453 / 635
シンニュウ
しおりを挟む
コニン派、デーイッシュ派の両陣営との戦闘は続き、両陣営から十分の一程が『聖結界』内に入って行動している状態になってきた。前に出ていた挑戦者の一人が落ち、目立つサングリッター・スローンの近くまでやって来る戦士も多くなってきたところで、カッテナさんが動いた。
ドドドドドドドド…………!!!!
雪崩のような轟音がサングリッター・スローン周辺に降り注ぐ。カッテナさんが丸太の矢を次々と上に放ち、周辺に丸太で簡易砦を築いたのだ。丸太砦は二陣営がやって来る一方向だけ隙間が開いており、外と出入り出来るようになっている。
「これで相手の動きを操作出来ますね!」
ガッツポーズのカッテナさんだが、俺としたら他の心配が先立つ。
「ずいぶんと矢を使いましたけど、残り本数は大丈夫なんですか?」
「残りですか? 十本を切りましたね!」
明るく答えてくれたが、駄目じゃないかな? それ。
「大丈夫ですよ! 他にも戦う手段がありますから!」
とカッテナさんは懐から紐を取り出した。革をより合わせて作られた丈夫そうな紐で三メートルはあるだろうか。
「紐、ですか?」
「紐です!」
「…………」
「…………」
「紐で、戦うんですか?」
「はい!」
どうやって? 鞭みたいに相手をしばくのか? それとも相手に接近して首を締めるとか?
「お見せしますね」
俺は余程不思議そうにカッテナさんを見上げていたのだろう。カッテナさんが実演してくれると言う。
カッテナさんは紐を二つ折りにすると、ヒュンヒュンとそれを振り回し始める。やっぱり鞭的な使い方なのだろうか。と考えていると、カッテナさんは振り回している紐の先で、器用に地面に落ちている石ころをすくい上げた。そしてその石ころを、丸太砦の出入り口から侵入してこようとしている敵の一人に投げ付けたのだ。
ゴッ!
と痛そうな音とともに男の顔面に石ころは命中し、吹っ飛ばされる男。うわあ、思わず手を合わせちゃったよ。
「成程。使い方は分かりました」
どうやら投石器として使うものらしい。
「ふふん! まだまだいけますよ!」
とカッテナさんは地面の石ころをスリングで次々と侵入者に当てていく。器用だなあ。
昼前になって、コニン派、デーイッシュ派との戦闘は、思いの外接戦で進んでいる。と言うのも、こちらの二次テスト挑戦者たち対二陣営ではなく、挑戦者対コニン派対デーイッシュ派の三つ巴の様相を呈してきたからだ。
事前にコニン派上層部から聞いた話では、最優先は俺への一撃で、デーイッシュ派からちょっかい掛けられても無視するように言い渡されているようだが、コニン派の戦士たちとしては前々からデーイッシュ派に思うところがあり、売られた喧嘩は買いたいのが本音のようだ。デーイッシュ派もそうらしく、『聖結界』内で散発的に両者の戦闘が勃発するのだが、その度に『聖結界』から弾き出されている。
どうやら『聖結界』の暗黙のルールに抵触しているらしい。挑戦者対二陣営は俺が定めたルールだが、コニン派対デーイッシュ派の戦いは俺の定めの外。と言う事のようだ。
なので『聖結界』内に入ってきて弾き出されては、向こうの二陣営のところまで戻されて、そして『聖結界』の外で二陣営間の戦闘が勃発していた。
「はあ、しっちゃかめっちゃかだな」
ズビームッ!!
そんな二陣営の間を分割するかのように、サングリッター・スローンからレーザー砲が照射された。二陣営に動揺が走る。バヨネッタさん、手は出さない。って言っていたのに、こっちを放っておいてわちゃわちゃやっているのが気に食わなかったんだろうなあ。
『何しに来たのよ。ここは次期教皇を選ぶ為の試練の場よ。真面目に試練を受ける気がないのなら、さっさと帰りなさい」
それはそう。バヨネッタさんの檄にデミス平原がシーンと静まり返った。
そしてバヨネッタさんの檄によって戦場の空気が変わった。まずコニン派が一万人の戦士たちを、一斉に『聖結界』内へ進入させてきたのだ。それに慌てたのはデーイッシュ派だ。こちらも全戦士を『聖結界』内に進入させようとしているが、進入出来るのは半分以下だ。残る戦士たちは『聖結界』に弾かれて進入出来ずにいた。まあ、ポッと出の俺が聖人認定されれば良い気はしないだろう。それ以前に信仰心があるのかも怪しいけど。コニン派にも『聖結界』に弾かれている者がいるので、俺が気に入らない勢力はどこにでもいるようだ。
進入してくるコニン派に、流石にこれは挑戦者側の分が悪いと、近接戦を仕掛けていた挑戦者たちが丸太砦へ引き返してきた。そして砦の出入り口で侵入してこようと言う戦士たちを迎え撃つ。その中には炎槍使いと激戦を戦い抜いた電ナイフ使いの男もいる。彼は中々の使い手だ。頑張って欲しいものである。
とは言え限界はある。コニン派の戦士たちが、挑戦者の守りを抜けて、あるいは丸太の上を越えて、丸太砦の内部へ次々と侵入してきた。それをガドガンさんのユニコーン(サイ)が走り回って吹き飛ばし、カッテナさんがスリングで吹き飛ばし、ミカリー卿が魔導書の魔法で吹き飛ばし、二人の挑戦者が魔法で吹き飛ばし、マチコさんが空になったカップにお茶を注ぐ。お茶と言うよりもオチだな。戦わないの? と視線を向けるも、にっこり笑顔で返された。
ドドドドドドドド…………!!!!
雪崩のような轟音がサングリッター・スローン周辺に降り注ぐ。カッテナさんが丸太の矢を次々と上に放ち、周辺に丸太で簡易砦を築いたのだ。丸太砦は二陣営がやって来る一方向だけ隙間が開いており、外と出入り出来るようになっている。
「これで相手の動きを操作出来ますね!」
ガッツポーズのカッテナさんだが、俺としたら他の心配が先立つ。
「ずいぶんと矢を使いましたけど、残り本数は大丈夫なんですか?」
「残りですか? 十本を切りましたね!」
明るく答えてくれたが、駄目じゃないかな? それ。
「大丈夫ですよ! 他にも戦う手段がありますから!」
とカッテナさんは懐から紐を取り出した。革をより合わせて作られた丈夫そうな紐で三メートルはあるだろうか。
「紐、ですか?」
「紐です!」
「…………」
「…………」
「紐で、戦うんですか?」
「はい!」
どうやって? 鞭みたいに相手をしばくのか? それとも相手に接近して首を締めるとか?
「お見せしますね」
俺は余程不思議そうにカッテナさんを見上げていたのだろう。カッテナさんが実演してくれると言う。
カッテナさんは紐を二つ折りにすると、ヒュンヒュンとそれを振り回し始める。やっぱり鞭的な使い方なのだろうか。と考えていると、カッテナさんは振り回している紐の先で、器用に地面に落ちている石ころをすくい上げた。そしてその石ころを、丸太砦の出入り口から侵入してこようとしている敵の一人に投げ付けたのだ。
ゴッ!
と痛そうな音とともに男の顔面に石ころは命中し、吹っ飛ばされる男。うわあ、思わず手を合わせちゃったよ。
「成程。使い方は分かりました」
どうやら投石器として使うものらしい。
「ふふん! まだまだいけますよ!」
とカッテナさんは地面の石ころをスリングで次々と侵入者に当てていく。器用だなあ。
昼前になって、コニン派、デーイッシュ派との戦闘は、思いの外接戦で進んでいる。と言うのも、こちらの二次テスト挑戦者たち対二陣営ではなく、挑戦者対コニン派対デーイッシュ派の三つ巴の様相を呈してきたからだ。
事前にコニン派上層部から聞いた話では、最優先は俺への一撃で、デーイッシュ派からちょっかい掛けられても無視するように言い渡されているようだが、コニン派の戦士たちとしては前々からデーイッシュ派に思うところがあり、売られた喧嘩は買いたいのが本音のようだ。デーイッシュ派もそうらしく、『聖結界』内で散発的に両者の戦闘が勃発するのだが、その度に『聖結界』から弾き出されている。
どうやら『聖結界』の暗黙のルールに抵触しているらしい。挑戦者対二陣営は俺が定めたルールだが、コニン派対デーイッシュ派の戦いは俺の定めの外。と言う事のようだ。
なので『聖結界』内に入ってきて弾き出されては、向こうの二陣営のところまで戻されて、そして『聖結界』の外で二陣営間の戦闘が勃発していた。
「はあ、しっちゃかめっちゃかだな」
ズビームッ!!
そんな二陣営の間を分割するかのように、サングリッター・スローンからレーザー砲が照射された。二陣営に動揺が走る。バヨネッタさん、手は出さない。って言っていたのに、こっちを放っておいてわちゃわちゃやっているのが気に食わなかったんだろうなあ。
『何しに来たのよ。ここは次期教皇を選ぶ為の試練の場よ。真面目に試練を受ける気がないのなら、さっさと帰りなさい」
それはそう。バヨネッタさんの檄にデミス平原がシーンと静まり返った。
そしてバヨネッタさんの檄によって戦場の空気が変わった。まずコニン派が一万人の戦士たちを、一斉に『聖結界』内へ進入させてきたのだ。それに慌てたのはデーイッシュ派だ。こちらも全戦士を『聖結界』内に進入させようとしているが、進入出来るのは半分以下だ。残る戦士たちは『聖結界』に弾かれて進入出来ずにいた。まあ、ポッと出の俺が聖人認定されれば良い気はしないだろう。それ以前に信仰心があるのかも怪しいけど。コニン派にも『聖結界』に弾かれている者がいるので、俺が気に入らない勢力はどこにでもいるようだ。
進入してくるコニン派に、流石にこれは挑戦者側の分が悪いと、近接戦を仕掛けていた挑戦者たちが丸太砦へ引き返してきた。そして砦の出入り口で侵入してこようと言う戦士たちを迎え撃つ。その中には炎槍使いと激戦を戦い抜いた電ナイフ使いの男もいる。彼は中々の使い手だ。頑張って欲しいものである。
とは言え限界はある。コニン派の戦士たちが、挑戦者の守りを抜けて、あるいは丸太の上を越えて、丸太砦の内部へ次々と侵入してきた。それをガドガンさんのユニコーン(サイ)が走り回って吹き飛ばし、カッテナさんがスリングで吹き飛ばし、ミカリー卿が魔導書の魔法で吹き飛ばし、二人の挑戦者が魔法で吹き飛ばし、マチコさんが空になったカップにお茶を注ぐ。お茶と言うよりもオチだな。戦わないの? と視線を向けるも、にっこり笑顔で返された。
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる