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浪漫兵器
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「ただいまー」
三百人委員会との騙し合いは一先ず終わり、バヨネッタ天魔国へと戻って来た。
「おかえり、春秋」
声だけで返事を返してくれたのは父である。父はパソコンを前に、うんうん唸っていた。
「おじさんも責任重大だな」
俺とともにバヨネッタ天魔国へとやって来たタカシが、頭を抱えている父を見て同情している。他にダイザーロくん、武田さん、そしてアネカネにピルルさんもこっちへ避難してきた。
我が家は父母が二人して個人で建築事務所を経営しているのだが、それに目を付けたバヨネッタさんが、この天魔国の君主であるバヨネッタさんが住まう、新たな宮殿の設計をうちの両親に依頼したのだ。国家君主の住居と言う、とても栄誉ある仕事を受けた我が両親であるが、要は皇居であるとか、バッキンガム宮殿であるとか、ホワイトハウスを設計してくれ。との要求なので、そりゃあどうするべきか頭を抱えるのも当然だ。
ちなみに他の家族だが、シンヤ一家だけパジャン天国に行っており、他のタカシ、浅野、トモノリ、リョウちゃんの家族は、ここバヨネッタ天魔国へと避難している。
更にはガイツクールやサンドボックスが、オルさんとともにオルさんの生国であるサリューンに行った為、当然それらを研究していた魔法科学研究所の所員たちもサリューンに行く事になった訳で、今現在、魔法科学研究所はサリューンのゴルコスと言う場所へ引っ越し、所長もオルさんに変わっていた。
「ああ、帰ったの二人とも」
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいまー」
「お邪魔してます」
母と妹のカナに魔犬のミデンが、お茶と茶菓子を持って、天魔国を構成する王家の一つ、ハーナ王家の宮殿の一角に充てがわれた、両親用の製図室に入ってきた。現在バヨネッタさんは天魔国の重鎮たちや異世界の他国の首脳たちと、オルさん謹製の設置式大型通信魔導具で、今後の地球各国との付き合いに関して会議中である。
「手伝いますね」
母とカナがお茶の用意を始めたのを見たダイザーロくんが、それを手伝い始める。
「ありがとう。ダイザーロくんだっけ? 良く出来た子ねえ。春秋なんて、この状況を見ても、何にもしないのよ」
うっ。
「分かったよ。手伝うよ」
「いえ、そんな。ハルアキ様に手伝わせるなんて、とんでもない!」
これに慌てふためくダイザーロくんだったが、
「いや、ここでやらなかったら、後々まで小言言われるから。逆にやらせてください」
「は、はあ」
ダイザーロくんは主人にお茶出しをさせる事に、抵抗感があるようだが、どんだけ偉くなろうと、家族からすれば俺はただの長男なのだ。
「どう? 二人も父さんも、何か困っている事ない? 言ってくれれば改善するから」
「トイレ」
お茶で一息吐いたところで、俺が尋ねると、食い気味にカナがそんな事を言ってきた。
「トイレ?」
「宮殿なのにぼっとん便所ってどう言う事!? トイレットペーパーもないし!」
ああ。こっちの世界って、ぼっとん便所が普通だもんなあ。紙もなくて、大判の葉っぱでお尻拭くし。その代わり、『浄化』の魔法で奇麗にするんだよなあ。ぼっとん便所の底にも『浄化』の魔法が施されているから、糞尿はすぐに分解されて臭いもしない。
「ある程度の生活魔法用に、魔導具の指輪を渡してあるだろう。それで『浄化』の魔法を使えば、さっぱりするだろう?」
「それは分かっているけど、日本人としてはシャワー付きトイレとトイレットペーパーは必須なのよ!」
そんな熱弁されてもな。
「すみません皆さん。人前でトイレについて熱く語る妹で」
「いや、別に問題ないよ。変わらないなあ、カナちゃん」
タカシがほんわり微笑むと、母とカナが頬を染める。ああ、そう言えば、
「ワンッ!」
そんなタカシの『魅了』の事を思い出したところで、ミデンがいち早く吠える事で、母とカナがハッと我に返った。
「おっと、ハルアキん家の犬、苦手なんだよねえ。お茶もご馳走になったし、俺も家族のところに行くわ」
そう言い残して、タカシ、それに次いで武田さんやアネカネも部屋を出ていったのだった。残ったピルルさんは、なんかカナにむにむにされている。されているピルルさんも、別に悪い気はしていないようだ。
「どんな感じ?」
タカシたちを見送った後、俺たちはソファでくつろぎつつ、それにも参加しない父、と言うより設計図の進捗を気にした母が、パソコンを前に唸っている父の下へと、お茶と茶菓子のおかわりを持って行き、パソコンを覗き込む。
「なんか、抜けが多いわね」
「天魔様から、いざと言う時の為に武装を配置して欲しいと言われていて。そんな建物、設計した事がないからな。武装に関してはそちらの専門家を呼んでくれると言う話だから、その部分は何も描かずに、生活用の寝室とか厨房なんかを先に設計しているんだ」
成程。そりゃあどうするか困るわな。
「それに素材が初めてのもので、これで良いんだかどうだか……」
「素材?」
俺の問いに父が頷く。
「ほら、天魔様って、金と炭素を合成した素材を作り出せるだろう? あれで宮殿を造って欲しいと言われていて」
ああ、サングリッター・スローンにも使われている、『金剛』と『黄金化』で作れるあれか。…………。
「ねえ、父さん、武装を施すように、ってバヨネッタさんからの注文だけど、『どのように』みたいな、ざっくりとしたイメージは聞いたの?」
「ああ、なんかアニメのように? みたいな話だったかな」
バヨネッタさんがアニメみたいに? それって、
「もしかして、『マギサ*なぎさ』?」
「そうそう。そんな名前だったと思う」
これを聞いて俺はカナと顔を見合わせる。カナもどうやら思うところがあるようだ。『マギ*なぎ』は長いシリーズで『マギサ*なぎさ』の前に、『魔法少女』だとか、『革命少女』だとか、『戦国少女』だとか、シリーズごとに枕詞が変わる。そんな中『マギ*なぎ』シリーズで、巨大建造物がフィーチャーされるものとなると、
「『機巧少女』か」
「多分ね」
ぽつりと漏らした俺の一言に、カナが相槌を打つ。う~ん。その可能性が高いよなあ。これはちゃんと説明しておかないと、「思っていたものと違う」とバヨネッタさんからお叱りを受ける事になりかねない。
俺は『空間庫』からタブレットを取り出すと、『機巧少女 マギサ*なぎさ』のダウンロードしてある動画を映し出した。
「父さん、多分これがバヨネッタさんのイメージするものだと思うんだけど」
言って父と母にその動画を見せると、二人は固まってしまった。まあ、そりゃあそうなるよなあ。だって俺が見せた動画、巨大建造物が変形してロボットになるんだもの。
「…………え? これ?」
「多分ね。現行、バヨネッタさんの一番強い兵器が、飛空艇だから、それより強い兵器を、って事でこれを注文したんだと思う」
「俺は兵器開発者でもロボット開発者でもないんだが?」
「あの人、本人もだけど、オルさんって言う何でも出来る人が近くにいたものだから、他の人もこれくらい出来て当たり前。ってな節があるんだよねえ」
「どうしよう」
両親が青ざめている。
「すぐに魔法科学研究所に応援を要請するよ」
三百人委員会との騙し合いは一先ず終わり、バヨネッタ天魔国へと戻って来た。
「おかえり、春秋」
声だけで返事を返してくれたのは父である。父はパソコンを前に、うんうん唸っていた。
「おじさんも責任重大だな」
俺とともにバヨネッタ天魔国へとやって来たタカシが、頭を抱えている父を見て同情している。他にダイザーロくん、武田さん、そしてアネカネにピルルさんもこっちへ避難してきた。
我が家は父母が二人して個人で建築事務所を経営しているのだが、それに目を付けたバヨネッタさんが、この天魔国の君主であるバヨネッタさんが住まう、新たな宮殿の設計をうちの両親に依頼したのだ。国家君主の住居と言う、とても栄誉ある仕事を受けた我が両親であるが、要は皇居であるとか、バッキンガム宮殿であるとか、ホワイトハウスを設計してくれ。との要求なので、そりゃあどうするべきか頭を抱えるのも当然だ。
ちなみに他の家族だが、シンヤ一家だけパジャン天国に行っており、他のタカシ、浅野、トモノリ、リョウちゃんの家族は、ここバヨネッタ天魔国へと避難している。
更にはガイツクールやサンドボックスが、オルさんとともにオルさんの生国であるサリューンに行った為、当然それらを研究していた魔法科学研究所の所員たちもサリューンに行く事になった訳で、今現在、魔法科学研究所はサリューンのゴルコスと言う場所へ引っ越し、所長もオルさんに変わっていた。
「ああ、帰ったの二人とも」
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいまー」
「お邪魔してます」
母と妹のカナに魔犬のミデンが、お茶と茶菓子を持って、天魔国を構成する王家の一つ、ハーナ王家の宮殿の一角に充てがわれた、両親用の製図室に入ってきた。現在バヨネッタさんは天魔国の重鎮たちや異世界の他国の首脳たちと、オルさん謹製の設置式大型通信魔導具で、今後の地球各国との付き合いに関して会議中である。
「手伝いますね」
母とカナがお茶の用意を始めたのを見たダイザーロくんが、それを手伝い始める。
「ありがとう。ダイザーロくんだっけ? 良く出来た子ねえ。春秋なんて、この状況を見ても、何にもしないのよ」
うっ。
「分かったよ。手伝うよ」
「いえ、そんな。ハルアキ様に手伝わせるなんて、とんでもない!」
これに慌てふためくダイザーロくんだったが、
「いや、ここでやらなかったら、後々まで小言言われるから。逆にやらせてください」
「は、はあ」
ダイザーロくんは主人にお茶出しをさせる事に、抵抗感があるようだが、どんだけ偉くなろうと、家族からすれば俺はただの長男なのだ。
「どう? 二人も父さんも、何か困っている事ない? 言ってくれれば改善するから」
「トイレ」
お茶で一息吐いたところで、俺が尋ねると、食い気味にカナがそんな事を言ってきた。
「トイレ?」
「宮殿なのにぼっとん便所ってどう言う事!? トイレットペーパーもないし!」
ああ。こっちの世界って、ぼっとん便所が普通だもんなあ。紙もなくて、大判の葉っぱでお尻拭くし。その代わり、『浄化』の魔法で奇麗にするんだよなあ。ぼっとん便所の底にも『浄化』の魔法が施されているから、糞尿はすぐに分解されて臭いもしない。
「ある程度の生活魔法用に、魔導具の指輪を渡してあるだろう。それで『浄化』の魔法を使えば、さっぱりするだろう?」
「それは分かっているけど、日本人としてはシャワー付きトイレとトイレットペーパーは必須なのよ!」
そんな熱弁されてもな。
「すみません皆さん。人前でトイレについて熱く語る妹で」
「いや、別に問題ないよ。変わらないなあ、カナちゃん」
タカシがほんわり微笑むと、母とカナが頬を染める。ああ、そう言えば、
「ワンッ!」
そんなタカシの『魅了』の事を思い出したところで、ミデンがいち早く吠える事で、母とカナがハッと我に返った。
「おっと、ハルアキん家の犬、苦手なんだよねえ。お茶もご馳走になったし、俺も家族のところに行くわ」
そう言い残して、タカシ、それに次いで武田さんやアネカネも部屋を出ていったのだった。残ったピルルさんは、なんかカナにむにむにされている。されているピルルさんも、別に悪い気はしていないようだ。
「どんな感じ?」
タカシたちを見送った後、俺たちはソファでくつろぎつつ、それにも参加しない父、と言うより設計図の進捗を気にした母が、パソコンを前に唸っている父の下へと、お茶と茶菓子のおかわりを持って行き、パソコンを覗き込む。
「なんか、抜けが多いわね」
「天魔様から、いざと言う時の為に武装を配置して欲しいと言われていて。そんな建物、設計した事がないからな。武装に関してはそちらの専門家を呼んでくれると言う話だから、その部分は何も描かずに、生活用の寝室とか厨房なんかを先に設計しているんだ」
成程。そりゃあどうするか困るわな。
「それに素材が初めてのもので、これで良いんだかどうだか……」
「素材?」
俺の問いに父が頷く。
「ほら、天魔様って、金と炭素を合成した素材を作り出せるだろう? あれで宮殿を造って欲しいと言われていて」
ああ、サングリッター・スローンにも使われている、『金剛』と『黄金化』で作れるあれか。…………。
「ねえ、父さん、武装を施すように、ってバヨネッタさんからの注文だけど、『どのように』みたいな、ざっくりとしたイメージは聞いたの?」
「ああ、なんかアニメのように? みたいな話だったかな」
バヨネッタさんがアニメみたいに? それって、
「もしかして、『マギサ*なぎさ』?」
「そうそう。そんな名前だったと思う」
これを聞いて俺はカナと顔を見合わせる。カナもどうやら思うところがあるようだ。『マギ*なぎ』は長いシリーズで『マギサ*なぎさ』の前に、『魔法少女』だとか、『革命少女』だとか、『戦国少女』だとか、シリーズごとに枕詞が変わる。そんな中『マギ*なぎ』シリーズで、巨大建造物がフィーチャーされるものとなると、
「『機巧少女』か」
「多分ね」
ぽつりと漏らした俺の一言に、カナが相槌を打つ。う~ん。その可能性が高いよなあ。これはちゃんと説明しておかないと、「思っていたものと違う」とバヨネッタさんからお叱りを受ける事になりかねない。
俺は『空間庫』からタブレットを取り出すと、『機巧少女 マギサ*なぎさ』のダウンロードしてある動画を映し出した。
「父さん、多分これがバヨネッタさんのイメージするものだと思うんだけど」
言って父と母にその動画を見せると、二人は固まってしまった。まあ、そりゃあそうなるよなあ。だって俺が見せた動画、巨大建造物が変形してロボットになるんだもの。
「…………え? これ?」
「多分ね。現行、バヨネッタさんの一番強い兵器が、飛空艇だから、それより強い兵器を、って事でこれを注文したんだと思う」
「俺は兵器開発者でもロボット開発者でもないんだが?」
「あの人、本人もだけど、オルさんって言う何でも出来る人が近くにいたものだから、他の人もこれくらい出来て当たり前。ってな節があるんだよねえ」
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