433 / 642
適材適所?
しおりを挟む
「何故、そう言い切れるんですか?」
マジマジと武田さんを見ても、その自信に揺らぎはない。
「ガドガン家は、代々特殊なスキルを受け継いでいるんだ」
「特殊なスキル?」
「ああ。『継承』と言うスキルだ。これにより、ガドガン家は代々その記憶を受け継いできた」
「それは……」
色々とあった事だろう。俺は思わずガドガンさんへ同情の視線を向けてしまった。
「問題ありません。これによって受けてきた恩恵と比較すれば、周囲の視線など、瑣末事です」
とガドガンさんは気にしない風な受け答えだ。それが本音なのかどうかは、俺には判断出来ない。
「それで、ガドガンさんは、これから行くダンジョンの中がどうなっているのか知っている。と?」
俺の質問に力強く頷くガドガンさん。
「道案内が出来るのは分かったけれど、こちらに同行させて良いの?」
とはバヨネッタさん。何か懸念があるらしい。
「彼女も歴代のガドガン同様に薬師なのでしょう。しかも聖伏殿に出入り出来ると言う事は、彼女はストーノ教皇付きの薬師なんじゃないの?」
成程。危篤状態にあるストーノ教皇を置いて、薬師が旅に出るのは如何なものか。それなら武田さんが同行する方が納得がいく。
「それなんだが……」
口ごもる武田さんの代わりに、ガドガンさんが口を開く。
「猊下の死に面して、私は無力なのです」
薬師なのに?
「終末医療となると、こちらの世界よりも日本の方が進んでいてな。ガドガンの出る幕がないんだよ」
成程。怪我に対してはポーションのあるこちらの世界の方が優位であっても、病気のケアとなると、地球の方がレベルが高いと言う事か。
「それなら、こちらに同行しようと?」
「はい。成功報酬として、今度、両世界合同で創設される学校への推薦を約束して貰いました」
教皇様の推薦かな? こちらの世界と地球が繫がった事で、文化交流として、両世界から資金や人材を出し合い、両世界の住人が通える学校の設立が進められている。ガドガンさんの推薦先は、その中でも医学科や薬学科のある大学だろう。だが、今回は終末医療と言う事でガドガンさんと相性が悪かっただけで、紫斑病を治療した薬を開発したガドガンさんの知識を『継承』しているのだから、どちらかと言えば講師なり教授なりで迎え入れた方が良いのじゃないだろうか。
「理由は理解しましたけど……」
「あなた、戦えるの?」
バヨネッタさんは俺が言い難い事をズバッと言うなあ。
「俺より強いよ」
と武田さんはお墨付きを与える。
「タケダが基準じゃ当てにならないわ」
そうなんだよねえ。武田さんより少し強い程度だと困る。武田さんには、それをカバー出来る『空識』と言うユニークスキルがあるからだ。あれの探索能力と『転置』とのコンボは非常に強力である。武田さんが天賦の塔で従魔にした一つ目の魔物のヒカルを加えれば、かなりの無双が出来るのだ。
「……頑張ります」
う~ん、今の「頑張ります」には自信のなさが出ていて不安になる。
「武田さん」
俺が真意を確かめたくて武田さんを見遣ると、何も発する事なく、その目は力強くこちらを見詰め返してきた。それは言外に、自分はここから離れられない。と口にしているように俺には感じられた。
「話題を変えましょう」
俺の発言に、バヨネッタさんは何も言わずに一口お茶をすすった。
ガドガンさんも加えて、五人で会議室の卓を囲み、新たに入れられたお茶を飲みながら、俺は話題を提供した。
「無礼な話ですみませんけど、ストーノ教皇がお亡くなりになられた場合、次の教皇が誰になられるのか、もう決定しているんですか?」
これに現地の三人は首を横に振るう。
「教皇が退位または崩御なされた場合、各地より枢機卿がこの聖伏殿に集まり、その中から次期教皇を選出する選挙が行われる事になっている」
とはバンジョーさん。
「コンクラーベですか」
それを聞いた俺の発言に首肯してくれたのは、武田さんだけだった。他の三人は首を傾げている。
「まあ、地球にも似た制度がある。って話です。それで、コンクラーベとなると、投票数の三分の二を獲得した人間が次の教皇ですか?」
「いや、半数だ」
と武田さん。こっちは半数で良いんだな。
「枢機卿って何人いるんですか?」
「百二十五人だ。その内の八十一名によって選挙がなされる」
俺の疑問に直ぐ様バンジョーさんが答えてくれた。全員に選挙権がある訳じゃないのか。
「各地から集まるって事は、選挙が開かれるまで結構期間がありますよね?」
「いや、教皇様の崩御から一ヶ月後と期限が決められている」
そうなのか。オルさんがクーヨンの港からモーハルドまで三ヶ月掛かると想定していた。となるとこちらの世界での旅は、それくらいが妥当なのかも知れない。もう動いている枢機卿もいるだろうな。
「次期教皇の有力候補って、何人かいるんですよね?」
「そうだな。と言っても、ここにきてデーイッシュ派が軒並み枢機卿から外されてしまったからな。今回の教皇選挙はコニン派から選出されるのは確定だ」
それでも百二十五人も枢機卿がいると言う事は、今まで何人枢機卿がいたんだ? 無駄を削ったって事か? それともデーイッシュ派に押え付けられていた人間を昇格させたのだろうか? まあ、ここを深掘りしたら止まらなくなりそうだから止めておこう。
「有力候補はゴウーズ首席枢機卿とマッカメン枢機卿とテイニー枢機卿。この三人による三つ巴だと思う」
「三人としては、誰になって欲しいんですか?」
この質問には、三人して顔を見合わせていた。多分、武田さんがここを離れられない理由がこの教皇選挙にあると思う。
マジマジと武田さんを見ても、その自信に揺らぎはない。
「ガドガン家は、代々特殊なスキルを受け継いでいるんだ」
「特殊なスキル?」
「ああ。『継承』と言うスキルだ。これにより、ガドガン家は代々その記憶を受け継いできた」
「それは……」
色々とあった事だろう。俺は思わずガドガンさんへ同情の視線を向けてしまった。
「問題ありません。これによって受けてきた恩恵と比較すれば、周囲の視線など、瑣末事です」
とガドガンさんは気にしない風な受け答えだ。それが本音なのかどうかは、俺には判断出来ない。
「それで、ガドガンさんは、これから行くダンジョンの中がどうなっているのか知っている。と?」
俺の質問に力強く頷くガドガンさん。
「道案内が出来るのは分かったけれど、こちらに同行させて良いの?」
とはバヨネッタさん。何か懸念があるらしい。
「彼女も歴代のガドガン同様に薬師なのでしょう。しかも聖伏殿に出入り出来ると言う事は、彼女はストーノ教皇付きの薬師なんじゃないの?」
成程。危篤状態にあるストーノ教皇を置いて、薬師が旅に出るのは如何なものか。それなら武田さんが同行する方が納得がいく。
「それなんだが……」
口ごもる武田さんの代わりに、ガドガンさんが口を開く。
「猊下の死に面して、私は無力なのです」
薬師なのに?
「終末医療となると、こちらの世界よりも日本の方が進んでいてな。ガドガンの出る幕がないんだよ」
成程。怪我に対してはポーションのあるこちらの世界の方が優位であっても、病気のケアとなると、地球の方がレベルが高いと言う事か。
「それなら、こちらに同行しようと?」
「はい。成功報酬として、今度、両世界合同で創設される学校への推薦を約束して貰いました」
教皇様の推薦かな? こちらの世界と地球が繫がった事で、文化交流として、両世界から資金や人材を出し合い、両世界の住人が通える学校の設立が進められている。ガドガンさんの推薦先は、その中でも医学科や薬学科のある大学だろう。だが、今回は終末医療と言う事でガドガンさんと相性が悪かっただけで、紫斑病を治療した薬を開発したガドガンさんの知識を『継承』しているのだから、どちらかと言えば講師なり教授なりで迎え入れた方が良いのじゃないだろうか。
「理由は理解しましたけど……」
「あなた、戦えるの?」
バヨネッタさんは俺が言い難い事をズバッと言うなあ。
「俺より強いよ」
と武田さんはお墨付きを与える。
「タケダが基準じゃ当てにならないわ」
そうなんだよねえ。武田さんより少し強い程度だと困る。武田さんには、それをカバー出来る『空識』と言うユニークスキルがあるからだ。あれの探索能力と『転置』とのコンボは非常に強力である。武田さんが天賦の塔で従魔にした一つ目の魔物のヒカルを加えれば、かなりの無双が出来るのだ。
「……頑張ります」
う~ん、今の「頑張ります」には自信のなさが出ていて不安になる。
「武田さん」
俺が真意を確かめたくて武田さんを見遣ると、何も発する事なく、その目は力強くこちらを見詰め返してきた。それは言外に、自分はここから離れられない。と口にしているように俺には感じられた。
「話題を変えましょう」
俺の発言に、バヨネッタさんは何も言わずに一口お茶をすすった。
ガドガンさんも加えて、五人で会議室の卓を囲み、新たに入れられたお茶を飲みながら、俺は話題を提供した。
「無礼な話ですみませんけど、ストーノ教皇がお亡くなりになられた場合、次の教皇が誰になられるのか、もう決定しているんですか?」
これに現地の三人は首を横に振るう。
「教皇が退位または崩御なされた場合、各地より枢機卿がこの聖伏殿に集まり、その中から次期教皇を選出する選挙が行われる事になっている」
とはバンジョーさん。
「コンクラーベですか」
それを聞いた俺の発言に首肯してくれたのは、武田さんだけだった。他の三人は首を傾げている。
「まあ、地球にも似た制度がある。って話です。それで、コンクラーベとなると、投票数の三分の二を獲得した人間が次の教皇ですか?」
「いや、半数だ」
と武田さん。こっちは半数で良いんだな。
「枢機卿って何人いるんですか?」
「百二十五人だ。その内の八十一名によって選挙がなされる」
俺の疑問に直ぐ様バンジョーさんが答えてくれた。全員に選挙権がある訳じゃないのか。
「各地から集まるって事は、選挙が開かれるまで結構期間がありますよね?」
「いや、教皇様の崩御から一ヶ月後と期限が決められている」
そうなのか。オルさんがクーヨンの港からモーハルドまで三ヶ月掛かると想定していた。となるとこちらの世界での旅は、それくらいが妥当なのかも知れない。もう動いている枢機卿もいるだろうな。
「次期教皇の有力候補って、何人かいるんですよね?」
「そうだな。と言っても、ここにきてデーイッシュ派が軒並み枢機卿から外されてしまったからな。今回の教皇選挙はコニン派から選出されるのは確定だ」
それでも百二十五人も枢機卿がいると言う事は、今まで何人枢機卿がいたんだ? 無駄を削ったって事か? それともデーイッシュ派に押え付けられていた人間を昇格させたのだろうか? まあ、ここを深掘りしたら止まらなくなりそうだから止めておこう。
「有力候補はゴウーズ首席枢機卿とマッカメン枢機卿とテイニー枢機卿。この三人による三つ巴だと思う」
「三人としては、誰になって欲しいんですか?」
この質問には、三人して顔を見合わせていた。多分、武田さんがここを離れられない理由がこの教皇選挙にあると思う。
0
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

天才ピアニストでヴァイオリニストの二刀流の俺が死んだと思ったら異世界に飛ばされたので,世界最高の音楽を異世界で奏でてみた結果
yuraaaaaaa
ファンタジー
国際ショパンコンクール日本人初優勝。若手ピアニストの頂点に立った斎藤奏。世界中でリサイタルに呼ばれ,ワールドツアーの移動中の飛行機で突如事故に遭い墜落し死亡した。はずだった。目覚めるとそこは知らない場所で知らない土地だった。夢なのか? 現実なのか? 右手には相棒のヴァイオリンケースとヴァイオリンが……
知らない生物に追いかけられ見たこともない人に助けられた。命の恩人達に俺はお礼として音楽を奏でた。この世界では俺が奏でる楽器も音楽も知らないようだった。俺の音楽に引き寄せられ現れたのは伝説の生物黒竜。俺は突然黒竜と契約を交わす事に。黒竜と行動を共にし,街へと到着する。
街のとある酒場の端っこになんと,ピアノを見つける。聞くと伝説の冒険者が残した遺物だという。俺はピアノの存在を知らない世界でピアノを演奏をする。久々に弾いたピアノの音に俺は魂が震えた。異世界✖クラシック音楽という異色の冒険物語が今始まる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この作品は,小説家になろう,カクヨムにも掲載しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる