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BBQ
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なんか、がっつりBBQしているな。竜の口先でBBQセットを『空間庫』から取り出したデムレイさんは、当たり前のように肉を俺たちに振る舞い始めた。
「変わらないわねえ」
としみじみ口にするバヨネッタさん。
「こうやって同じ飯を喰らえば、仲間との親睦も深まるってもんだ」
網の上で焼き上がった分厚い肉を、デムレイさんはひょいひょいと皆の皿に置いていく。それをカッテナさんとダイザーロさんが手伝っている。ダイザーロさんは大きな肉の塊を切り分け、カッテナさんは付け合わせの担当だ。俺も手伝おうとしたのだが、二人に「使徒様にさせられません」と止められてしまった。
カッテナさんが今作っているのは、先の宮殿でバヨネッタさんが喜んで食べていた野菜とチーズのカプレーゼだ。出来上がったら、椅子とテーブルを出してのんびりしているバヨネッタさんのテーブルに置く。
「野菜のチーズ挟みか。美味いよな」
ちらりとバヨネッタさんに目をやるデムレイさんだったが、火の番をしているので食べる暇がないのだ。仕方ないので、俺はカッテナさんに渡されたカプレーゼを持ってデムレイさんに近付き、今まさに肉を焼いているデムレイさんに食べさせてあげた。
「う~ん! やっぱりビチューレ水牛のチーズは最高だな!」
喜ぶデムレイさんだったが、それにしても水牛か。確かモッツァレラチーズも水牛の乳から作られていたはず。食べた感想がモッツァレラに近くなるのも道理か。
「宮殿でも出されましたし、ここら辺は水牛の飼育が盛んなんですか?」
「まあな。川ばかりの場所だからな。牛よりも水牛の方が圧倒的に多いよ。食べるだけでなく、水麦とか野菜を育てるとかの為に、農耕用にも使うしな」
成程なあ。
「そうだ」
と俺は『空間庫』からアルミホイルを取り出すと皿の形に成形し、それをBBQセットの端に置かせて貰う。その中にビチューレ水牛のフレッシュチーズと牛乳、バターを入れてちょっと混ぜれば完成。簡単チーズソース。
「良いなそれ!」
「でしょう?」
家族キャンプの時に良く作っていたんだよねえ。などと思い出しながら、俺は完成したチーズソースを肉に掛けて皆に渡していく。「美味い美味い」と食べてくれるのは嬉しい事だ。
皆の喜ぶ姿にこちらまで喜んでいたら、何やら視線を感じる。その方を向けば、竜と目があった。あれ? アルティニン廟の竜って、こっちを見ていたっけ? まあでも、まな板の上で死んだ魚と目が合うようなものか。と気にせずチーズソース掛けの肉を持って自分の席に戻ろうとして、俺はやはり自分が竜に視線を向けられているのを感じるのだった。
「武田さん、あの竜って」
俺は横の武田さんに耳打ちするが、武田さんは何とも微妙な顔だ。
「工藤が何を言いたいのかは分かる。が、あの竜の腹の中が、地下界に繋がっているのも事実なんだよ」
「それって、俺たちあの竜の口を開けられたとして、尻の穴から出ていくんですか?」
それを聞いて吹き出す武田さん。
「汚いわね、タケダ」
俺の発言のせいで、武田さんがバヨネッタさんに怒られてしまった。
「違うんですよ、バヨネッタさん。俺が、竜の口から入ったら、出口はどこなんだろうって……」
「…………」
うわあ、皆から露骨に嫌な顔をされちゃったよ。確かにこれは飯時にする話じゃあなかったな。
「大丈夫だ、工藤。向こうの出口も竜の口だったからな」
と武田さんの口から聞いて、全員がホッとしていた。流石に肛門から出るのは気持ち的に頂けない。
「いきなり飯が不味くなるような話をするなよなあ」
デムレイさんに咎められてしまった。
「すみません。この竜と目が合ってしまったもので」
「ああ。この竜が生きている。って話か」
「え!? この竜、生きているんですか!?」
カッテナさんは驚いて包丁を落としてしまった。
「多分な。伝承を調べた感じだと、あの要塞設計士カヌスの最後の作品であるらしい」
「嘘でしょう!? カヌスの最後の作品は、空中鯨艦『天獄のキョウハ』のはずよ」
デムレイさんの話に驚くバヨネッタさん。カヌスの事は覚えている。稀代のダンジョンメイカーと言われる要塞設計士で、オルドランドでは移動要塞『幻惑のカイカイ虫』や、首都の不沈要塞『無窮の逆さ亀サリィ』を造った人だ。
「今までの定説だな。だが歴史の探求をしていれば、その定説がひっくり返る事なんてザラだろう?」
そうデムレイさんは腰に手を当てにやりと笑う。対するバヨネッタさんは悔しいのか拗ねているのか首を横に向けてしまった。
「じゃあ、このアルティニン廟は、カヌスの設計したダンジョンなんですね?」
「そうだ。正式名称を不抜隧塔『貪食の双頭竜アルティニン』と言う」
双頭竜が地上から地下界まで貫いて埋まっているのか。しかし、
「アルティニンはそのままなんですね」
「サリィだって後世の人間が付けた名前だ。アルティニンもそうだろうな。カヌスの作品には、こう言った俗名が付いているものといないものがあるんだよ」
成程なあ。
「で、あれは生き物と見て良いんですかねえ?」
そこでバヨネッタさんもデムレイさんも武田さんの方を見遣る。
「そうだなあ。人が作り出した化け物を、生物と言うのか。言うならばどこからを生物とするのかは微妙なところだな。工藤の腹の中にいる化神族だって、生物かと言われれば微妙だろ?」
確かに。
『失敬な。我は生きているぞ』
まあまあ。ここら辺、人によって線引きが難しいところだよなあ。アネカネなんかだと、スキル『生命の声』で、AIでも生命と認識するからなあ。この竜も生命判定しそう。そうか!
「アネカネに頼んで、この竜に口を開けてくれるように頼んで貰うとか?」
「へっ」
バヨネッタさんに鼻で笑われてしまった。
「何千年と職務に忠実な存在が、今更、情で動く訳ないでしょう」
そう言うものかねえ。
「変わらないわねえ」
としみじみ口にするバヨネッタさん。
「こうやって同じ飯を喰らえば、仲間との親睦も深まるってもんだ」
網の上で焼き上がった分厚い肉を、デムレイさんはひょいひょいと皆の皿に置いていく。それをカッテナさんとダイザーロさんが手伝っている。ダイザーロさんは大きな肉の塊を切り分け、カッテナさんは付け合わせの担当だ。俺も手伝おうとしたのだが、二人に「使徒様にさせられません」と止められてしまった。
カッテナさんが今作っているのは、先の宮殿でバヨネッタさんが喜んで食べていた野菜とチーズのカプレーゼだ。出来上がったら、椅子とテーブルを出してのんびりしているバヨネッタさんのテーブルに置く。
「野菜のチーズ挟みか。美味いよな」
ちらりとバヨネッタさんに目をやるデムレイさんだったが、火の番をしているので食べる暇がないのだ。仕方ないので、俺はカッテナさんに渡されたカプレーゼを持ってデムレイさんに近付き、今まさに肉を焼いているデムレイさんに食べさせてあげた。
「う~ん! やっぱりビチューレ水牛のチーズは最高だな!」
喜ぶデムレイさんだったが、それにしても水牛か。確かモッツァレラチーズも水牛の乳から作られていたはず。食べた感想がモッツァレラに近くなるのも道理か。
「宮殿でも出されましたし、ここら辺は水牛の飼育が盛んなんですか?」
「まあな。川ばかりの場所だからな。牛よりも水牛の方が圧倒的に多いよ。食べるだけでなく、水麦とか野菜を育てるとかの為に、農耕用にも使うしな」
成程なあ。
「そうだ」
と俺は『空間庫』からアルミホイルを取り出すと皿の形に成形し、それをBBQセットの端に置かせて貰う。その中にビチューレ水牛のフレッシュチーズと牛乳、バターを入れてちょっと混ぜれば完成。簡単チーズソース。
「良いなそれ!」
「でしょう?」
家族キャンプの時に良く作っていたんだよねえ。などと思い出しながら、俺は完成したチーズソースを肉に掛けて皆に渡していく。「美味い美味い」と食べてくれるのは嬉しい事だ。
皆の喜ぶ姿にこちらまで喜んでいたら、何やら視線を感じる。その方を向けば、竜と目があった。あれ? アルティニン廟の竜って、こっちを見ていたっけ? まあでも、まな板の上で死んだ魚と目が合うようなものか。と気にせずチーズソース掛けの肉を持って自分の席に戻ろうとして、俺はやはり自分が竜に視線を向けられているのを感じるのだった。
「武田さん、あの竜って」
俺は横の武田さんに耳打ちするが、武田さんは何とも微妙な顔だ。
「工藤が何を言いたいのかは分かる。が、あの竜の腹の中が、地下界に繋がっているのも事実なんだよ」
「それって、俺たちあの竜の口を開けられたとして、尻の穴から出ていくんですか?」
それを聞いて吹き出す武田さん。
「汚いわね、タケダ」
俺の発言のせいで、武田さんがバヨネッタさんに怒られてしまった。
「違うんですよ、バヨネッタさん。俺が、竜の口から入ったら、出口はどこなんだろうって……」
「…………」
うわあ、皆から露骨に嫌な顔をされちゃったよ。確かにこれは飯時にする話じゃあなかったな。
「大丈夫だ、工藤。向こうの出口も竜の口だったからな」
と武田さんの口から聞いて、全員がホッとしていた。流石に肛門から出るのは気持ち的に頂けない。
「いきなり飯が不味くなるような話をするなよなあ」
デムレイさんに咎められてしまった。
「すみません。この竜と目が合ってしまったもので」
「ああ。この竜が生きている。って話か」
「え!? この竜、生きているんですか!?」
カッテナさんは驚いて包丁を落としてしまった。
「多分な。伝承を調べた感じだと、あの要塞設計士カヌスの最後の作品であるらしい」
「嘘でしょう!? カヌスの最後の作品は、空中鯨艦『天獄のキョウハ』のはずよ」
デムレイさんの話に驚くバヨネッタさん。カヌスの事は覚えている。稀代のダンジョンメイカーと言われる要塞設計士で、オルドランドでは移動要塞『幻惑のカイカイ虫』や、首都の不沈要塞『無窮の逆さ亀サリィ』を造った人だ。
「今までの定説だな。だが歴史の探求をしていれば、その定説がひっくり返る事なんてザラだろう?」
そうデムレイさんは腰に手を当てにやりと笑う。対するバヨネッタさんは悔しいのか拗ねているのか首を横に向けてしまった。
「じゃあ、このアルティニン廟は、カヌスの設計したダンジョンなんですね?」
「そうだ。正式名称を不抜隧塔『貪食の双頭竜アルティニン』と言う」
双頭竜が地上から地下界まで貫いて埋まっているのか。しかし、
「アルティニンはそのままなんですね」
「サリィだって後世の人間が付けた名前だ。アルティニンもそうだろうな。カヌスの作品には、こう言った俗名が付いているものといないものがあるんだよ」
成程なあ。
「で、あれは生き物と見て良いんですかねえ?」
そこでバヨネッタさんもデムレイさんも武田さんの方を見遣る。
「そうだなあ。人が作り出した化け物を、生物と言うのか。言うならばどこからを生物とするのかは微妙なところだな。工藤の腹の中にいる化神族だって、生物かと言われれば微妙だろ?」
確かに。
『失敬な。我は生きているぞ』
まあまあ。ここら辺、人によって線引きが難しいところだよなあ。アネカネなんかだと、スキル『生命の声』で、AIでも生命と認識するからなあ。この竜も生命判定しそう。そうか!
「アネカネに頼んで、この竜に口を開けてくれるように頼んで貰うとか?」
「へっ」
バヨネッタさんに鼻で笑われてしまった。
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そう言うものかねえ。
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