身体能力向上][無病の身体]

 [不死王の魔眼][魔神の叡智][超魔力]

 [天使の剴切][道化師の魔術][賢者の恵み]

 [黒竜の暴食][健啖]

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「本当だ! お茶漬けを食べただけなのに、スキルが増えている!?」

「驚いただろう。これが、僕の転生特典である、黒竜の暴食の真実だよ」

  (食べただけでスキルが増えるなんて、最強じゃないか。そう言えば、ギルドマスターが、師匠と一緒にクエストに行った後、倒した魔獣を食べてたって、言っていたな)

「一つだけ注意、スキルは100個しか覚えられないからね」

「じゃあ、考えて食事を摂らないといけないのか…。いや待てよ、鑑定スキルを使えば、どんなスキルを獲得できるのかが、事前にわかるんじゃないか」

「その通り、だから相性が良いと言ったんだよ」


 師匠が微笑みながら、真実を伝えると、現象を理解できない健太郎は、口を開けたまま固まっていた。


「でもなんで、先に健啖を覚えさせたのですが?」

「それは今から教えてあげるよ」


 天使のような笑顔から一転、不気味な笑いをする、翔であった。
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