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対東部将軍(前編)
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ヒュンヒュンヒュンヒュン……。
アニンの変化した海賊曲剣を円を描くように振り回す。これは五閘拳・重拳の予備動作を兼ねている。これで丹田の坩堝を回転させ、重力を発生させるのだ。
大剣を天に向けて構え、じりじりと俺に近付いてきたイヤルガムだったが、近付く程に己の身体が重くなっていく事に気付いたのだろう。その歩みが止まる。
「使徒様は面白いスキルをお持ちのようだ」
俺の目から視線を外さず、口角だけを上げるイヤルガム。重拳はスキルじゃなくてプレイヤースキルなんだよなあ。今はそんな反論をしている時じゃあないか。
こちらは多勢に無勢なのだ。膠着状態でいるのは得策ではないだろう。俺から攻撃させて貰う。振り回していた海賊曲剣を握り直すと、自分を中心とした重力圏から一気にイヤルガムへと迫り、縦円を描くように曲剣を上段に持ってくると、重力を曲剣に集中させて、イヤルガムの顔面目掛けて振り下ろす。
ドンッ!
剣撃とは思えない音を響かせながら、大剣を横にして俺の一撃を防いだイヤルガムを中心に、地面がひび割れる。それでも持ち堪えるイヤルガム。
「ふう」
俺は更に坩堝の回転を上げて重力を増すが、
「ぐがあっ!!」
イヤルガムはそれを気合い一閃で弾き返してきた。対して飛ばされた俺は、過重力をキャンセルして、曲剣を回転させながら軽く地面に着地する。
「かあっ!!」
そこを狙ってイヤルガムが大剣を振り下ろしてくるが、俺は曲剣の剣先をイヤルガムの踏み込む足元に指し向ける。これによってイヤルガムは体勢を崩され、大剣は俺の横を通過した。それでも衝撃波が、丸太砦まで届いて丸太の一本を破壊する。ええ、確かカッテナさんの使っている丸太のパデカ樫って、凄く頑丈なんじゃ。
「はあっ!」
などと感想を持っている暇も与えてくれないらしい。
イヤルガムは崩れて片膝を突いた体勢から、掌底を突き出そうと構えていた。しかしその距離では俺には当たらない。いや、衝撃波の事を考えると……、俺はとっさに五閘拳・土拳で俺とイヤルガムとの間に土壁を建てる。
バゴッ!
その土壁が眼前で円形に砕け散るのを見ながら、俺は直ぐ様イヤルガムから距離を取っていた。
「成程、その衝撃波がイヤルガムさんのスキルですか」
俺の言にイヤルガムは反論せず、ただ静かに立ち上がった。それは肯定と捉えて良いのだろう。もしもあの大剣が衝撃波を発生させる魔導具なら、イヤルガムの掌底から衝撃波が出るはずないからな。
「ふうう……」
立ち上がったイヤルガムは、八相の構えではなく正眼に大剣を構える。俺を一撃で終わらせるのは難しいとの判断だろう。評価してくれたのは嬉しいが、こちらは攻め辛くなったな。その間も俺は曲剣を回し続ける。
互いの緊張が高まる中、先に動くのは俺だ。曲剣を横一閃に振るえば、アニンの黒い波動が重力をともなってイヤルガムへ迫る。それを大剣を地面に突き刺して耐えるイヤルガム。
そこを俺はイヤルガムの後ろへ回り込み、曲剣を斜め下から斬り上げるが、イヤルガムは地面に刺した大剣を、力ずくで振り回して、背後からの俺の一撃を跳ね返した。俺はその剛力にまたも吹き飛ばされた。
今度は体勢を崩され、吹き飛ばされた俺は着地の時に片膝を突いてしまう。その隙を見逃さず、一気に距離を詰めて、上段から俺の脳天目掛けて大剣を振り下ろしてくるイヤルガムだったが、俺はサッと両手で地面に円を描き、土拳で地面を軟化させて、この一撃を逸らせた。
「くっ、こう言う事も出来るのか!」
軟化した地面に足が埋まったイヤルガムに対して、俺は曲剣を何度となく振り下ろすが、それを剣捌きで防いでいくイヤルガム。単に大剣の威力に頼るのではなく、剣術の腕も相当なものだ。
ならば、と俺はイヤルガムの周囲を曲剣を振るいながら円を描くように移動していく。これによって重力が発生し、軟化した地面にズブズブと埋もれていき、その動きを鈍らせていくイヤルガムだったが、
「ぐがあっ!!」
と大剣を放り投げて防御を放棄すると、その両手を天に向けて振り上げた。
(不味い!)
俺の『瞬間予知』が、次の瞬間に衝撃波で吹き飛ばされる己の姿を予知し、俺は一足早くその場から飛び退いた。
バンッ!!
と次の瞬間にイヤルガムは地面に両手を打ち付け、イヤルガムを中心に円形に衝撃波が起こり、軟化した地面ごと周囲を吹き飛ばす。
「お~~、危な」
俺が顎を伝う冷や汗を拭う横で、地面から脱出したイヤルガムは、自分が放り投げた大剣を悠々と取り上げると、握り直したその大剣を二度三度と振って握り心地を確かめ、俺に対して向き直る。
「くくくはっはっはっはっ!! 面白いじゃないか! 茶番などと言った事、詫びましょう」
はあ。まあ、別に気にしていないけどね。
「なので、ここからは本気で手合わせさせて頂く」
今まで本気じゃなかったのか。確かに『逆転(呪)』があるとは言え、戦闘のプロである軍人相手に、俺が優勢に事を運ぶなんて、おかしいものな。今までの戦いも、ほとんどこちらがボロボロになるものばかりだったし。
「では、いかせて貰おう!」
そう言ってイヤルガムが口の中で何事か呟くと、その大剣の峰に蒼白い呪文が浮き上がった。そしてまたもその大剣を地面に突き刺すイヤルガム。その瞬間に『瞬間予知』が作動して、俺が素早くその場を離れると、イヤルガムを中心に、無数の大剣が地面から飛び出して、更にはその大剣一つ一つが衝撃波を放ってきたのだった。
アニンの変化した海賊曲剣を円を描くように振り回す。これは五閘拳・重拳の予備動作を兼ねている。これで丹田の坩堝を回転させ、重力を発生させるのだ。
大剣を天に向けて構え、じりじりと俺に近付いてきたイヤルガムだったが、近付く程に己の身体が重くなっていく事に気付いたのだろう。その歩みが止まる。
「使徒様は面白いスキルをお持ちのようだ」
俺の目から視線を外さず、口角だけを上げるイヤルガム。重拳はスキルじゃなくてプレイヤースキルなんだよなあ。今はそんな反論をしている時じゃあないか。
こちらは多勢に無勢なのだ。膠着状態でいるのは得策ではないだろう。俺から攻撃させて貰う。振り回していた海賊曲剣を握り直すと、自分を中心とした重力圏から一気にイヤルガムへと迫り、縦円を描くように曲剣を上段に持ってくると、重力を曲剣に集中させて、イヤルガムの顔面目掛けて振り下ろす。
ドンッ!
剣撃とは思えない音を響かせながら、大剣を横にして俺の一撃を防いだイヤルガムを中心に、地面がひび割れる。それでも持ち堪えるイヤルガム。
「ふう」
俺は更に坩堝の回転を上げて重力を増すが、
「ぐがあっ!!」
イヤルガムはそれを気合い一閃で弾き返してきた。対して飛ばされた俺は、過重力をキャンセルして、曲剣を回転させながら軽く地面に着地する。
「かあっ!!」
そこを狙ってイヤルガムが大剣を振り下ろしてくるが、俺は曲剣の剣先をイヤルガムの踏み込む足元に指し向ける。これによってイヤルガムは体勢を崩され、大剣は俺の横を通過した。それでも衝撃波が、丸太砦まで届いて丸太の一本を破壊する。ええ、確かカッテナさんの使っている丸太のパデカ樫って、凄く頑丈なんじゃ。
「はあっ!」
などと感想を持っている暇も与えてくれないらしい。
イヤルガムは崩れて片膝を突いた体勢から、掌底を突き出そうと構えていた。しかしその距離では俺には当たらない。いや、衝撃波の事を考えると……、俺はとっさに五閘拳・土拳で俺とイヤルガムとの間に土壁を建てる。
バゴッ!
その土壁が眼前で円形に砕け散るのを見ながら、俺は直ぐ様イヤルガムから距離を取っていた。
「成程、その衝撃波がイヤルガムさんのスキルですか」
俺の言にイヤルガムは反論せず、ただ静かに立ち上がった。それは肯定と捉えて良いのだろう。もしもあの大剣が衝撃波を発生させる魔導具なら、イヤルガムの掌底から衝撃波が出るはずないからな。
「ふうう……」
立ち上がったイヤルガムは、八相の構えではなく正眼に大剣を構える。俺を一撃で終わらせるのは難しいとの判断だろう。評価してくれたのは嬉しいが、こちらは攻め辛くなったな。その間も俺は曲剣を回し続ける。
互いの緊張が高まる中、先に動くのは俺だ。曲剣を横一閃に振るえば、アニンの黒い波動が重力をともなってイヤルガムへ迫る。それを大剣を地面に突き刺して耐えるイヤルガム。
そこを俺はイヤルガムの後ろへ回り込み、曲剣を斜め下から斬り上げるが、イヤルガムは地面に刺した大剣を、力ずくで振り回して、背後からの俺の一撃を跳ね返した。俺はその剛力にまたも吹き飛ばされた。
今度は体勢を崩され、吹き飛ばされた俺は着地の時に片膝を突いてしまう。その隙を見逃さず、一気に距離を詰めて、上段から俺の脳天目掛けて大剣を振り下ろしてくるイヤルガムだったが、俺はサッと両手で地面に円を描き、土拳で地面を軟化させて、この一撃を逸らせた。
「くっ、こう言う事も出来るのか!」
軟化した地面に足が埋まったイヤルガムに対して、俺は曲剣を何度となく振り下ろすが、それを剣捌きで防いでいくイヤルガム。単に大剣の威力に頼るのではなく、剣術の腕も相当なものだ。
ならば、と俺はイヤルガムの周囲を曲剣を振るいながら円を描くように移動していく。これによって重力が発生し、軟化した地面にズブズブと埋もれていき、その動きを鈍らせていくイヤルガムだったが、
「ぐがあっ!!」
と大剣を放り投げて防御を放棄すると、その両手を天に向けて振り上げた。
(不味い!)
俺の『瞬間予知』が、次の瞬間に衝撃波で吹き飛ばされる己の姿を予知し、俺は一足早くその場から飛び退いた。
バンッ!!
と次の瞬間にイヤルガムは地面に両手を打ち付け、イヤルガムを中心に円形に衝撃波が起こり、軟化した地面ごと周囲を吹き飛ばす。
「お~~、危な」
俺が顎を伝う冷や汗を拭う横で、地面から脱出したイヤルガムは、自分が放り投げた大剣を悠々と取り上げると、握り直したその大剣を二度三度と振って握り心地を確かめ、俺に対して向き直る。
「くくくはっはっはっはっ!! 面白いじゃないか! 茶番などと言った事、詫びましょう」
はあ。まあ、別に気にしていないけどね。
「なので、ここからは本気で手合わせさせて頂く」
今まで本気じゃなかったのか。確かに『逆転(呪)』があるとは言え、戦闘のプロである軍人相手に、俺が優勢に事を運ぶなんて、おかしいものな。今までの戦いも、ほとんどこちらがボロボロになるものばかりだったし。
「では、いかせて貰おう!」
そう言ってイヤルガムが口の中で何事か呟くと、その大剣の峰に蒼白い呪文が浮き上がった。そしてまたもその大剣を地面に突き刺すイヤルガム。その瞬間に『瞬間予知』が作動して、俺が素早くその場を離れると、イヤルガムを中心に、無数の大剣が地面から飛び出して、更にはその大剣一つ一つが衝撃波を放ってきたのだった。
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