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「ぜえ、はあ、ぜえ、はあ」
「やっと来たか」
俺がボロボロになりながら武田さんが待つ部屋に入ると、武田さんはヒカルの結界の中でごろりと横になってポテチを食べていた。
「おい! 人が必死になってここまでやって来たの、『空織』で見てたんでしょう? それでその態度はないんじゃないですか?」
思わず文句の一つも言いたくなっても仕方ない。
「こっちだってそれなりに大変だったんだぞ。レベル低いから、動かないようにじっとしてなきゃならなかったんだ」
だったら座禅でも組んで待っていて欲しかった。
「罠ですか」
「ああ。工藤、そこを動くなよ。罠が作動するから」
と武田さんに言われては、部屋の入り口から一歩も動けない。
「どうしろと?」
「宝箱からスイッチ手に入れていたよな? あれを使うんだ」
「あれ、使って良いやつだったんですか?」
答えながら『空間庫』からスイッチを取り出す。
「工藤は警戒していたみたいだけど、それ、罠解除スイッチだから」
「はえ?」
マジかよ!? ここに来るまでに結構な数を入手してきたんですけど?
「なんか、メッチャ持ってます」
「スイッチ一つで使える回数が決まっているからな。取っ手の魔石が光っているだろ?」
確かに、五つの魔石が光っている。と言う事は、
「ご推察通り、光っている魔石の数だけ罠が解除出来る仕組みだ」
成程なあ。と俺はスイッチを押すが、何も起こらない。いや、罠解除スイッチなんだから、何も起こらないのが正しいのか。と部屋の中に一歩踏み出せば、魔物が出現したり、天井が落ちてきたり、刃物が壁から生えてきたり、毒霧に包まれてりなんてしない。俺が移動しても何ら罠が作動しないのを確認してから、ヒカルの結界を解除する武田さんに、ちょっともやっとしたけど。
「はあ。とりあえず、ここはセーフティゾーンって事で、一旦休んで良いですか?」
俺はそう言って部屋の中央で床に腰をおろした。
「他はともかく、カッテナとダイザーロは、救援に向かった方が良いんじゃないのか?」
「それはそうなんですけど……」
と言いながら、俺は夢幻香の指輪の火を消す。
「指輪の中の夢幻香を交換しないといけませんし、LPを消費したんで、HPMPを回復させないといけないんですよ」
俺は『有頂天』状態でLPとなっていたHPMPを、MPに偏重して通常状態に戻り、減ったHPをポーションで回復させる。
「そう言う感じか」
「そう言う事です」
言いながら俺は、武田さんに持っているスイッチの半分を渡し、それから夢幻香の交換を始める。
「しかし鍵を使わずに宝箱を開けたのは良かったな」
「やっぱり鍵はブラフでしたか?」
一回開けて酷い目みているしな。
「ああ。俺たちが五十年前にこのアルティニン廟に挑戦した時には、最初の方は馬鹿丸だしで鍵を使って開けていたから、苦労したよ」
「それは、ご愁傷さまでした」
「スイッチがあるのとないのとでは、このアルティニン廟の攻略難易度がまるで違ってくるからな。現在も、バヨネッタとデムレイは鍵を使わずに宝箱を開けているが、ミカリー卿にカッテナ、ダイザーロは馬鹿正直に鍵を使って、黒霧の魔物と戦っているよ」
「はあ!? それを早く言ってください!」
「だから急がなくて良いのか聞いただろ?」
宝箱から出現する魔物は、俺でも苦労するレベルだ。それをミカリー卿はともかく、カッテナさんとダイザーロくんが相手するのは命に関わる。俺は夢幻香の交換を終えると立ち上がり、
「すぐに向かいますよ!」
と武田さんを引き連れて部屋を出る。
ダダダダダダダダダ……ッ!!
カッテナさんが戦っている部屋に入ると、真っ黒な巨人相手にリペルを撃ちまくるカッテナさんがいた。しかしカッテナさんの攻撃が巨人に通用しているようには見えない。黒い巨人は魔弾を吸収しながら悠然とカッテナさんに近付き、カッテナさんへとその拳を振りかぶった。
ドゴンッ!!
部屋の壁が壊れる程の衝撃。喰らえば身体はぺちゃんこだっただろう。
「あれ?」
しかしそれも当たればだ。間一髪で武田さんの『転置』が間に合い、カッテナさんは俺たちの側にいた。
「大丈夫ですか?」
「ハルアキ様にタケダ様?」
まだ状態把握が出来ていないようだが、その事に気を向けている場合じゃない。今にも倒せそうだった獲物を横取りされて、黒い巨人が怒っているのが、その態度から分かる。そして黒い巨人は、その怒りに任せて俺たちの方へタックルしてきた。
「のわっ!?」
俺はカッテナさんを肩に担ぎ、その場から飛び退く。武田さんは既に『転置』で遠くへ離れていた。
ドッゴーンッ!!
黒い巨人のタックルでぶっ壊れる入り口。案外動きが速くてこちらも間一髪だ。
ダダダダダダダダダ……ッ!!
黒い巨人から逃げる間も、カッテナさんは俺の肩からリペルを撃ちまくるのだが、それも吸収されて意味をなさない。
「どうなっているんですか、あれ?」
武田さんのところまで逃げてきて尋ねる。俺の『鑑定(低)』では弱点が分からないのだ。
「コアがあるタイプだ。それを一発で壊せれば簡単なんだがな」
成程。それならばと、俺はカッテナさんをその場に置いて、『時間操作』タイプBで黒い巨人に接敵する。
「工藤! コアは巨人の体内を高速で移動している! 一撃当てるのも難しいぞ!」
ああ、そうですか! っと。俺はアニンの曲剣で黒い巨人の五体を八つ裂きにする。これによって一時的にバラバラになった黒い巨人。
「武田さん! コアはどの部位ですか!?」
「! 右上腕だ!」
また変なところに。と思いながらも、俺は更に右上腕をバラバラに斬り刻む。すると黒い巨人は元の黒い霧となり、正しく霧散して、魔石だけを残して消滅したのだった。
はあ。これで仲間が二人戻ったか。残るは四人。次はダイザーロくんだな。
「やっと来たか」
俺がボロボロになりながら武田さんが待つ部屋に入ると、武田さんはヒカルの結界の中でごろりと横になってポテチを食べていた。
「おい! 人が必死になってここまでやって来たの、『空織』で見てたんでしょう? それでその態度はないんじゃないですか?」
思わず文句の一つも言いたくなっても仕方ない。
「こっちだってそれなりに大変だったんだぞ。レベル低いから、動かないようにじっとしてなきゃならなかったんだ」
だったら座禅でも組んで待っていて欲しかった。
「罠ですか」
「ああ。工藤、そこを動くなよ。罠が作動するから」
と武田さんに言われては、部屋の入り口から一歩も動けない。
「どうしろと?」
「宝箱からスイッチ手に入れていたよな? あれを使うんだ」
「あれ、使って良いやつだったんですか?」
答えながら『空間庫』からスイッチを取り出す。
「工藤は警戒していたみたいだけど、それ、罠解除スイッチだから」
「はえ?」
マジかよ!? ここに来るまでに結構な数を入手してきたんですけど?
「なんか、メッチャ持ってます」
「スイッチ一つで使える回数が決まっているからな。取っ手の魔石が光っているだろ?」
確かに、五つの魔石が光っている。と言う事は、
「ご推察通り、光っている魔石の数だけ罠が解除出来る仕組みだ」
成程なあ。と俺はスイッチを押すが、何も起こらない。いや、罠解除スイッチなんだから、何も起こらないのが正しいのか。と部屋の中に一歩踏み出せば、魔物が出現したり、天井が落ちてきたり、刃物が壁から生えてきたり、毒霧に包まれてりなんてしない。俺が移動しても何ら罠が作動しないのを確認してから、ヒカルの結界を解除する武田さんに、ちょっともやっとしたけど。
「はあ。とりあえず、ここはセーフティゾーンって事で、一旦休んで良いですか?」
俺はそう言って部屋の中央で床に腰をおろした。
「他はともかく、カッテナとダイザーロは、救援に向かった方が良いんじゃないのか?」
「それはそうなんですけど……」
と言いながら、俺は夢幻香の指輪の火を消す。
「指輪の中の夢幻香を交換しないといけませんし、LPを消費したんで、HPMPを回復させないといけないんですよ」
俺は『有頂天』状態でLPとなっていたHPMPを、MPに偏重して通常状態に戻り、減ったHPをポーションで回復させる。
「そう言う感じか」
「そう言う事です」
言いながら俺は、武田さんに持っているスイッチの半分を渡し、それから夢幻香の交換を始める。
「しかし鍵を使わずに宝箱を開けたのは良かったな」
「やっぱり鍵はブラフでしたか?」
一回開けて酷い目みているしな。
「ああ。俺たちが五十年前にこのアルティニン廟に挑戦した時には、最初の方は馬鹿丸だしで鍵を使って開けていたから、苦労したよ」
「それは、ご愁傷さまでした」
「スイッチがあるのとないのとでは、このアルティニン廟の攻略難易度がまるで違ってくるからな。現在も、バヨネッタとデムレイは鍵を使わずに宝箱を開けているが、ミカリー卿にカッテナ、ダイザーロは馬鹿正直に鍵を使って、黒霧の魔物と戦っているよ」
「はあ!? それを早く言ってください!」
「だから急がなくて良いのか聞いただろ?」
宝箱から出現する魔物は、俺でも苦労するレベルだ。それをミカリー卿はともかく、カッテナさんとダイザーロくんが相手するのは命に関わる。俺は夢幻香の交換を終えると立ち上がり、
「すぐに向かいますよ!」
と武田さんを引き連れて部屋を出る。
ダダダダダダダダダ……ッ!!
カッテナさんが戦っている部屋に入ると、真っ黒な巨人相手にリペルを撃ちまくるカッテナさんがいた。しかしカッテナさんの攻撃が巨人に通用しているようには見えない。黒い巨人は魔弾を吸収しながら悠然とカッテナさんに近付き、カッテナさんへとその拳を振りかぶった。
ドゴンッ!!
部屋の壁が壊れる程の衝撃。喰らえば身体はぺちゃんこだっただろう。
「あれ?」
しかしそれも当たればだ。間一髪で武田さんの『転置』が間に合い、カッテナさんは俺たちの側にいた。
「大丈夫ですか?」
「ハルアキ様にタケダ様?」
まだ状態把握が出来ていないようだが、その事に気を向けている場合じゃない。今にも倒せそうだった獲物を横取りされて、黒い巨人が怒っているのが、その態度から分かる。そして黒い巨人は、その怒りに任せて俺たちの方へタックルしてきた。
「のわっ!?」
俺はカッテナさんを肩に担ぎ、その場から飛び退く。武田さんは既に『転置』で遠くへ離れていた。
ドッゴーンッ!!
黒い巨人のタックルでぶっ壊れる入り口。案外動きが速くてこちらも間一髪だ。
ダダダダダダダダダ……ッ!!
黒い巨人から逃げる間も、カッテナさんは俺の肩からリペルを撃ちまくるのだが、それも吸収されて意味をなさない。
「どうなっているんですか、あれ?」
武田さんのところまで逃げてきて尋ねる。俺の『鑑定(低)』では弱点が分からないのだ。
「コアがあるタイプだ。それを一発で壊せれば簡単なんだがな」
成程。それならばと、俺はカッテナさんをその場に置いて、『時間操作』タイプBで黒い巨人に接敵する。
「工藤! コアは巨人の体内を高速で移動している! 一撃当てるのも難しいぞ!」
ああ、そうですか! っと。俺はアニンの曲剣で黒い巨人の五体を八つ裂きにする。これによって一時的にバラバラになった黒い巨人。
「武田さん! コアはどの部位ですか!?」
「! 右上腕だ!」
また変なところに。と思いながらも、俺は更に右上腕をバラバラに斬り刻む。すると黒い巨人は元の黒い霧となり、正しく霧散して、魔石だけを残して消滅したのだった。
はあ。これで仲間が二人戻ったか。残るは四人。次はダイザーロくんだな。
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